2010/05/12

書籍: 失敗学のすすめ (畑村洋太郎)




失敗とは何でしょうか?

失敗をマイナスに捉えると、起こしてはならないもの、起こしたくないもの。失敗した自分が恥ずかしいなどと思ってしまうかもしれません。人は誰しも失敗に対して否定的なイメージを持つものです。

しかし、このように失敗をネガティブに考えるのではなく、失敗のプラス面にも目を向けるべきと主張するのが 失敗学のすすめ という本です。



失敗について考えさせられるいい本だったので、以下に内容を整理しておきます。


まとめ


今回のエンリーのまとめです。

  • 大切なのは失敗しないことではなく、失敗に正しく向き合って次に生かすこと
  • 失敗の原因は社会性の強いものから個々人によるものまで様々
  • 失敗情報は伝わりにくく、かつ時間の経過により減衰するという性質がある


失敗の定義・失敗学とは


本書での失敗の定義です。著者は次のように定義しています。


失敗の定義

  • 人間が関わってひとつの行為を行ったとき、望ましくない、予期せぬ結果が生じること
  • キーワードは 「人間が関わっている」 、「望ましくない結果」 の2点

次に、書籍のタイトルでもある失敗学についてです。


失敗学の趣旨

  • 失敗の特性を理解し、不必要な失敗を繰り返さない
  • 失敗からその人を成長させる新たな知識を学ぶ


失敗学の基本的な考え方

  • 大切なのは失敗しないことではなく、失敗に正しく向き合って次に生かすこと


失敗に学ぶという考え方


失敗を起こしてしまった後にどのような対応をとるか、またどう生かすか。失敗から学ぶというのはとても大切なことだと思います。それは、「失敗は成功のもと」 「失敗は成功の母」 などと言われることからもわかります。

本書では著者も次のように主張しています。「起きてしまった失敗を生かしてそこから真摯に学ぼうとする姿勢があれば、大きな発展の種にすることもできる」 。


失敗原因の階層性


起こるべくして起きた失敗、予期せぬ失敗、失敗には様々な原因があります。「失敗学のすすめ」 では、失敗にはその原因によっていくつかの階層が存在すると説明されています (図1) 。



失敗の原因は個々人に原因のあるものから、組織的なもの・企業全体のもの、あるいは政治の問題や社会全体の仕組みです。上図では、上にいくほど社会性の強いものになりますが、同時に失敗の規模や与える影響も大きくなります。


失敗原因の分類


また、失敗が例えば組織の原因によるものだとしても、その原因は様々です。本では、原因を10個に分類しています (表1) 。



なお、10個目の 「未知」 については、「未知による失敗はいたずらに忌み嫌うものではなく、文化をつくる最大の糧として大切に扱うべき」 と書かれています。


失敗の性質


ハインリッヒの法則と呼ばれるものがあります。潜在的な失敗とそれが顕在化する確率をいわば経験則から導き出した考え方です。具体的には以下のようになります (図2) 。



このように、1つの大きな失敗の裏には多くの潜在的な失敗があります。

一方で、失敗が表に出ないというのは失敗の1つの性質であると著者は説きます。すなわち、「失敗情報は伝わりにくく、かつ時間の経過により減衰する」 という性質です。


失敗からどう学ぶか


失敗を風化させないためにも、その内容を記述・記録しておくことが重要になります。具体的な記述事項は、以下のようになります (表2) 。



また、「仮想失敗体験」 という考え方も提示されています。

これは、すでに習得した知識を使って自分がその失敗を体験しているかのように行うシュミレーションのことです。大切なのは失敗の法則性を理解すること、失敗の要因を知ることではないでしょうか。

著者は失敗を起点にし創造力を養成するためのプロセスとして、理想的には以下の3点を挙げています。

  • 失敗の体感・実感によって、知識の受け入れ体制を築く
  • 自分の失敗体験 + 仮想失敗体験を吸収する
  • 学習した知識を次々に吸収し、真の理解へ至る


最後に


失敗をゼロにすることは不可能でしょう。もしゼロにできるとすれば、挑戦をしないことです。しかしそれでは、自らを進歩させるチャンス、成長するチャンスも失ってしまうことを意味します。

失敗を恐れ、挑戦自体をやめてしまわないようにしたいです。



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多田 翼 (書いた人)


外資系 IT 会社にてマーケティングリサーチ マネージャー (LinkedIn) 。

1981年 (昭和56年) 生まれ。名古屋出身。学生時代は京都。家族4人で東京23区内に在住、2人の子どもの父親。気分転換は毎朝 8km のランニングとピアノ。

書いている内容は、所属組織や会社の正式見解ではなく個人の見解です。