#マーケティング #学び #バイアスブレイク
多くのビジネスパーソンにとって、学習の継続は共通するテーマかもしれません。
新しい知識やスキルを身につけようと一念発起しても、日々の業務に追われ、いつの間にか三日坊主になってしまう。そんな経験はないでしょうか?
特にマーケティングのような実践的な領域では、その悩みはさらに深くなります。
今回は、なぜ私たちの学習は続かないのか、その根本原因を掘り下げ、当たり前を壊す思考法 「バイアスブレイク」 というアプローチを使って、成果につながる新しい学びの形を考察します。
学習が続かない根本原因
少なくない企業がマーケティング人材の育成に頭を悩ませています。
書籍の購入を補助したり、e ラーニングの ID を全社員に配布したりと、様々な施策を打ってはいるものの、なかなか成果に結びつかないのが実情でしょう。
ビジネスパーソンの勉強という高い壁
そもそも、社会人が勉強を習慣にするのは、私たちが思う以上にハードルが高い行為です。
文化庁の調査 (令和5年度) では、1ヶ月に1冊も本を読まない人 (雑誌・漫画を除く) の割合が6割を超えるというデータもあります。
これが示唆するのは、職場で上司が 「この本を読んでおいて」 と部下に渡したとしても、実際には読まれない可能性が高いということです。
個人任せが引き起こす育成の失敗
大人にとっての学習は個人の努力や意欲に依存する 「個人戦」 になりやすいです。しかし、運動やダイエットが一人では続かないように、学習もまた、孤独な戦いでは挫折しやすい領域なのです。
上司が部下にマーケティング関連の課題図書を渡し、読んでの学びや業務での活かし方、所感などの内容を書いて提出してもらっても、Amazon などの Web 上の書評を書き写したものや、最近では生成 AI が作成した文章を出してくる、といった話は珍しくありません。
ただしこれは部下の個々人の問題というよりも、育成の仕組みそのものに課題があることの表れです。
学習を個人の努力と責任に委ねてしまうと、モチベーションは低下していき、研修は形骸化し、結局何も身につかない。この負のスパイラルが、職場では繰り返されるのです。
では、どうすればいいのでしょうか?
この問いを 「バイアスブレイク」 という視点で掘り下げていきます。
バイアスブレイク
バイアスブレイクは、私たちが無意識に持っている固定観念や偏った思考を意図的に壊し、新たな発想を生み出す手法です。
バイアスブレイクの流れを整理すると、次の3つになります。
- 言語化や可視化によってバイアス (偏った思考) に気づく
- その固定観念とは逆を考えバイアスブレイクをする
- バイアスがない状態でアイデアを考え強制的に発想する
3つをそれぞれ補足をすると、1つ目のステップである 「バイアス (偏った思考) を言語化・可視化する」 とは、自分たちの業界や市場における固定観念や先入観を可視化することです。当たり前すぎて今さら考えないようなことに目を向けます。
2つ目が 「固定観念とは逆を考えバイアスブレイクをする」 というステップです。バイアスを可視化できたら、意図的にその逆に振って考えてみたり、今の思考の枠組みの外側に目を向ける (Out of the box) ことにより、新たな視点や発想を得ます。
3つ目のステップが 「バイアスがない状態で強制的にアイデアを発想する」 です。バイアスを取り除いた状態で、具体的なアイデアを考えていきます。
バイアスブレイクによる社会人の勉強方法
では、企業での人材育成や学習を継続できないという問題を解決するために、バイアスブレイクを当てはめてみましょう。
従来の固定観念を言語化し、それを逆転させることにより、新しい学習のあり方が見えてきます。
バイアスの言語化と可視化
従来の社会人の学びには、主に3つの根深いバイアスが存在します。
1つ目は、個人依存というバイアスです。
「勉強は自分でやるもの」 「学習は自己責任」 という思い込みが、職場や社会人には浸透していることでしょう。その結果、書籍や e ラーニング を部下個人に渡して、各自で自己学習させるスタイルが定着してしまいました。
次に、インプット中心というバイアスがあります。
支配的な考え方として 「知識を増やす= 本やセミナー動画を見ること」 という思い込みがあるため、専門書を読んだり、マーケティングを解説する動画の視聴、研修に参加しての座学が主となり、実践や議論は後回しにされがちです。
何を学んだか、学習内容がどのくらい役立ったかの確認も感想の提出といった表面的なもので済ませてしまいます。
3つ目は、自己投資というバイアスです。
学びは意識の高い一部の人だけが自腹や業務外の時間 (朝や夜, 休日) で行うという常識が根付いています。
これらの3つのバイアスが組み合わさることによって、社会人の勉強はなかなか続かず、学びが業務につながらないという問題が慢性化するわけです。
バイアスブレイク (固定観念を逆に振る)
では、3 つのバイアスを意図的に逆に振ってみましょう。逆転の発想により、人材育成の突破口となります。
1つ目として 「個から組織への逆張り」 です。
個人任せをやめ、チーム単位・組織単位での学習を設計します。集団での同期性・双方向性・対話演習を組み込み、共通言語を醸成することで、学習の継続率と実務反映が高まります。
2つ目の 「インプットから対話・演習への逆張り」 についてです。
勉強方法として 「読む・聞く」 というインプット中心とする方法から、「話す・演習する・議論する」 アウトプットを重視する学びをシフトさせます。能動的な行動によって学習定着率は向上します。
そして 「自己投資から全社巻き込みという逆張り」 もあります。
一部の意識高い人だけではなく、大多数の8割の人たちを巻き込む前提で設計します。例えば、公募制や部門横断参加という仕組み化です。
学びが個人の自己投資から、組織での価値創出の基盤へと変わることが期待できます。
強制的な発想
バイアスという思考の枠組みが外れた状態で、具体的なアイデアを考えていきましょう。これまでとは全く違う、新しいアプローチ施策が見えてくるはずです。
[アイデア 1] 部署横断のディスカッションの場を設ける
学ぶことについて、「学習はチーム戦だ」 「アウトプットが重要だ」 という発想になれば、自然なアイデアとして、部署横断でのディスカッションが生まれます。
例えば、e ラーニングで学んだフレームワークを使い、自社の課題について他部署のメンバーと議論する時間を、正式な業務として設定するというふうにです。マーケティング部門だけでなく、営業、デザイン、店舗スタッフなど、多様な視点が交わることで、学びが深まります。
[アイデア 2] 学習機会を全社公募制にする
ともすると暗黙の前提となっていた 「学ぶのは専門部署だけ」 というバイアスを壊すことで、「社員は皆、学びたいはずだ」 という逆の視点を持つことができます。
バイアスがなくなれば、部署や役職を問わず希望者を募るというアイデアが生まれます。
実は、マーケティング学習の希望者の多くはマーケティング部門ではない社員だったということもあるかもしれません。部署を問わず希望者を募ることにより、上司の想像を超える応募が集まり、組織の熱量を高めることにつながります。
[アイデア 3] 学習コミュニティを形成する
勉強を個人戦とはせず、学習コミュニティを形成するといいでしょう。
個人任せの逆である組織的な支援を突き詰めると、単発の研修で終わらせず、学習者同士が継続的に交流し、学びを深め合うコミュニティを会社が主導して作るという発想に至ります。
学習塾のような環境を社内に作ることで、継続的な成長が期待できます。学びが一過性のイベントではなく、持続的な文化として組織に根付いていきます。
新しい学びのデザイン
バイアスを壊した先には、新しい学びの文化が待っています。
学びの文化が組織で循環するようになるでしょう。
個人が孤立せず、共通言語が社内に定着し、部門横断で知識が橋渡しされます。マーケティングの専門用語や概念が、組織全体で共有されることで、施策の連携もスムーズになります。
学習と実務が直結する設計も実現します。
対話・演習を通じて現場課題に接続されるため、学びが業務に還元されやすくなります。実際の商品やサービスを題材にしたケーススタディや、現在進行中のプロジェクトと連動した学習プログラムが効果的です。
離職防止やエンゲージメント向上にも寄与します。
成長機会のある職場は、特に若手のモチベーションを高めます。学びと成長のできる環境は、今や給与や福利厚生以上に重要な要素でしょう。
マーケティング人材育成は自己啓発の延長ではなく、事業成果につながる組織的資産へと進化します。一人のスーパープレーヤーに頼るのではなく、組織全体でマーケティング力を高めるというのが理想です。
まとめ
今回は、社会人の勉強方法について 「バイアスブレイク」 の視点から考えました。
最後にポイントをまとめておきます。
- 今の学習スタイルを疑い、固定観念を言語化し、意図的に逆転させる 「バイアスブレイク」 により新しい学習の形をつくる
- まずは学びの常識を疑う。学習は個人の努力、知識はインプットで増える、自己投資が前提といった、当たり前だと思われている学び方の固定観念 (バイアス) にまず気づく
- 学習は 「個人戦」 から 「チーム戦」 へ。孤独になりやすい個人の学習から、チームで対話し共通言語を育む組織的な学習へ転換する。モチベーションが維持され、部門を超えた連携の土台が築かれる
- インプットよりもアウトプットを重視する。知識を詰め込むことインプット以上に、議論したり演習したりするアウトプットの機会をつくる。学んだ知識が定着し、実務で使える知恵へと変わる
- 意欲的なごく一部の社員だけでなく、受け身になりがちな8割の社員をいかに巻き込むか。例えば公募制など参加しやすい仕組みを設け、組織全体の底上げを図る
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