投稿日 2013/06/22

書評: 2100年の科学ライフ (ミチオ・カク)




2100年の科学ライフ という本をご紹介します。



エントリーの内容です。

  • 本書の内容と特徴
  • 2100年の未来とは
  • 未来は不確実だからこそおもしろい


本書の内容


この本に書かれているのは、未来予測です。具体的には、コンピュータ、人工知能、医療、ナノテクノロジー、エネルギー、宇宙旅行、それぞれについての未来です。

未来の時間軸を3つの段階に分けます。

  • 近未来 (現在 ~ 2030年) 
  • 21世紀の半ば (2030年 ~ 2070年) 
  • 遠い未来 (2070年 ~ 2100年) 

現在からどのように発展し、人々の日常生活をどう変えるのかが描かれています。


この本の特徴


未来予測や SF 系の本は数多くありますが、本書の特徴は予測の裏付けや根拠が科学的であることです。

2100年の世界を見通せる理由は、次の通りです。

  • 新発見の最前線にいる、トップクラスの科学者300人以上へのインタビューにもとづいている
  • 本書で触れる科学的発展の内容は、これまで知られている物理法則と矛盾しない
  • 自然界の4つの力と基本法則はおおよそ明らかにされており、この法則に何か大きな変化は新たに見込めない
    • 4つの力:重力、電磁力、弱い核力、強い核力
  • 本書で触れた全てのテクノロジーのプロトタイプはすでに存在する
  • 最先端の研究と言えるテクノロジーをじかに目にしている 「インサイダー」 によって著されている

2100年までの予測が単に未来の空想ではなく、根拠があり仮説として考えられています。

興味深く読めるのは、未来について想像できるだけでなく、現在の科学の最先端のことも知ることができるからです。

もう1つの特徴は、未来予測とともに、発生するであろう倫理的な問題についても触れいていることです。


2100年の世界


2100年の世界はどのようになっているのでしょうか?

以下、コンピュータ、人工知能、医療、ナノテクノロジー、エネルギー、宇宙旅行について、本書からご紹介します。


コンピュータ


自分の思考だけで物を動かせるようになり、思うだけで直接コンピューターを制御できるようになっている。

これには2つの意味があり、脳がコンピュータやロボットをコントロールできることと、コンピュータが人の心を読めるようになる。


人工知能


ロボットが、意識や感情までもを持つようになる。ロボットの進化シナリオは3つ

  • 人間は、自らがつくったロボットに肉体的・知能的能力を超えられてしまう
  • ロボットはあくまで人間をサポートする、害のないフレンドリーな存在
  • 人間がロボットと融合し、人間自身を強化する (アバターのような仮想がつくられることもここに含まれる)


医療


臓器や細胞の修復、遺伝子治療により老化を遅らせ、寿命が延ばせる。若さを保てるようになるだけではなく、老化を逆戻りさせることができるようになる。

絶滅動物を DNA から蘇らせることも可能になる。人間がペガサスのような新しい生命を創造できる可能性もある。


ナノテクノロジー


どんなものでもつくれるレプリケーター (複製装置) ができる。ナノレベルのロボットが原材料を分子単位に分解し、全く新しいものがつくれるようなプログラムが組み込まれている。

自己を複製し、自らのコピーをつくることができる。究極的にはいらなくなったモノをほしいモノに変えられる。


エネルギー


電気ではなく磁気の時代になっている。

例えば、リニアモーターカーのような磁気自動車。人間までも磁力で地面から少し浮き移動できるようになる。

エネルギー源で有力なのは、宇宙のエネルギー。宇宙太陽光発電で、宇宙で太陽の放射を吸収し、そのエネルギーをマイクロ波放射として地球に送る。


宇宙旅行


宇宙エレベーターが実現する。ナノテクノロジーの進化に伴い、宇宙ステーションや月にはロケットではなく地球から直接つながるエレベーターで行く。

宇宙ロケットのエネルギー源も変わり、原子力ロケット・核融合ロケット・反物質ロケットなどが考えられる。


未来は不確実だからこそおもしろい


上記の2100年の未来よりも前段階である、世紀の半ば (2030年 ~ 2070年) 、近未来 (現在 ~ 2030年) も、本書では詳しく書かれています。

現在から遠い未来の話ほど仮説としては精度はもちろん低くなります。しかし、不確実性が高い分だけ、読んでいて想像も広がります。

実際の2100年は、ここで書かれていることの多くは当たらないかもしれません。

かつてトーマス・エジソンが 「世界市場に出回るコンピュータは5台ほどである」 と言いました (1943年頃) 。1899年当時のアメリカ特許長官は、「発明できるものはすべて発明されてしまった」 と発言しました。

2100年の科学ライフ は、100年程度の時間軸で、未来をを考えさせられる本です。



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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

ブログ以外にマーケティングレターを毎週1万字で配信しています。音声配信は Podcast, Spotify, Amazon music, stand.fm からどうぞ。

名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。