2012/08/11

便利すぎるルンバ780を買って実感した「ルンバの提供価値と新しい競争軸」

先日、引越しをしたのですが、引越しを機にずっと気になっていたルンバを買いました。
「家庭用お掃除ロボットと言えばルンバ」という印象がありますが、先日の日経新聞記事にはルンバは国内で70%近いシェア、とあります(金額か個数かの何ベースかやデータソースは書いてませんでしたが)。日経記事:ロボット掃除機―アイロボット、シャープ(新製品バトル)|日本経済新聞2012.8.9朝刊

どうせ買うならと思い、買ったのはシリーズの最新かつ最高モデルのルンバ780(上記画像)。公式サイトでは79,800円(税込)ですが、ネットでちょっと調べてみたら45,000円くらいで売ってたので迷わず買い。翌日送られてきて早速使ってみました。まだ数回しかルンバで掃除していませんが、すでに買ってよかったと実感できるほど、ルンバいい感じです。

■ルンバの魅力と提供価値

モノの提供価値は2つに分けられると思っています:機能的価値と感情的価値。機能的価値とは、目に見えるもので例えば車の燃費の良さやスマホ画面のきれいさとか。感情的価値とは、ユーザーに提供する持っていて誇らしくさせてくれたりなどの気分的なもので、典型がブランドの価値。機能的にはほぼ差がなくても自分の好きなブランドロゴがあるかないかで感情的価値は大きく異なります。

ルンバの機能的価値:なんと言っても自動で掃除をしてくれる利便性です。外出中でも予約しておけば勝手にやってくれる(ただしルンバのシリーズによっては予約はできないものもあります)。ユーザーがやることは日時指定とスイッチを押しておくだけ。

何回か使った感想として、ルンバは自分が掃除をするよりもきれいしてくれること。実際に動いているところを見るとほんと念入りにやってくれます。ルンバ780は40以上のセンサーがあり、どこが汚れている場所なのかを感知しそこを特に念入りに掃除してくれます。このセンサーで、部屋の広さや形状、家具の配置を検知し、部屋の状況に応じて最適な動きを素早く判断する人工知能「iAdapt(アイアダプト)」を搭載している。なので、家具が置いてあるような場所でもきちんと掃除できる。40の行動パターンを持っていて、最適動作を選んで掃除するとのこと。

自動掃除について細かい点を補足しておくと、全ての部屋を自動で掃除させるには、ルンバに各部屋を認識させる必要があります。例えば、リビング、和室、寝室、子ども部屋があるとして、上位モデルの780では、「お部屋ナビ」という付属機器を部屋の入口ごとに置くことで、どこまでが1つの部屋(空間)かをルンバに把握させる。そうすると、1つの部屋が終われば次の部屋、というパターン認識ができ、結果、各部屋を順番に自動掃除ができるという仕組み。逆に、この部屋は掃除してほしくない場合は「バーチャルフォール」を設置し、赤外線が出ていてそれ以上はルンバが進めない(入れない)ようにできます。このへんの仕組みもおもしろいです。

ルンバの感情的価値:ルンバが到着して箱から取り出した時の感想は、デザインもかっこいいことでした。シンプルで無駄のないデザイン、それでいて高級感もある。ルンバ780にはタッチパネルもついていますが、ボタンの光り方とかも気に入っています。

掃除をしている時の動きも愛着があります。例えばうちのリビングにはテーブルや椅子の下など、入りにくい箇所がいくつかあるのですが、ルンバは何度か角度を変えて入り込もうとトライする。なんとなく見ていて微笑ましくなります。健気にかんばってくれているというか。

ルンバの機能的価値と感情的価値の2つを書きましたが、なんといっても機能面に満足しています。自分がやるよりも念入りに、かつ自動で掃除をしてくれる。ここの利便性はほんと魅力。

■ルンバはどのように開発されたのか

こんな便利なルンバはどのように開発されたのか。開発経緯が書かれていた記事が、やや昔のですが日経ビジネスにありました(製品開発の研究 米アイロボット 地雷もゴミもお掃除|日経ビジネス2010.10.25)。ルンバを開発したアメリカのiRobot(アイロボット)への取材記事で、ルンバの成功の裏には地道に開発ノウハウを吸収し続けたことがあったとのこと。

他社との提携商品や異なる分野の知見を自動掃除用ロボットのルンバに活かしたそうで、具体的には清掃用品メーカー、玩具メーカーとの共同開発から、そして軍事用ロボットから。

清掃用品メーカーとは大型の掃除用ロボットを共同開発し、提携先が持つ掃除に関する知見が吸収できた。玩具メーカーと一緒に開発した赤ちゃんロボットからは、価格競争の激しい玩具業界での経験から複雑な仕組みのロボットをいかに低コストで作るかを学んだ。

アイロボット社は米軍から研究開発資金を得て、小型無人偵察車両などの軍事ロボットの開発を手がける軍需企業でもあります。

右の画像は、小型無人偵察車両「SUGV」。出所:製品開発の研究 米アイロボット 地雷もゴミもお掃除|日経ビジネス2010.10.25

ここで人工知能(AI)のノウハウを磨いた。地雷探査ロボットの走行を制御するAIがルンバに応用されているそうで、地雷探査ロボットは地雷をくまなく調べることが求められますが、この技術を部屋の隅々まで障害物を避けながら自動で掃除できるルンバに活用されている。

このように、様々なアイデア/知見を掃除用ロボットに組み合わせている。ルンバの強みの裏にはこういった長年のノウハウがあるのです。

■iRobot社が考える「これからのロボット」

ルンバを開発するアイロボット社の開発方針は3つのDを掲げているそうです。「人間に代わって、Dull(退屈)でDirty(不衛生)・Dangerous(危険)な作業を行なうロボットを作ること」。

ルンバは家のフロアを自動掃除するロボットですが、アイロボット社のコリン・アングルCEOによれば、今後は床や壁の拭き掃除をするロボットや、風呂掃除をするロボット、洗濯物をたたんでくれるロボット、芝刈りロボットなど、さまざまな領域で可能性があると言います。

こうした分野において、ロボットを進化させていきたい、と。そして長期的な目標としては、家が家自身をメンテナンスするような仕組みをロボットによって構築すること。そうすれば、人は家事から解放される。それが家庭用ロボットの未来像である、と。参考:未来の「ルンバ」は風呂掃除も? 米アイロボットCEOに聞く|日経トレンディネット

この記事でアングルCEOが強調していたのは、ビジネスとしてロボットを「売る」ということ。たとえ高い技術によるロボットで二足歩行や走ったりできてもデモやショーでしか使われるのではなく、あくまでロボットを売るため。決して学術目的や非実用的なアカデミックなポジショニングではない、と言っていたのが印象的でした。

ルンバ以外にちょっと迷ったのはダイソンの掃除機でした。ダイソンの「世界で唯一吸引力が落ちない掃除機」というキャッチフレーズにも惹かれましたが、でもこれも結局はこれまでの掃除機の延長線上の話なんですよね。一方でルンバは自動掃除という新しい価値を提供してくれる。ダイソンの比較優位は既存の掃除機よりも吸引力が落ちないことですが、ルンバは競争軸を全く別に変えています。さて、この軸でルンバに対抗する魅力的なロボットは出てくるのでしょうか。そのロボットはルンバに対しての比較優位は?


※参考情報

ルンバ製品ラインナップ|iRobot
製品開発の研究 米アイロボット 地雷もゴミもお掃除|日経ビジネス2010.10.25
ロボット掃除機―アイロボット、シャープ(新製品バトル)|日本経済新聞2012.08.09朝刊
未来の「ルンバ」は風呂掃除も? 米アイロボットCEOに聞く|日経トレンディネット
日本の家電メーカー、ロボット掃除機で攻勢-「ルンバ」に対抗、新機種続々|朝日新聞デジタル

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多田 翼 (書いた人)