■カギはリバース・イノベーション
「これからの時代は先進国中心の研究体制では勝ち抜けない」。日経ビジネス2010.7.19の「賢人の警鐘」では、ゼネラル・エレクトリックCEO(最高経営責任者)のジェフリー・イメルトが抱く危機感から始まります。
では、どうするのか。カギは「リバース・イノベーション」だと言います。
リバースとは反転、つまり、「新興国で生まれたイノベーションを、先進国などの世界に輸出すること」を指しているようです。ジェフリー・イメルトは、このリバース・イノベーションに力を入れていると言います。
■リバース・イノベーションに注力する理由と具体例
なぜでしょうか。その理由を記事では次のように説明しています。新興国で求められるのは機能がシンプルで低価格な商品であることが多く、必ずしも最先端で高機能な商品ではない。そこで、シンプル化に加え、部品の現地調達比率を高めるなど、低コスト化を実現している。この低価格商品のニーズは先進国でも高まっている。ここに、新興国で生まれたイノベーションを先進国に輸出するというリバース・イノベーションに注力する理由があるのです。
この記事では具体例として、医療コストを下げる「ヘルシーマジネーション」という医療機器が取り上げられています。もう一つ、リバース・イノベーションの事例として当てはまりそうなのは、インド政府が7月22日(現地時間)に発表した、1台わずか35ドル(約3000円)というタブレットPC(試作品)です。ちなみにiPadの日本での販売価格は、最も安いモデルでも約5万円です。
■四段階の進化
日経ビジネスのこの記事でおもしろかったのは、リバース・イノベーションも含めた「研究開発の四段階の進化」です。以下、そのまま引用してみます。
(1) グローバリゼーション
(2) グローカリゼーション
(3) ローカル・イノベーション
(4) リバース・イノベーション
(1) グローバリゼーション
ある先進国で生まれた商品やサービスをそのまま世界市場に持っていく
(2) グローカリゼーション
海外の各市場に合わせて、商品やサービスを変更する
(3) ローカル・イノベーション
海外に研究開発機能を置き、現地向けに商品を開発
(4) リバース・イノベーション
新興国で開発した商品やサービスを、先進国を含む世界各国に持ち込む
■先進国は巻き返せるか
この記事を読んで少し思ったのは、仮にリバース・イノベーションが一般的になった場合、先進国における開発の役割はどうなってしまうのかということです。もちろん、身の回りのあらゆる商品が新興国からの輸入商品となることはないかと思いますが、上記の四段階の次が、先進国からのイノベーションであることも期待したくなります。そして、日本企業は今後もイノベーションを起こせるのかも気になります。
※参考情報
インドの「35ドルタブレット」は可能か|WIRED VISION
http://wiredvision.jp/news/201007/2010072622.html
iPad販売価格一覧表|ソフトバンクモバイル株式会社
http://mb.softbank.jp/mb/ipad/price_plan/chart/