2013/08/31

書評「会社を変える分析の力 」:データ分析をする時の4つの自問自答

「会社を変える分析の力」という本が、ここ最近考えていたこととドンピシャという感じで、示唆に富む内容でした。

本書は、データ分析をする際の「心得」が書かれています。データ分析の心得は、高度な分析モデルやツールを使うケースから、Excelで関数を使って集計しグラフを作るという場合にもいずれにも当てはまります。本書で言われていることはどれも至極当然のこと。でも、実際に自分はできているか。全てにYesとは言えない自分がいました。

■このデータ分析は、問題解決のための意思決定にどれだけ使えるのか?

本書のスタンスで明確にしているのは、ビジネスにおけるデータ分析は問題解決につながってなんぼ、というもの。

データ分析とはデータで問題を解決すること。問題解明につなげる意図がないデータ収集や数値計算は、その方法がどれだけ高度であっても単なる「数字遊び」と著者は言います。

データ分析から得られた結果/示唆を、問題解決のための意思決定にどれだけ使えるか。ここが肝であり、「データ分析=意思決定の重要性×意思決定の寄与度」で決まると。2つ目の意思決定の寄与度とは、意思決定のための判断材料が数多くある中で、どれだけ重要な材料になれるかです。

■データ分析をする時の4つの問い

本書を読み始める前に目次を見て、まず始めに読んだ箇所が「データ分析をする時の4つの問い」でした。一番に目を通したこともあってか、読後においても最も印象に残っている問いかけでした。

著者は、データ分析の際には4つを自問自答するようにしていると言います。4つはデータ分析でビジネスを変える力の鉄則を問うものだから。若手を育成する際にもこの4つを繰り返し、繰り返し問いかけるそうです。

1.その数字にどこまで責任を取れるか?

データ分析者の役割とは端的に言うと数字を作ることです。であるならば作った数字に自分が責任を持てるかどうか。分析結果を出すと、それが大変なプロセスほど満足感も高まります。でも、その数字が本当に正しいのか、計算ミスや分析ミスをしていないか。疑いの目を向ける。自分自身がその数字に違和感がなく納得のいくものかどうか。

なお、「数字が正しいか?」と「予測結果が正しいか?」は少し別の話です。データ分析結果というのはあくまでもっともらしい答えであり、その予測通りになるとは限らないです。責任を持たなければいけないのは、あくまで分析が正確にされているかどうかです。

2.その数字から何がわかったか?

データ分析をした結果、前年比で30%増えた、みたいなことがわかります。ここで注意しないといけないのは、この段階では計算結果に過ぎないということ。本当に必要なのは、この結果から何がわかったかという「解釈」です。解釈は示唆・インサイトなどと表現してもいいですが、数字の意味を具体的に言えるかどうかです。

数字の解釈をするためには、分析の発端である分析課題、仮説、データや分析の前提/制約まで立ち返り、トータルで考える必要があります。数字を数字で終わらせないためにも「その数字から何がわかったか?」と問いかけるのです。

3.意思決定にどのように使えるのか?

データ分析の価値は意思決定のためにどう使えるかです。それなのに、「意思決定にどのように使えるか?」にちゃんと答えられないようなら、それは単なる分析遊びをやっていたにすぎないかもしれません。

著者は、多くの分析者はこの問いに「予測ができるようになった」などと答えると言います。でもこれは答えになっていない。どのように使えるか?の答えとしては、予測ができるようになり何の意思決定にどう使えるようになったかまでを具体的に言える必要があります。

がんばって分析を進め解釈もした、でもそれが意思決定には使えない時ほど無駄なことはありません。これを防ぐためには、いきなり計算や分析プロセスに入るのではなく、自分はこれからどういう問題に対して分析を始めるのか、得られるであろう結果/解釈が意思決定に役立つかどうかをまず最初に考える。そのための問いが「意思決定にどのように使えるのか?」。

4.ビジネスにどれぐらい役に立ったか?

データ分析の価値は意思決定にどれだけ役立ったかですが、ビジネスにおいてはこれだけでは十分ではありません。データ分析からわかったことが実際のビジネスに貢献できたかどうかです。ビジネスへの貢献度を具体的な数字で答えられるのが理想です。単に売上に貢献できましたとかではなく。

データ分析でビジネスに役立つところまで持っていくには、分析をして終わりではなくその結果を役に立てたい、もっと貢献したいという強い気持ちが求められます。意思決定者の立場になり、当事者意識を持つ。意思決定にどう使い、それが実際のビジネスにどう活かされるのか。より具体的にイメージしてみる。この問いかけに対して答えられる時、データ分析者として初めて達成感に浸れるのです。

■その深掘りは、単なる知的好奇心を満たすためにやろうとしていないか?

読んでいる中であらためて自分が問われていると思った1つが、「そのデータ分析は自分の知的欲求を満たすだけのためにやろうとしていないか」でした。

データ分析のプロセスで一般的なのは、大きなところからデータで明らかにし、徐々に詳細や深掘りをしていく流れです。どこを細かく見ていくかを決める際に、その深掘りはデータ分析の目的(設定した課題)と仮説に沿ったものになっているかが本来です。そうではなく、単に自分の好奇心だけのWhy?を知るだけの深掘りになっていないか。課題解決・仮説検証・意思決定につなげる分析は頭ではわかってはいるのですが、いざデータ分析にどっぷり入ってしまうと、ついつい視野が狭くなってしまいがちです。目的やゴールを見失わないようにしなければ、と。あらためて。

★  ★  ★

本書で書かれているのは、データ分析をする際の心得や姿勢と、著者の経験や事例の具体例が中心です。逆に言うと書かれていないのは具体的な分析モデルであったり解析手法です。この本を読んですぐに分析力が向上することは望めないかもしれません。

ただし、本書の心得を理解し、そもそもデータ分析とは何なのか。何のために、どう活用するのか。実際のビジネス課題は千差万別で、分析からわかることも様々。意思決定にどう使い、それがビジネスにどう貢献できるか。このあたりを常に意識しながらデータ分析を進めるのか、それとも単に「数字あそび」をやっているだけなのか。以下のデータ分析での4つの問いは、意識し続けたいと思っています。
  • その数字にどこまで責任を取れるか?
  • その数字から何がわかったか?
  • 意思決定にどのように使えるのか?
  • ビジネスにどれぐらい役に立ったか?




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