2010/07/14

ソフトバンク孫社長の「300年ビジョン」から考えたこと

少し前の話になりますが、6月25日にソフトバンクの孫正義社長による「ソフトバンク新30年ビジョン発表会」が実施されました。

発表会はユーストリームでも中継され、多数のブログでも関連記事がエントリーされています。発表内容は、孫さん自身が「僕の人生の中で、おそらく今日が一番大切なスピーチ」「30年に一度の大ぼら」と発言したこともあり、なかなかおもしろかったです。今回の記事では、発表内容の気になった部分や考えたことを書いてみます。



■「新30年ビジョン」の概要

発表の目的は、この先30年のビジョンを示すことで、「ソフトバンクをどんな会社にしたいのか」「どういう思いで事業を行っていきたいのか」の発信および共有だと思います。

アジェンダはソフトバンクの、①理念(何のために・どんなことのために事業を行っているのか)、②ビジョン(この30年先の人々のライフスタイル展望と、それに対する取り組み)、③戦略(成し遂げたいことをどのように行うか)でした。



■おもしろかった300年ビジョン

「新30年ビジョン」の発表の中に、この先の300年に対するビジョンがありました。個人的にもおもしろかったなと思う部分です。ちなみに、発表会の主題は「30年ビジョン」なのに、なぜ300年ビジョンも取り上げているかというと、孫さん曰く「30年というのは300年の中での1つのステップに過ぎない」という位置づけで、まずは300年という大きな方向性を定めてから30年を考えるという趣旨だからです。発表資料スライドには、「迷ったときほど遠くを見よ」とも書かれていました。

300年ビジョンの中で興味深かったのは、次の項目です。
・ コンピューターが人間の脳を超える
・ 脳型コンピューターについて
・ その他の技術進歩 (クローン、人体間通信(テレパシー)など)

以下、それぞれについて簡単に記しておきます。


○コンピューターが人間の脳を超える

コンピューターでの計算には二進法が用いられています。コンピューターがトランジスタ化され、このトランジスタがくっつく・離れるという原理です。一方、脳細胞にあるシナプスでは、シナプスがくっつく・離れるというこれも二進法と捉えることができます。つまり、コンピューターと脳細胞は二進法という同じメカニズムを持っているのです。

我々人間の大脳には約300億個のシナプスがあると言われています。コンピューターのワンチップの中に入っているトランジスタの数は増加し続けており、いつかはこの300億という数字を超えます。ソフトバンクの試算では、それが2018年に起こると言います。ここでは、2018年という時期は大きな意味はなく、いずれトランジスタの数が人間の脳が持つ300億のシナプスの数を超えるということが重要だと思います。つまり、コンピューターのワンチップが、人間の脳細胞の能力を超える能力を持つ可能性があるのです。



○脳型コンピューターについて

孫さんは脳の定義を、「データとアルゴリズムを自動的に獲得するシステム」としました。ここでいうデータとアルゴリズムはそれぞれ、知識と知恵を指しています。そして、人間の脳の働きとしては、知識(データ)、知恵(アルゴリズム)、感情(ゴール)の3つがあると説明しました。孫さんは、300年以内にこの脳の働きをするコンピューター、つまり脳型コンピューターが出現すると言います。


○その他の技術進歩 (クローン、人体間通信(テレパシー)など)

300年ビジョンで紹介された技術にはクローンがありました。これ以外にも、テレパシーのような人体間通信についても言及しています。脳と通信するチップを持ち、そのチップが他人の持つチップと無線で通信する仕組みです。すなわち、チップが媒体となり脳と脳が結ばれるようになります。



■300年ビジョンから考えたこと

目の前の仕事など普段とは全く異なる、ちょっと大きな視点で考えることは結構楽しかったりします。


○人間を超える脳型コンピューターと人類の存在意義

知識、知恵、感情の3つのうち、人間が現在のコンピューターに勝っているのは知恵、感情の部分だと思っています。知識、すなわち保存できるデータ量や、計算速度はもはやコンピューターには絶対に勝てません。しかし、知識と知識を紐づけたり、情報の体系化、仮説立案、新たな発想・アイデアの考案など、この領域はコンピューターに対する人間の脳の強みと言っていいものです。

しかし、仮に孫さんの言うように、コンピューターが知識、知恵、感情を持ち、その能力で人間を超えた時、果たして、人間の強みは何になるのでしょうか?

人間は地球上ではあらゆる生物の頂点に立っている存在です。高度に発達した知能とそれに基づく科学技術によるところが大きいと思います。しかし、「脳型コンピューター > 人間の脳」ということになれば、これまでの人間が頂点にいるという図式が変わってしまうのではないでしょうか(脳型コンピューターを持つロボットが人間などと同様の「生物」として扱っていいかどうかの議論はさておき)。

もしこのような状況になったとすると、これこそが「人類史上最大のパラダイムシフト」だと思わずにはいられません。少し大げさかもしれませんが、これまで当たり前のように君臨していた頂点を譲る時、人類の存在意義があらためて問われるような気がします。


○クローンとテレポーテーション

技術的には例えば髪の毛一本から人間の複製ができてしまうと言います。孫さんがクローンについて触れた時にふと思ったのが、クローン技術を応用すれば人や動物の移動手段に使えそうだなということです。例えば、A地点からB地点に移動したい場合に、
・ A地点で採取したDNA情報をB地点へデータ送信
・ そのDNAデータからB地点でクローンを瞬時に作製
・ クローンの作製が確認できれば、A地点のクローン元を消去する
という感じで、ほぼ瞬間移動の完了です。要はPCの中でやっているファイルとかの「カット(切り取り)&ペースト」を、クローン技術を使って現実世界で行なうイメージです。

もちろん、現在各国の政府が人間のクローンだけは禁止していることからも、それ以上にこの話は全くの非現実的な考えです。何かの不備で移動に失敗すれば怖すぎる話ですし、PC内でファイルが壊れるのとは訳が違います(でもたぶん、DNA情報が残っているので、クローンでの復元ができそうですが)。



■最後に

科学技術はともすればもろ刃の剣だと思います。人や動物を殺す道具にもなり、地球を破壊してしまう力も持ちます。一方で、現在の我々には解決できないであろう大地震などの自然災害、未知のウイルス、テロ、隕石、など、科学技術はこれらのものを解決する可能性も持ちえます。孫さんの言う「情報革命」により、もっと便利な世の中になるかもしれません。

変化の激しい世の中ですが、時々は上記の30年・300年のような大きい視点で考える機会を持ちたいなと思います。



※参考資料

ソフトバンク孫正義社長による「新30年ビジョン」書き起こし Part1
http://kokumaijp.blog70.fc2.com/blog-entry-87.html

ソフトバンク孫正義社長による「新30年ビジョン」書き起こし Part2
http://kokumaijp.blog70.fc2.com/blog-entry-88.html

「新30年ビジョン」プレゼン資料 (PDF)
http://webcast.softbank.co.jp/ja/press/20100625/pdf/next_30-year_vision.pdf

動画&プレゼン資料 (ソフトバンクHP)
http://webcast.softbank.co.jp/ja/press/20100625/index.html

USTREAMでの動画アーカイブ
http://www.ustream.tv/recorded/7882795


最新エントリー

多田 翼 (書いた人)


外資系 IT 会社にてマーケティングリサーチ マネージャー (LinkedIn) 。

1981年 (昭和56年) 生まれ。名古屋出身。学生時代は京都。家族4人で東京23区内に在住、2人の子どもの父親。気分転換は毎朝 8km のランニングとピアノ。

書いている内容は、所属組織や会社の正式見解ではなく個人の見解です。