2015/06/24

書評「生命科学研究に成功するための統計法ノート」(その2)



今回のエントリーでは、「生命科学研究に成功するための統計法ノート」という本をご紹介します。

本書のタイトルには「生命科学研究を成功するための」とあり、事例として扱っている範囲は生命科学です。しかし、読むにあたって生命科学の専門知識がなくても、全く問題ありません。

本書の大きな特徴は、統計法の、特に仮説検定についてわかりやすく説明がされていることです。

仕事や学業で仮説検定を使う人で、検定の基本的なところがなんとなくわかったつもりになっているものの、まだ腑に落ちきっていないというような方におすすめです。
以下は「はじめに」からの引用です。
統計法を使うには、わかりやすい教科書が必要です。ですが、みなさんは、これまでの統計法の本に違和感を抱いていませんか。「生命科学の理論はシンプルだが、統計法の論理は複雑で異質だ。何冊も統計法の本を読むが、結局、わからない」と。

統計法の本でよく見るアプローチは、統計法の考え方にそれぞれの分野やテーマを合わせる考え方です。統計法が主語なのです。

一方、本書では逆のアプローチを取ります。生命科学研究を「主」にし、統計法を「従」と捉えます。

「はじめに」からの引用の続きです。
私たちは生命科学の立場から統計法の仮説検定を批判的に検討しました。その結果、生命科学の仮説検定と統計法の仮説検定に、くいちがいがあることに気付きました。このくいちがいのため、統計法に対する違和感が生まれていたのです。「統計法がわからない理由は、これまでの統計法の仮説検定の説明にある」と筆者らは考えるようになりました。

生命科学の仮説検定は、仮説の真意を二者択一で判定するシンプルなものです。その際の重要な数字(マジックナンバー)は2です。そこで、シンプルな生命科学に統計法を合わせればシンプルな統計法ができるはずです。本書はこの線上に生まれました。

統計学での仮説検定では、通常、二重否定の考え方をします。1つの問題に対して、帰無仮説と対立仮説という2つの仮説を立てます。

例えば「A という施策には、ターゲット顧客の店頭訪問の回数を増やす効果があるのではないか」という問題があったとします。これに対して統計学で立てる帰無仮説と対立仮説は、
  • 帰無仮説:施策 A には効果がない
  • 対立仮説:施策 A には効果がないとは言えない

そして、実験や調査により帰無仮説(A には効果がない)を棄却し否定することで、対立仮説を採択するアプローチを取ります。対立仮説は「効果がないとは言えない」なので、つまり「効果がある」とするわけです。二重否定法は、否定を否定することで肯定するロジックです。

一方、統計法を抜きに普通に考えれば、仮説設定は「施策 A には効果がある」とするでしょう。そこで、本書のスタンスはこの「直接法」をとります。

同じ例を直接法に当てはめると、「施策 A には効果がある」という仮説に対し、効果があるかないかを仮説検定をします。検定の結果、統計的有意差が認められれば「効果がある」仮説を採用します。二重否定に比べシンプルかつ、違和感のないやり方です。

本書では仮説検定の考え方、実際に Excel でどう検定ができるかが事例とともにわかりやすく説明されています。

仮説検定はなぜ必要なのか。統計的に有意差があるとはどういう状態を言うのか。P値の考え方と計算方法。見開きで左ページに文字による説明、右ページにグラフなどの図による説明が丁寧に書かれています。

本書は統計法の本としてユニークな存在です。あくまで統計はサブで、生命科学研究をメインにしています。

統計学を専門に勉強するというよりも、統計を仕事や学業の「道具」として使う方には、読んで損はない一冊です。

本書の書評は、過去エントリーでも一度取り上げていますので、もしよければ。
書評「生命科学研究に成功するための統計法ノート」




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