投稿日 2014/09/07

Apples to Apples な比較をするために、3つのリサーチ設計の考え方




今回は、調査やリサーチについてです。適切な比較をするためのリサーチ設計について書いています。

設計の考え方は3つあります。

  • 同一対象者への Pre / Post
  • 別対象者への Pre / Post
  • 別対象者への Control / Test グループ分け

この3つについて、解説します。


はじめに


何か分析するとは、最もシンプルに言えば比較をすることです。

大事なのは、比べたいこと以外は比較対象において極力同じ条件にすることです。例えば、やや極端な例ですが、100m の記録を比較するのであれば、同じ男子 100m 走という競技をそろえて同じ競技内で比較します。これがもし、100m の競歩も入れたり、水泳 100m も含めて、なんて比較はしないでしょう。

100m 短距離走という条件を同じにし、その中で誰が早いかを比較します。Apples to Apples と表現します。

今回のエントリーは、ある睡眠薬の効果を検証するケースという架空の例を使って Apples to Apples の比較を考えます。

その睡眠薬の効果は、寝付きがよくなることだとします。効果検証の実験では、テストする睡眠薬を被験者に投与し、よく眠れたかどうかを検証します。検証方法はアンケート形式で被験者に答えてもらいます。


1. 同一対象者への Pre / Post


最もシンプルな方法は、睡眠薬を飲んでもらう前に通常の睡眠状態を答えてもらい、睡眠薬を飲んだ後に同じ睡眠に対する項目を答えてもらうやり方です。同一対象者への Pre / Post 形式です。

睡眠薬投与の前と後に同じことを聞いているので、前後においてどのように睡眠状態が変わったかを比較します。

ただし、このやり方だと、睡眠薬を飲む前のアンケートに答えてもらうことで、自分の睡眠をあらためて振り返ってみるなどの「睡眠意識」が高まってしまい、睡眠薬投与にそれが影響を与えてしまう懸念があります。専門用語でアンケートバイアスと言います。


2. 別対象者への Pre / Post


アンケートバイアスを除去するために考えられることとして、睡眠薬投与前後のアンケート回答者を別にするやり方があります。

テスト対象者の条件をなるべく等しくし、対象者たちを2つのグループにランダムに分けます。グループAには睡眠アンケートだけを実施 (Pre グループ) 、グループBには睡眠薬を投与し、その後にアンケートを実施します (Post グループ) 。

Pre と Post グループで人を分けたことで、上記1にあったようなアンケートバイアスをなくすことができます。


3. 別対象者への Control / Test グループ分け


さらに厳密に Apple to Apple にするやり方です。対象者たちをランダムに2グループに分け、グループ A には偽薬 (Control グループ) 、グループ B には睡眠薬を投与します (Test グループ)。

グループ A も B も、与えられる薬が何のためかを伏せて行ないます。これをやる意図は、薬のプラセボ効果を除去できることです。プラセボ効果とは、それを薬だと信じ込むことによって何らかの改善がみられる現象です。

上記2の方法との違いで、上記2では睡眠薬投与グループに効果があっても、それが実際の効果なのかプラセボ効果なのかを分解することが難しいですが、この方法であれば実際の効果かどうかを比較することができます。

もっと厳密にやるとすれば、被験者に薬を渡す担当者にすら、それが偽薬なのかホンモノの睡眠薬なのかどうかを伏せておけば、より安心です。担当者の渡し方で被験者に偽薬 or 睡眠薬なのかがバレないようにするためです。

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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

ブログ以外にマーケティングレターを毎週1万字で配信しています。音声配信は Podcast, Spotify, Amazon music, stand.fm からどうぞ。

名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。