2011/05/03

大人老い易く学成り難し

勉強はやらさせるもの、辛いもの、多くの人がそう思っているかもしれません。

「勉強は楽しいものである」。野口悠紀雄氏は、著書『実力大競争時代の「超」勉強法』の中でこう主張しています。

この本のタイトルには勉強法とあり、具体的な方法も書かれていますが、なぜ勉強をするのかということをあらためて考えさせてくれた本でした。今回のエントリーでは、勉強についてあらためて書いています。



■ 勉強しなければいけない理由が変わった

本書のもくじです。

第1章 就職大競争時代が始まった
第2章 かつて勉強は学歴獲得の手段だった
第3章 シグナルから武器へ
第4章 英語と数学は、どんな仕事にも必要
第5章 求められるのは、ソルーション
第6章 勉強は楽しく、面白い
第7章 勉強社会が未来を開く

本書では、勉強をしなければいけない理由を「これまで」と「これから」で異なると言います。

これまでについては、第2章に詳しく書かれています。学歴を獲得するため、もっと言えば就職に有利になる大学名という「シグナル」を得るためにすぎなかったと指摘しています。

よって、勉強するための動機は入学試験に突破することであり、大学入学後、あるいは就職してからの勉強の重要度は高くなかったと言います。

これまでの勉強は学歴を得るためとしている背景を考えると理解できます。

日本社会における成功者とはいわゆる大企業で昇進した人々でした。終身雇用が一般的であったために、まずは大企業に採用される必要があります。

これには卒業した大学名が重要であり、そのためには有名大学の入試を突破しなければいけませんでした。

大部分の入試問題では解くべき問題が出題文という形ですでに用意されており、そして答えも必ず存在し、多くの場合それは1つです。だから勉強とは、こうした問題を解くという位置づけになります。

しかし、これからは違うと著者は言います。

勉強の位置づけは一言で表現すれば、プロフェッショナルの武器を得るための手段です(p.85)。

プロフェッショナルの武器とは本書から引用すると、1.伝達能力、2.問題の発見と解決の能力です(p.101)。ちなみに、伝達能力として具体的には日本語と英語、そして数学を挙げています。

なぜこうした能力を磨かなければいけないかの背景については、著者は日本人の就職者や求職者にとって、これからは二重の意味で条件は厳しくなることとも言います。すなわち、国内での雇用数が大きくは増えず、かつその中で外国人も含めた強力な競争相手と競わなければならない、という2つの意味においてです。

実際に、パナソニックやユニクロ、ローソン、楽天などで日本人よりも外国人を優先的に採用する例が引き合いに出されています。

一方で、著者はこの状況を歓迎すべきこととも言っています。なぜなら、日本人学生が刺激され危機感を強めることで勉強に励む、そうすれば労働市場も活性化するであろうということからです。

■ 勉強の中身は時代とともに変化する

同氏の指摘でおもしろかったのは「成功のために必要な勉強の中身は、時代とともに変化するのである」という言葉でした(p.84)。

これまでは与えられた問題に対して存在する答えを学ぶことでした。これからは、問題の発見が問われるようになり、この変化が時代によるものだとするのが野口氏の主張です。

日本の高度経済成長期はいわゆる欧米に追い付け・追い越せという状況でした。すなわち、事業としてやることはある程度見えており、あとはいかに効率良くそれを達成するかです。

これは戦略はすでにある状態であり、戦術をどう最適化するかが焦点になったわけです。ちなみに本書では、戦略と戦術の例えを、どの方向に走るかが戦略、いかに速く走るかが戦術と説明されていますが、これまでは走る方向は欧米と同じであればよく、あとはいかに速く走るかだけでした。

こうした時代背景が勉強の中身にも反映されたのだとしたら、勉強でも問題がすでに与えられており、あとはいかにそれを解くかという同じ構図になっていったのではないでしょうか。

個人的に思うのが、こうした勉強の中身はこれまでは正しかったと言えるということです。成功者が大企業で昇進をするという社会や価値観であれば、そのためには有名大学卒の肩書を使うことで採用に有利に働くのであれば、勉強の目的が肩書を得ることになるのは自然なことです。

しかし、時代は変わり、終身雇用や大企業に就職しても必ずしも安泰であることが当たり前ではなくなったとすれば、今後はより一層個人の能力が問われるようになります。

であれば、個人の能力を向上させるためには勉強が必要になるのはその通りだと思います。過去について否定するのではなく、あくまで今やこれからの時代にそぐわなくなったということなのだと思います。

■ 何を勉強するか、方法、時間、モチベーション

学生ではなくむしろ社会人にとって勉強が必要であり、しかも能力を高めるという意味では終わりはないと思っています。仕事内容も変わるであろうし、同じ業務でも立場も変わります。時代も変わり続けるでしょう。

そんな中、勉強時間が限られる人にとっては、「何を勉強するか」が非常に大事になると思います。時間は有限資源です。

上記では戦略と戦術に言及していますが、勉強でも何を勉強するかという戦略が問われます。行く方向が違えば、どんなに速く走っても目的地には決してたどり着かないからです。何を勉強するかに正解はないと思います。自分で決めるしかありません。

何を勉強するかという戦略が決まれば、次に考えたいのがどうやって勉強するかです。詳しくは省略しますが、本書ではパラシュート勉強法やモデル思考法という著者独自の方法が紹介されています。英語の勉強方法についても少し書かれています。

自分に合った勉強方法で進めても、制約条件としては、時間の確保といかにモチベーションを保つかがあります。時間の確保については、自分の24時間を見直す、優先順位をつけて勉強時間を確保する、など、まとまった時間の捻出をします。

個人的に難しいのが、モチベーションの維持だと思います。

誰もが経験することですが、やる気が出ない時は必ず起こります。本書の著者である野口氏によれば、勉強を継続するためには中期計画、具体的な目標、スケジュール作成、達成度を測ることなどを挙げています。

継続させるインセンティブとしては向上心と、何よりも好奇心が大切であると説きます。好奇心とは、結局は知りたいという欲求であり、勉強をやらなければならない・やるべきという must や shoud だけではなく、いかに want としても勉強をできるかだと思います。

■ 勉強を始めるのに遅すぎることはない

野口氏は往年になりロシア語の勉強を始めたそうです。1980年ごろにはロシア映画があったため、30年という時間をロスしてしまったと書いています。

これを踏まえた上で以下のような記述をしています。自分への教訓とする意味でも、最後にそのまま引用しておきます(p.135 より)。

これからは、どんなことに対しても、学習の機会があったなら、それを取り逃さないようにしよう。いかなるときも、決してぼんやり過ごしてはいけないのだ。
私が無駄にしてしまった30年間は、もう取り返すことはできない。しかし、この本を読んでいる皆さん方は、そうではない。

これから30年間の未来を持っている人に、私は声を大にして言いたい。重要なのは、学習の意欲をもっているか否かである。それがあるかないかで、30年後のあなたの姿は、まったく異なるものになるのだ。


「少年老い易く学成り難し」ということわざがあります。

意味は、月日が過ぎ去るのは早いが、学問はなかなか成し難い、だからこそ、時間を惜しんで学問に励まなければならないということです。この真理は今も昔も変わらないものなのでしょう。



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多田 翼 (書いた人)


外資系 IT 会社にてマーケティングリサーチ マネージャー (LinkedIn) 。

1981年 (昭和56年) 生まれ。名古屋出身。学生時代は京都。家族4人で東京23区内に在住、2人の子どもの父親。気分転換は毎朝 8km のランニングとピアノ。

書いている内容は、所属組織や会社の正式見解ではなく個人の見解です。