2012/01/07

なぜゲームにハマるのかを考えるのがゲーミフィケーション理解のコツだったりする

ソーシャルゲームはなぜハマるのか ゲーミフィケーションが変える顧客満足2011年の前半~中頃あたりから「ゲーミフィケーション」という言葉を見かけるようになりました。始めは海外の記事でちらほらと出始め、その後は日本語でも目にするようになっていった記憶があります。2012年になり、今年のキーワードはゲーミフィケーションという意見もあるようです。

記事としてエントリーをするきっかけになったのは、「ソーシャルゲームはなぜハマるのか ゲーミフィケーションが変える顧客満足」という本を昨年末に読んだことでした。この本のタイトルにもあるソーシャルゲームについてや、ゲーミフィケーションについて体系的にまとめられていて基本的な内容を理解するのには良い本だと思います。

■ゲーミフィケーションとは何か

まずはゲーミフィケーションの定義から。「Game-Based Marketing」の著者Gabe Zichermann氏によれば、ゲーミフィケーションは次のように定義されているようです。「ゲーミフィケーションとは、ゲーム的思考やゲームメカニズムを使って問題を解決したりユーザを盛り上がる仕掛けのことである」(p.216)。この翻訳は著者によるもので、原文はこちら:Gamification is the process of using game thinking and game mechanics to solve problems and engage users.

個人的な理解としては、要するにゲームのメカニズムを使ってユーザーのモチベーションをを高めること。自分自身、ゲームに夢中になったことが子どもの頃にありましたが、あの時間を忘れてゲームに「ハマる」というメカニズムを様々なものに応用しようという考え方です。

Gamificationという単語の形から単に「ゲーム化」という日本語として当てはめてしまうとゲーミフィケーションへの理解をミスリードしてしまうと思いました。例えば、既存のサービスにむやみにゲームのような競争要素を追加、ランク付けをする、バッジを与えるというようなことを導入するだけでは、ゲーミフィケーションの効果も限定的でしょう。「ソーシャルゲームはなぜハマるのか ゲーミフィケーションが変える顧客満足」という本では、このあたりも具体的な事例も織り交ぜてわかりやすく書かれています。

■ゲームのプレイサイクル

ゲーミフィケーションを考えるうえで、まずはゲームのメカニズムを理解することが大切だと思いました。そこで、ここからは本書で説明されていたゲームメカニズムについて書いておきます。まず、本書でゲームの基本サイクルとして提示されていたのが下図になります。これはあらゆるゲームで適用されるサイクルだと思い、ゲームメカニズムの理解に役立ちます。

引用:「ソーシャルゲームはなぜハマるのか ゲーミフィケーションが変える顧客満足」

ユーザーにとって、ゲームをする目的があります。目的は単に暇つぶしなのかもしれないし、もう少し明確にゲームをクリアすることかもしれません。で、目的を達成するためには大小さまざまな目標が設定されています。クリアに必要なアイテムを獲得することなど。目標を達成するために、ユーザーに行動の選択をしてもらいます。例えば、アイテムを探してゲットしてもらうなど。アイテム獲得が難しくなりすぎず簡単になりすぎないような行動選択の設計が大事になります。こうして目標を達成させることで、次のプレイサイクルに入ります。ゲーム設計として望ましいのは、初めてプレイする初心者のプレイサイクルから始まり、中級者~上級者のそれぞれに向けたサイクルがループするように用意されていることだと言います。すなわち、そのゲームに飽きることなく継続して遊んでくれるように。

■プレイサイクル例:「スーパーマリオ」と「釣り★スタ」

具体的なゲームをイメージしてもう少しゲームサイクルを考えてみます。パッと思いついたのがスーパーマリオシリーズ。今でも任天堂を支えるゲームソフトなわけですが、スーパーマリオブラザーズというゲームの目的は最後までクリアしピーチ姫をクッパから取り戻すことで、そのための目標が各ステージをクリアしていくことです。行動の選択は簡単に言ってしまうと、ステージを左から右に進みゴールすること。途中の様々な障害に対処しながら、時には土管に入るなどの寄り道をするなど上下移動がありますが、最終的には右へ右へ進みゴールすること(最近では3Dの要素が入り単純に左から右ではないですが話を簡単にするため2Dを想定しました)。ゴールという達成を経て次の目標(次のステージクリア)に入ります。このサイクルは次第に難しくなり、必要なアイテムや要求される操作技術も高くなります。

こうして飽きさせることなくサイクルを回し続けることで、最終的には目的を達成すること。これがスーパーマリオの基本的なプレイサイクルと言えます。一度全てのステージをクリアしてもさらに難易度の高いステージが用意されているなど、上級者にも楽しんでもらえる仕掛けもあったりします。ゲームサイクルを盛り上げる要素として、クリアする時間の制限があり、得点がプレイ内容によって変わって結果がプレイヤーに表示されたり、遊びのステージが用意されていたりなど、達成感をより満たしてくれたり、飽きさせない工夫が多く施されていることに気づきます。マリオですごいと思うのは、85年のスーパーマリオブラザーズの登場以来、基本的な考え方・コンセプトは今も色あせていないんだなと。

マリオのゲームのメカニズムを書いてみましたが、このプレイサイクルはソーシャルゲームにも基本的には当てはまります。例えば「釣り★スタ」。GREEで提供されているこのソーシャルゲームの目的は「釣りを楽しむ」としてよさそうです。ゲームを進めていくと新しい釣り場で釣りができるようになりますが、既存の釣り具ではなかなか成功しなくなります。そこで釣りポイントを稼いで、いい釣り具を獲得して今まで釣れなかった魚が手に入る、さらに次の釣り場で新しい魚に挑戦する、ゲーム開始初期ではこうしたサイクルが用意されています。

ソーシャルゲームの特徴として仲間と協力しながら遊ぶ要素がありますが、釣り★スタでもチームを組み定期的に開催される大会に出場することができます。大会で勝つためにはチームでのコミュニケーションや協力が不可欠のようですし、上位に入賞すると相応のポイントがもらえます。大会は一度きりではないので、また次もあり飽きさせることのない工夫が見られます。このように一人で遊ぶプレイサイクルに加え、チームプレイでのサイクルも効果的に用意されています。

■プレイサイクルを効果的に回す「可視化」と「フィードバック」

プレイサイクルを回っていくために、可視化とフィードバックという要素も大切だと思いました。可視化の例としてはプレイヤーの強さや状態を示すステータスであったり、次のステージに行くマップであったり、まだクリアしていないステージを見せることも可視化に含まれます。また、ゲームで何かを達成した場合に「クリア!」などと演出効果を出すことで、プレイヤーの達成感を満たすこともあります。

フィードバックはプレイヤーが何かしらの行動を取った場合に返すものとのことで、フィードバックをすることでその行動が正しかったことを明示する意味や、プレイヤーにとっては成長や達成を感じることができるます。フィードバックの例としては報酬やゲームポイントを付与するなど。

可視化やフィードバックとは要するに、目的/目標・行動の選択・達成というプレイサイクルをプレイヤーに回ってもらうためのモチベーション喚起の工夫です。私自身も経験がありますが、RPGで「次のレベルまで必要な経験値はあと○○○」と表示されると、もう少しがんばってきりのいい次のレベルまではゲームを続けようなどと思ったものです。これは次のレベルという目標が可視化されており、レベルが上がるという達成までゲームを続けたことになります。この次のプレイサイクルとしては、レベルが上がったので必要なアイテムが手に入る洞窟に進めるなどでしょうか。

ゲームプレイサイクルと可視化やフィードバックを整理すると、こんな感じです。

引用:「ソーシャルゲームはなぜハマるのか ゲーミフィケーションが変える顧客満足」

■モチベーション維持と顧客ロイヤリティ

あらためてゲームのメカニズムを見てみると、プレイヤーに飽きさせない工夫が数多く用意されていることに気づきます。特に最近のソーシャルゲームでは、遊び始めるのには無料な場合がほとんどで、ゲーム開始のハードルが低い分、どれだけ飽きずにゲームを続けてもらうかに工夫をこらしています。ゲームリリースして終わりではなくKPI(重要業績指標)として継続率や離脱率を設定することが多いようですが、これはいかに飽きずに遊び続けてもらうかを重視していることをよく表しています。

「ソーシャルゲームはなぜハマるのか ゲーミフィケーションが変える顧客満足」という本に、人間の動機付けには外発的動機付けと内発的動機付けという2種類があると書かれていました。これは心理学者のデシから提示されたもので、外発的動機付けとは主に金銭などの外部からの報酬に基づく動機付け、内発的動機付けとは自分の内側から湧いてくる好奇心・興味に基づく動機付け。デシの主張は外発的動機付けでは短期的な効果しか得られず、モチベーションを維持するためには報酬を与え続ける必要がある、よって、内発的動機付けでモチベーションを維持・向上すべきというものだそうです。

外発的動機付けとは、ある意味で他者から動機付けをされることで、確かに自分自らが好奇心によりやりたいと思える状態のほうがモチベーションが高まるというのは理解できます。そこであらためて気づかされるのが、ゲームで遊ぶという行為はあくまでプレイヤーが自分の意志で楽しむことであり、ゲーム提供者がそれを強制しているわけではない、という本書での指摘。ゲーム提供者側にできるのは、プレイヤーが楽しみながらゲームを続けることを手助けすることだと。本書で紹介されていた、デシの「本当の問いは『どのようにすれば他者が自らを動機付ける条件を生み出せるか』」という言葉にあったように、いかにプレイヤーにゲームをやらされている感を抱かせることなく、自発的に遊んでいる感覚を持ってもらうか。これが重要だと理解しました。

ゲームプレイヤーにとってはいかにモチベーションを高め、維持できているかですが、これがゲーム提供者側からの視点で見ると、いかにゲームにハマってもらうか。もう少しビジネスっぽい表現をすれば、いかにロイヤリティの高い顧客を獲得できるかとなります。ロイヤリティをエンゲージメントと表現してもよさそうです。

ゲーミフィケーションの考え方は、ゲームのメカニズムをゲーム以外の様々なものに活用することと冒頭で書きましたが、ゲームの要素を使って顧客ロイヤリティが高められれば、ゲーミフィケーションは応用範囲もゲーム以外に広がりそうです。マーケティングではまだ買ったことのない人にどうやって商品を買ってもらうか(新規顧客)、1回買った人に次もまた買ってもらうか(リピート)、継続的に買ってもらうか(ファン)というようにいかに顧客からの商品やブランドへのロイヤリティを上げるかが重要なわけですが、ここにはゲームのプレイサイクルに見たようなサイクルがあります。このサイクルをどう維持し続けるか。

とはいえ、一口にゲームのメカニズムをゲーム以外に適用し、さらには効果を上げるというのは実際にやってみるとそうは簡単ではないように思います。まずは自分たちの顧客を理解し、顧客が何を望んでいるのか(目的の理解)。こちらから強制させることなく自発的にどう行動の選択をさせるのか。顧客に何をすると喜んでもらえる・楽しんでもらえるのか、ここに可視化やフィードバックというゲームの要素をどう組み込むのか。ゲーミフィケーションは確かにおもしろいコンセプトですが、一方で、実現し効果を上げるには知恵の見せ所だと感じます。


※参考情報

Gamification: How Competition Is Reinventing Business, Marketing & Everyday Life|Mashable
「モチベーションの理解がゲーミフィケーション理解のコツ」―Gabe Zichermann緊急来日! Gamificationセミナー報告【鈴木まなみ】|TechWave
How Gamification Can Make News Sites More Engaging|Mashable
寄稿記事:Gamificationを取り入れて大成功したTurntable.fm。 なぜ「Turntable.fm」はユーザーを夢中にさせるのか|ASSIOMA
なぜゲーミフィケーションは効果的なのか?(Why Gamification Works?)|NOTE
「ゲーミフィケーション」でウェブサイトを活性化|日経ビジネスオンライン


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