2011/03/12

「津波」と「波」は似て非なるもの

2011年3月11日、東北沿岸でM8.8を記録する東北地方太平洋沖地震が発生しました(追記:その後M9.0に修正されている)。この規模のマグニチュードは国内観測史上最大の大きさであり、その後もM7を超える地震が複数回発生し、地震による家屋倒壊などの被害だけではなく、津波、火災、土砂崩れなど、大きな災害となっています。被災されたみなさまには心よりお見舞い申し上げます。また、不幸にして亡くなられた方々のご冥福をお祈り申し上げます。

私は幸いにも同日深夜になんとか帰宅できましたが、あらためて東北地方の被害状況を見ると、信じられないような映像が次々に報道されていました。中でも、気仙沼市街地の広範囲に渡る火災、そして津波の被害が惨劇としか言えないような悲惨な状況でした。今回のエントリーでは、あらためて危険性を感じた後者の津波について、「普通の波」とは違うという視点から整理しておきます。

■衝撃的だった津波の様子

まずは実際の津波の映像。1つ目は、自衛隊が宮城県名取市沿岸部の上空から撮影したものです。複数の津波が押し寄せており、専門家はこの津波の特徴として、「陸に上がった時は速く、強い力で家屋や人を押し流す危険性がある」と指摘しています。

YouTubeより

実際に津波に襲われた港では多数の車が飲み込まれており、そのまま津波とともに流されています(岩手・宮古情報カメラから)。

YouTubeより

そして衝撃だったのは次の映像。津波が河川を遡上しているだけではなく、大量の瓦礫・自動車・家屋などとともに、田畑や道路・家などのあらゆるものを破壊しながら流れています。

YouTubeより

■普通の波と津波は似て非なるもの

津波の「津」には、「船着き場」「船の泊まるところ」「港」などの意味があり、港を襲う波ということで「津波」となったのが語源のようです。(引用:津波|語源由来辞典

しかし、津波は普通の波とは異なるものだと認識しておいたほうがいいと思います。特に、今回のような地震発生後などの遭遇すると生死にかかわるような状況ではなおさら。以下、津波と波の違いについて書いておきます。

津波の特徴は波長の長さにあります。ちなみに波長というのは、波の山から山への長さを指します(図1)。

出所:ISASニュース 2002.2 No.251から引用

普通の波と津波では、次の図のように波長の長さが異なります(図2:下が津波)。これは、津波が海底の地盤の上下により海水全体が押し上げられ、長い波長で発生するためです。

出所:津波の波|岡村土研から引用

この違いは、堤防や家屋へ津波が衝突した時のインパクトにまともに効いてきます。波長が長いことで、津波は普通の波と比べ、長時間にわたり家屋等を押し続けることになります(図3)。

出所:津波の波|岡村土研から引用

なので津波は、波の高さが異常に高くなる急激な潮の満ち引きのようなもので、海水が塊として襲ってくるようなものなのです。津波は普通の波が大きくなったものとは違います。

■津波の破壊力

それでは、津波のインパクトはどれくらいなのでしょうか。一般的に波による圧力はP=ρghで表されます。

P :圧力(N/m2)
ρ :流体の密度(kg/m3)
g :重力加速度(9.8m/s2)
h :波高(m)

津波の威力は、海水の密度(ρ)と津波の高さ(m)によることがわかります。上記の3つ目の動画は海水に瓦礫などの漂流物が大量に含まれており、海水のみの場合よりももっと大きな破壊力を持っています。

津波の高さが高いほど津波の破壊力が大きくなるわけですが、ここで注意しておかなければいけないのが、普通の波の高さの感覚で津波の威力を予想してしまうと、それこそ命とりになりかねない点です。ここは百聞は一見にしかずで、参考になるのは以下の動画です。ここでは室内実験として津波の高さを50㎝に設定していますが、それでも大人が簡単に流されてしまうことがわかります(2分14秒~)。
≪注意≫ 「高さ50㎝の津波なら流されない」部分が表示されていますが、実際は流されます

YouTubeより

高さが50㎝と言えば、大人の男性であれば自分の身長の1/3以下の高さですが、立っていられないくらいの威力を持っています。今回の地震により発生した津波は、高さが10mを超えるものもあったと報道されており、もはやその破壊力は想像を絶します。

最後に、四日市市防災情報のサイトにあった津波の高さと被害程度の関係性を引用しておきます(図4)。図の10mを超える津波の被害と、今回の被害状況は近いように思います。

出所:津波|四日市市防災情報から引用


※参考情報

津波|語源由来辞典
ISASニュース 2002.2 No.251
津波の波|岡村土研
津波|四日市市防災情報


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多田 翼 (書いた人)


外資系 IT 会社にてマーケティングリサーチ マネージャー (LinkedIn) 。

1981年 (昭和56年) 生まれ。名古屋出身。学生時代は京都。家族4人で東京23区内に在住、2人の子どもの父親。気分転換は毎朝 8km のランニングとピアノ。

書いている内容は、所属組織や会社の正式見解ではなく個人の見解です。