2016/01/30

書評: Excel で経営情報を分析する - ビジネス統計入門 [決定版] (関正行)




Excelで経営情報を分析する ビジネス統計入門 [決定版] という本をご紹介します。

■ 他の統計本にはない本書の特徴

本書の最大の特徴は、2人の会話形式で統計が説明されていることです。会話形式によって、統計のことが難しく書かれておらず読みやすい本です。

登場人物は、アメリカのビジネススクールで MBA を取得し帰国した男性 (東) と、大手航空会社に勤務し大学の後輩でもある女性 (ミライ) です。設定として、東がビジネスで統計をどう活用できるかを、授業形式でミライに教えます。

2人の会話を通して、読者は一通りの統計知識や、それぞれの分析手法を具体的にどうビジネスに活かせるかのヒントが得られます。

読み手にとって参考になるのは、公開されている実際の国のデータや企業データを使った、統計分析の集計プロセスだけで終わらないことです。得られた集計結果を東とミライが議論し解釈するところまで踏み込んでいるのが、本書の特徴です。

もちろん、本書で示される解釈や結論が絶対に正しいとは言えないでしょう。それでも、集計し分析した結果を解釈する、そこからどんな示唆を得るかを疑似体験できるのは、他の統計本と比べた本書の強みです。

本書が扱う範囲は、平均や分散/標準偏差などの基本から始まり、区間推定、仮説検定、相関分析、回帰分析と続きます。類似の統計本ではあまり取り上げられない、時系列分析や多変量解析で終わります。

最後の章で説明がある多変量解析では、主成分分析、因子分析、判別分析を扱います。

会話形式で書かれているので、一般的な統計の本よりも難しい統計用語や複雑な数式をなるべく使わないように工夫されています。本書のタイトルには「ビジネス統計入門」とあるように、統計に苦手意識を持った方でも読み進めやすいでしょう。

分析のプロセスは Excel 画面を多く表示しています。

統計分析の中で、自分の手で分析するにはハードルが高いのは主成分分析です。本書を読んで、主成分分析も Excel を使えばこうできるというのは発見でした。

■ 仮説検定の説明がわかりやすい

本書で扱っていた中で、説明の仕方がわかりやすいと思ったのは仮説検定についてでした。

具体的には、仮説検定で何がわかるのか、仮説検定で使う帰無仮説と対立仮説の意味、なぜ帰無仮説を否定し対立仮説を採用するプロセスをふむのか (遠回りで面倒な手続きをなぜするのか)、についてです。

仮説検定では、2つの数字に差があるかどうかを、構造的なものか、たまたまのサンプリングでの偶然なのかを統計的に判定できます。

ビジネスにおいて、仮説検定は平均や標準偏差と同じくらい重要なものだと思っています。

統計とは、突き詰めると次の2つです。

  • 母集団 (知りたい答え) を推定すること
  • その推定値がどの程度の確からしさかを評価すること

データや集計結果を見誤ってしまうのは、前者のみを見てしまい、後者を考えないからです。

つまり、出てきた数字や見せられた情報が、本当にそう言ってよいかの「確からしさ」を評価しないために、母集団推定値が間違っている可能性もあるのにもかかわらず、鵜呑みにしてしまうのです。

確からしさを評価するために、仮説検定があります。

仮説検定が難しく感じるのは、平均や標準偏差に比べて考え方の難易度が高いことと、自分で集計することも難しいためです。

仮説検定については、考え方だけでも理解しておくとよいです。自分で検定をしなくとも、集計や分析結果を見たときに仮説検定が必要だと指摘できるか。仮説検定結果を見たときにそれが何を意味しているかを言えるかです。

例えば、自社商品やサービスの利用者と、利用していない人において、商品/サービスの特徴の理解において差があったとします。具体的には、「XX のときに使いやすい」「XX に効果がある」と言った理解が、利用者では非利用者に比べて 3% ポイント高い場合です。

この 3pp (パーセントポイント) の差は意味があるのか、それとも誤差によるたまたまの偶然なのか。この判断を仮説検定によって評価します。

検定結果を使えば、偶然ではなく何か構造的な違いによる差であるのか (これを「統計的に有意差がある」と表現します)、そうでないかを判断することができます。もし有意差が認められれば、得られた情報は、ビジネスでの意思決定において重要な意味を持ちます。

構造的な違いについてさらに深掘りをすることもあれば、利用者において高く理解されている内容を訴求し、新規の顧客を獲得しにいく意思決定もできます。

仮説検定をこのようなレベルで使えれば、ビジネスでの統計リテラシーという意味で十分に高いと言えます。

★  ★  ★


最後に1つだけ。本書の特徴として、2人の会話形式で統計の説明がされる点を触れました。

細かいことですが、2人の会話のやり取りで、Yes とか Very good のような英語で書かれたシーンが多く発生します。このような相槌に違和感を感じたので、ここの微妙な会話も含めて興味のある方は、ぜひ読んでいただければと思います。




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