2012/09/01

書籍「ワーク・シフト」まとめ:孤独と貧困から自由になる主体的な生き方




話題の本「WORK SHIFT(ワークシフト)」を読みました。

副題の邦訳は、孤独と貧困から自由になる働き方の未来図<2025>。この本が読者に投げかける問いは、2025年に私たちはどんなふうに働いているのか?というものです。

今は2012年なので10年と少し先の近未来が想定されています。2050年や22世紀になると空想の世界の要素が強くなりますが、ぎりぎりリアルに考えられる将来設定です。

本書がおもしろく、色々と自分事として考えさせられたのは、読んでいる中で随所に「自分の場合はどうなるのだろう?」と問いかけができる点にありました。

日頃漠然と思っていたことをあらためて問われ、過去、現在、未来ついて少し立ち止まって考えるには良い本だと思います。

本書の構成は大きく3つに分かれます。

  • 未来を考えるにあたって何が私たちに影響を与えるのか。5つの要因を紹介
  • 2025年の未来シナリオ2つ:暗い現実と明るい未来
  • 明るい未来を築くために必要な3つの「シフト」(変えるもの)。これが本の題名であるWork Shift

全体ストーリーとしては、

  • 未来を考えるためのフレーム(5つの要因)が紹介
  • 5つの要因がマイナスに働く「暗い未来」とプラスに作用する「明るい未来」の2025年シナリオの提示
  • 明るい未来を迎えるための「3つのシフト」を提言、

という流れです。以下、本書の3つの構成をまとめます。

■ 何が私たちの未来を変えるのか?未来を形づくる5つの要因

1.テクノロジーの進化:技術発展によって私たちの生活や働き方は変わる、という話。具体的には、コンピュータの性能向上、世界中の人がネットで結ばれる、モバイルやクラウドが当たり前のように使われ、電子書籍等のあらゆる知識/情報がデジタル化される。SNSなどでのつながりが形成・活発化する。より高度な人工知能や動作ができる技術・ロボットが普及していく。このようなテクノロジーの進化で生産性の向上や生活スタイル自体が変わっていく。

2.グローバル化の進展:人、モノ/サービス、カネ、情報のグローバル化が進む。これは既に起こっている現実で今後も加速していくと思われるもの。グローバル化によって、24時間365日絶え間なく情報やお金が動いている世界、中国やインドなどの新興国が台頭し単なるモノの生産国から消費する国へ、新興国からも高度な技術/スキルを持った人材が登場する、など。一方で、競争がますます激しくなり、人々は時間に追われるようになる。

3.人口構成の変化と長寿化:先進国のみならず今後は中国などの新興国でも少子高齢化を迎える。特に生産年齢人口の減少が社会に与える影響は大きい。世代ごとに異なる価値観を持っており、社会の中心を担う世代が変わることで世の中が変わっていく。寿命が長くなることで、多くの現役年齢が長くなり(60⇒65⇒70歳)、一方で介護など含め人生の晩年をどう過ごすかも課題であり社会に影響を与える。

4.社会の変化:個人的には人々の価値観の変化と理解しました。例えば家族形態が小さくなり(核家族、単身世帯の増加など)、また離婚・再婚・事実婚などの多様な形態をとる。あるいは女性の社会での活躍が広がり、結果的に女性の影響力が大きくなる一方で男性の生き方も多様化(専業主夫とか)。その他、本書で指摘されていたのは、大企業や政府への不信感が高まる、幸福感が弱まる、余暇時間が増える、など。

5.エネルギー・環境問題の深刻化:日本では脱原発という原子力エネルギー1つに論点が集中しがちですが、エネルギーや環境問題全体で考えると、このままだとエネルギーコストが上昇する一方で、環境負荷も高いまま。エネルギーは人が生きていく上で、社会を支える上で、不可欠なもので、エネルギーの問題が生活や働き方のボトルネックになる。あるいは気候変動により住む場所の変更が余儀なくされる(例:海水面の上昇、砂漠化等で済む場所を変える)。一方で環境問題への意識の高まりからエコや持続可能な生活という文化が形成される。

■ 2025年のシナリオ:暗い未来と明るい未来

本書の2つ目の構成である、2025年の未来シナリオ提示です。上記5つの要因は私たちの未来にプラスにもマイナスにも働く可能性があります。

1.暗い未来シナリオ:いつも時間に追われている未来。朝起きて、分刻みであらゆるもことが進んでいく。結果、ゆっくりできる時間はなくなり、まとまった考える時間も失われる。テクノロジーの進化やグローバル化の影響が大きい。

ネットワークはあるが人間関係が孤独な未来。人と直接会わなくても生活や仕事もできてしまうので、コミュニケーションはあっても表面的で人間関係が充実しない。同僚との気軽な関係や家族関係も希薄になってしまう。結果、一見便利なもの/環境に囲まれるが生活や仕事から幸福感は得られない未来。

2.明るい未来シナリオ:異なる立場や場所の人と協働し、新しい価値を人々が生み出す未来。一人ではできないこともみんなの力で大きな仕事をやり遂げる仕事形態。社会の問題に対して、積極的に関わり、様々なバックグラウンドの人たちとのコラボレーションで解決していくような働き方。

その他、大企業ではなく、自分たちが「ミニ起業家」としてビジネスをする。ネットインフラが整うことでコストやより小さなリスクで挑戦し、人生を切り開いていくシナリオなども紹介されています。

■ 未来を変える3つのシフト

では明るい社会を築き、未来を変えるためにはどうすればいいのでしょうか?

本書での主張は、3つのシフトが必要というものです。3つのマインドチェンジです。

1.知的能力のシフト:広く浅くというゼネラリストではなく、自分の専門性を持つスペシャリストを目指すシフト。ただし、1つのことを突き詰めすぎるのではなく、連続的に専門性を広げかつ深めていく。

専門性を考えるにあたって考えさせられたのが、3つの問いでした。

  • その専門技能は価値を生み出せるのか?
  • その専門技能は希少性があるか?
  • その専門技能はまねされにくいか?

自分自身にもあらためて投げかけたい問いでもあり、組織や企業にも戦略やマーケティングを考える上で適用できる質問です。

3つを考えるためには単に自分の好きなことや得意であるという視点だけではなく、社会から必要とされているかや、まわりや競争相手との相対的な比較も必要になります。

フレームワークで言うと3Cの視点です(Company, Customer, Copmetitor)。

かつ、現時点での評価だけではなく、この先の将来についての時間軸も考えます。その時その時で答えはあっても、その答えは永続的ではありません。

だからこそ、考えさせられる3つの問いだと思います。

2.人間関係のシフト:人間関係には様々なものがあります。家族関係、友人、恋人、仕事上のつきあいだったり、地域との関わり。孤独な未来を迎えないためには、より生産的なコミュニティを築いておくとよい。これが2つ目のシフトです。

本書で具体的に提言されているのは3つで、①少人数の同じ志を持つ仲間、②アイデアや意見交換をするわりと大きく多様性のあるつながり、③精神的な安らぎを分かち合う絆の人間関係。これらを積極的、主体的に築くことです。

3.価値観のシフト:このシフトを簡単に言うと、お金と消費を美徳とする価値観から、経験に価値を置く生き方へ、ということです。

たくさんのお金を稼ぎ、モノに消費することで幸福感を得るのではありません。働く目的もお金を稼ぐことではなく、仕事を通じて新しいことを学べるから、問題解決にやりがいを感じる、自分を成長させられる、というような充実した経験・体験を重視することです。

■明るい未来のためには「主体的に生きること」が大切と思う

本書が提示する2つの2025年シナリオは、

  • 「漠然と迎える未来」には孤独で貧困な人生/社会
  • 「主体的に築く未来」には自由で創造的な人生/社会

これが冒頭で書かれているのですが、個人的には「主体的に築く」という表現に興味がありました。

主体性とは行なうが難しでついつい受け身になりがちですが、とても大切な姿勢と思っています。

本書の主題である3つのシフトを紹介しましたが、どう思うかは人それぞれだと思います。

専門性を磨き続けるにはそれなりの時間が必要で、かつ強い意志も要求されます。モノを買うことに幸せを感じる生き方もあるでしょう。

ただ、本書で言いたかったのは、この先も漠然と生きるのではなく、よりよい未来を実現するために、私たち一人一人が未来について考え「じゃあどうすればよいか」と自分事化することだと理解しました。それが「主体的に築く未来」につながります。

社会というのは人間の一人一人の集合体で、それが家族、会社/学校、地域、国、世界といろんな社会を形成しています。

最小の構成要素である各自のあり方、働き方、生き方の集合体が社会となり未来となっていくのです

この先、暗い未来を迎えるのが現実かもしれないし、やり方によっては未来を変えられるかもしれません。「今」をちょっと変えることで、その先に続く「未来」を変えていきます。

主体的に生きるために思うのは、我が事化することであり、まずは自分のできることからやる、そしてコントロールできる範囲を広げていくことです。

(コントロールできない)自分の身に何が起こるかよりも、焦点を当てるべきは起こったことに対して自分はどう解釈し反応するか、どう行動するか。これが大事と思っています。


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多田 翼 (書いた人)