その一方で、食べた物がどう出てくるかにはあまり注意が向けられていません。ウンチってむしろ目を背けたくなる存在ですよね。関心があるのは出てくる頻度が少なくなる便秘くらいかもしれません。
便は自分の健康状態を知らせる体からの「便り」である。
そう言うのは「大便通 知っているようで知らない大腸・便・腸内細菌」の著者である辯野善巳氏。この本を読むとうんちは自分の食べたもの・腸内の「通信簿」のようなものだと、あらためて考えることができました。
■大便の基礎知識
知らなかったのが、大便の構成。健康な便であれば80%は水分とのこと。便秘状態での硬いものでも60%くらいは水で、どんなに硬くても半分以上は水分らしいです。
ちなみに、便秘になるとなぜ硬くなるかですが、便が大腸に停滞する時間が長くなり、その間に水分が吸収されてしまうから。水分が少なくなる→便は硬くなる→腸から排出しにくい状態に→さらに便秘を悪化させる、という悪循環です。
水分が80%、残りの主なものは3つで、1/3が食べカス、1/3が腸ではがれた腸粘膜、1/3が腸内細菌。水分が80%とすると、残りの20%が固形成分で内訳は7%ずつで食べかす・腸粘膜・腸内細菌という構成。
腸内細菌は善玉菌と悪玉菌の2つがあることや有名ですが、善玉でも悪玉のどちらにもなり得る日和見菌という存在がいるようです。腸内の状態によってその働きが変わるタイプで、善玉菌が優勢な時には善玉菌の見方をし、悪玉菌が優勢であれば悪玉菌の見方になったり、腸内が弱っていると腸内で悪い働きをすることもあるよう。
本書によれば、腸内細菌全体のうち70%は日和見菌で大多数です。なので、日和見菌が善玉と悪玉のどちらになるか。第三政党をどちらが取り込むかで与党が決まる、という感じです。
■大便のチェックポイント
チェックポイントは色・臭い・量の3つ。
- 色は、黄色がかった褐色が良い。これは腸内にビフィズス菌が多い証拠。注意が必要なのは黒色の大便
- オナラや大便が臭いのは腸内環境が悪くなっていることを伝えるサイン。ビフィズス菌を多く含んだ大便は顔をしかめるような悪臭はしなくて、やや酸っぱい感じの発酵臭がする。悪玉菌の多い大便は腐敗臭を発する
- 大便は毎日300gくらいが理想的。20センチのバナナ状の大便3本分くらいの量
■良い大便のために
では、良い便を出すために何ができるのか。ポイントは腸内環境を良くすること。そのためには2つで、善玉菌を増やすことと食物繊維。
善玉菌を増やすのに有効なのはヨーグルト。乳酸菌やビフィズス菌をそのまま摂取できるので効率よく腸内環境を改善できる。食物繊維がなぜ有効なのかは、①乳酸菌やビフィズス菌の餌となる、②食物繊維が大便の量そのものを増やすから。
食物繊維が便秘に良いとはよく聞きますが、これまではなぜ効くのかは理解していませんでした。そもそも食物繊維とは人間の消化酵素では消化されない食品の成分。栄養面で考えると食べても特にメリットはないもの。
ウンチの視点で見ると、違った側面が見えてきます。食物繊維を摂ることで便の量が増えます。量が増えると腸を刺激し、排泄するための腸のぜん動運動が引き起こされるとのこと。また、食物繊維には保水性があり、便の形を整えて柔らかくしてくれる働きもあるそう。食物繊維を多く含む食べ物としては、豆、穀類、野菜、きのこ、海藻等。
良い大便のためにをまとめると、
- 色や臭いをよくするにはヨーグルトの善玉菌
- 量を増やすには食物繊維が効果的
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本書を読んでから、ためしにヨーグルトを毎日食べてみました。その結果、どうなったかの具体的なことは省略しますが、確かに変わったことが実感できました。何よりも、排出物に注目してみるという新しい考え方がおもしろいです。
もちろん、トイレのためにヨーグルトばかりや食物繊維の多いものをひたすら食べ、その他の栄養を軽視するという本末転倒になるのはNGです。自分が食べた物が体内でどう使われるかが大事。その上で排出される物、便がつくられる環境(腸内環境)にも関心を持ってみるといいと思います。