ビジネスが直面する課題の1つは、どこで、誰に、商品やサービスを提供するかを明確にすることです。すなわち “戦場” と “ 顧客” の明確化です。
この課題へのヒントが 「ラーメン山岡家」 にあります。今回は、ラーメン山岡家がどのようにして戦場を選定し、ターゲット顧客を設定しているかを掘り下げます。
具体的な事例を通じて、ビジネスに応用できる手がかりをぜひ一緒に見つけにいきましょう。
ラーメン山岡家
濃厚な豚骨スープで知られる 「ラーメン山岡家」 。
チェーンでありながらセントラルキッチンを持たず店内調理にこだわってきたユニークなラーメンチェーン店です。ラーメン山岡家は都市部ではなくロードサイドへ出店し、創業当初から24時間営業を続けています。
独自路線を歩んできたラーメン山岡家には、他のチェーン店とは一線を画す、ブレない3つの方針があります。
- ロードサイド出店
- 24時間営業
- セントラルキッチンレス (各店舗で仕込み)
順番に見ていきましょう。
ロードサイド出店
赤色の背景に白文字で 「ラーメン山岡家」 と書かれた看板が特徴の山岡家は、グループ全体で184店舗を展開しています (2024年3月時点) 。
出店で特徴的なのは、ロードサイドに展開していることです。300坪以上の立地への出店を基本とし、一部店舗では大型トラック用の駐車場があります。
ちなみにラーメン山岡家は東京都内では多摩エリアの1店舗しかなく、ここ以外では都心には店舗を構えていません。
24時間営業
ラーメン山岡家はほとんどの店舗が24時間営業です。24時間営業ではない店舗でも午前11時 ~ 翌午前3時のように、深夜まで営業しています。
24時間営業とすることで、深夜のトラックの長距離運転手、タクシードライバーの人も来店しやすい状況をつくっています。
また、店舗運営を24時間にして常に調理場が稼働しているので、セントラルキッチンではなく店内でスープの煮込みを数日にわたって続けられます。
セントラルキッチンレス
ラーメン山岡家は、一般的なチェーン店舗が行うセントラルキッチンで調理されたものが各店舗に配送されるという仕組みを持っていません。正確に表現をすれば、あえてやらないようにしています。
ラーメン山岡家では、たとえば業者から購入した濃縮スープに加水して提供するというやり方はとっていません。
ラーメン山岡家は店内で豚骨を丸3日間煮込み続け、4日目にラーメンを提供します。こうしたこだわりの製法をとることで、山岡家独特のスープができているわけです。店内で3日間スープを煮込み続けられるのは24時間営業だからこそです。
集客の施策
ラーメン山岡家は、SNS や YouTube を活用し、認知度の向上を狙うなどの展開を積極的に進めています (参考記事) 。
たとえば、YouTube 広告では広告配信エリアと視聴者属性を絞り、YouTube 広告は835万回の再生回数を記録しました。
Google マップにおける MEO* 対策を行っています。 * MEO とは Map Engine Optimization (マップ検索エンジン最適化) の略で、主に Google マップ向けの地図エンジンで検索結果が上位に表示されるために様々な施策を行うこと
他には、ラーメン山岡家は2023年10月より自社アプリを展開し、クーポンやくじ引きなどのサービスも提供しています。
各種の施策によって山岡家の認知度が高まり、お客さんにチェーン店として認識してもらえたり、ラーメン山岡家のことを思い出してもらいやすくしたことが集客につながっているのでしょう。
学べること
ではラーメン山岡家の事例から、学べることを掘り下げていきましょう。
戦略やマーケティングの観点で注目したいのは、ラーメン山岡家は、「戦う場所 (どこで) 」 と 「向き合うお客さん (だれに) 」 を明確にしていることです。
戦場とターゲット顧客
店舗はロードサイドに集中して出店し、ターゲット顧客は職人さん、タクシーやトラックドライバーといったエッセンシャルワーカーです。「どこで」 と 「誰をお客さんにするか」 を定めています。
戦略から戦術へ
戦場 (どこで) と顧客 (誰に) という戦略ができれば、戦術に落とし込めます。
ラーメン山岡家の特徴には、24時間営業、セントラルキッチンを持たずに店舗ごとに仕込みをしている点がありました。
トラックドライバーやタクシー運転手などの車で来店するお客さんをターゲット顧客にしているので、都心部に出店する必要性は必ずしも高くはなく、顧客接点を持ちやすいロードサイドへの出店は理に適った戦略です。
また、24時間営業の店舗が中心なので、セントラルキッチンを採用さず店内で3日間煮込み続けるなどの調理もしやすいことにつながっています。
集客コミュニケーションとの連動
広告や販促も、戦場とターゲット顧客に連動します。たとえばエリアと属性を絞っての YouTube 広告配信です。
おそらくラーメン山岡家は、ターゲット顧客とするトラックドライバーの人たちが運転の休憩中には自分のスマホで YouTube を見て楽しんでいることを把握してのことでしょう。
運転の休憩中に見る YouTube の中にラーメン山岡家の動画広告が流れ、近くにラーメン山岡家のお店があることを知れば、この後に行ってみたいと思ってもらえることが期待できます。あるいは既に食事を済ませていれば、帰り道にラーメン山岡家に寄ってみたいと思ってもらえるかもしれません。
Google マップによる MEO 対策も組み合わせることによって、ドライバーや運転手の人たちがスマホの地図アプリ (Google マップ) から食事をするお店を探している時に近くのラーメン山岡屋を見つけやすくなります。
エリアを絞って配信することでアプリ内に近くの 「ラーメン山岡家 ◯◯ 店」 と個別のお店が表示されることによって、今すぐ行きたくなるという効果を期待できます。
戦場 - 戦略 - 戦術 - 実行
このようにラーメン山岡屋は戦場とターゲット顧客を決め、その戦略から戦術において、やっていることに一貫性があり、戦略のストーリーとしてきれいにつながっています。
「どこで」 「誰に」 「何を」 「どうやって」 という、戦場、戦略、戦術、そして実行まで整合性を持たせる重要性を、私たちはラーメン山岡家から学べます。
まとめ
今回はラーメン山岡家を取り上げ、学べることを見てきました。
最後にポイントをまとめておきます。
- 戦場とターゲット顧客の明確化: ラーメン山岡家は、戦略的に活動場所を決め、ターゲット顧客を定めている。ロードサイドへの出店は、職人やトラック・タクシードライバーといったエッセンシャルワーカーが主な顧客であるので理に適う。ターゲット顧客は移動中での食事を求めており、ラーメン山岡家の店舗がアクセスしやすい場所になる
- 戦略から戦術への連携: 24時間営業やセントラルキッチンを持たない店舗運営は、ターゲット顧客がいつでも来店でき、他のラーメン店にはない独自の食事体験を提供する
- 集客コミュニケーションの最適化: ラーメン山岡家は YouTube 広告や Google マップの MEO 対策、自社アプリを活用し、ターゲット顧客がオンラインで情報を得るときに効果的にコミュニケーションをしている。たとえば運転の休憩中に YouTube を視聴しているトラックドライバーに対して、広告を通じて最寄り店舗の存在を知らせ、自分たちが選ばれることを狙っている
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