2014/05/24

それってスキルの問題?センスの問題?

「戦略読書日記 〈本質を抉りだす思考のセンス〉」という本に、おもしろいことが書かれていました。

「スキル」と「センス」はまるで異なる能力であり、区別して考えるべきである、と。




■スキルとセンスは似て非なるもの

例えば、「営業スキルがある人」と聞くのと、「営業センスがある人」とでは、受け取るニュアンスが違います。スキルというのは、セオリーであったり、習得の方法もあったりと、人から直接教えてもらえたりもできます。スキルと聞いて思い浮かぶイメージは、どちらかというとわかりやすいです。

一方のセンスはどうか。スキルに比べて、定義自体も難しい概念です。スキルのように身に付けるための方法が決まっているわけでもないのです。

スキルとセンスについては、それぞれの定義がどうだというよりも、自分の身近なものに当てはめてみるとイメージしやすいと思います。

女性であれば、化粧についてメイクのスキルとメイクセンスは、違う印象を受けるのではないでしょうか。他には、ファッションスキルとファッションセンス、お洒落なレストランを探すスキルとレストランを探す(選ぶ)センス、野球のスキルと野球センス、などなど。仕事であれば、プレゼンスキルとプレゼンのセンスとか。

スキルとセンスは、似て非なるもの。

本書ではスキルとセンスについて、こんな例えで説明されています。スキルは学校教育で言うなら「国語・算数・理科・社会」、センスは「どうやったらモテるのか」。各科目には教科書もあるし、先生からも直接習うことができる。一方で、モテるためにどうすればいいかは誰も唯一の答えは持っていない。モテる人にはその人固有の要因があり、千差万別である。センスとはそういうものである、と。

もう1つおもしろい指摘が、本来センスであるものをスキルと勘違いしてしまい、センスの問題なのにスキルを身につけて解決しようとしていないか、でした。デート必勝法みたいな、モテるためのテクニックに走っていないか。

■分析センスのこんな事例

スキルとセンスを「分析」について当てはめてみた時に、わかりやすい例がありました。

レオス・キャピタルワークスの藤野英人さん(ファンドマネージャー)が考える「ダメな会社の法則」というものがあり、その1つが「自社のウェブサイトに社長の写真が載っていない会社は要注意」だそう。

この視点で実際にデータ分析がされていて、社長と役員の顔写真の有無と株価の傾向を示したグラフは以下。



詳細は以下のリンク先にありますが、さらに社長の挨拶文において、主語がないパターン、「弊社」「当社」と表現するパターン、「私」「私たち」と言うパターンでも違いがあり、株価上昇が高かったのは、「私」と言っている会社だったとのこと。
社員の顔が見える会社と見えない会社、どちらに投資をしたいですか? - ネタりか

分析をスキルとセンスについて分けて考えた時に、「自社サイトに社長の顔が載っているか否かは、株価に傾向があるのではないか」という視点で分析できるのは、まさに分析センスだと思います。

おそらくこの分析自体は高度な分析モデルであったり、集計システム構築は必要ではないはずです。必ずしも高い分析スキルが要求されるのではなく、どんな切り口で分析するかという発想が優れていたのだと思います。

この分析センスの背景には、藤野さんが長年ファンドマネージャーとして様々な企業を見てきた中での経験があり、そこから生まれた仮説があったからこその分析視点(センス)だったのでしょう。

こういう、言われてみれば確かにそうだよね、というのもそれに気づくまでは盲点だったりします。

自分の仕事でもよくありますが、例えばExcelでさっとつくったグラフを同僚が見て、何気ない一言から思いがけない発見があり、そこから次々に示唆が得られたという経験があります。これも、分析結果を解釈するセンス、もしくはインサイトを出すセンスです。

■センスを磨くには

「戦略読書日記 〈本質を抉りだす思考のセンス〉」には、センスとは平たくいえば「引き出しの多さ」と書かれていました。

スキルを上げていくとともに、センスをどう磨くか。本書で推奨されていた方法は、自分から見てセンスの高い人をよく観察し見破ることでした。

「見破る」というのは本書での独特の表現だと思いましたが、具体的には、自分ならどうするかを常に考えながら、その人の考え・判断・意見・行動を捉え、自分だったらどうするかを比べてみること。比較という相手と自分を相対化することで初めて、自分の中でセンスが鍛えられるのだそうです。

分析センスを例に考えると、まずは自分ならどうするかがあり、それに対してその人が考える分析視点を知る。相手と自分の視点は何が同じで、何が違うのか。異なるのは、なぜ違うのか。こうした地道な積み重ねがセンスを鍛える方法なのかなと理解しています。




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多田 翼 (書いた人)