2012/05/12

おばあちゃんをとびっきりの笑顔にする「葉っぱビジネス」から学んだ3つのこと

そうだ、葉っぱを売ろう! 過疎の町、どん底からの再生いつか読もうと思ってずいぶん時間がたっていましたが、ようやく読めました:「そうだ、葉っぱを売ろう! 過疎の町、どん底からの再生」

TVや新聞・雑誌などマスコミでもよく取り上げられているのでご存知の方も多いかと思いますが、ある田舎町で興した「葉っぱビジネス」についてその仕掛け人である横石知二氏が書かれた本です。

少子高齢化や過疎が進み一時はどん底であった愛媛県上勝町。本書ではそこからいかに葉っぱビジネスが始まり、ビジネスとなり、町を再生していったかが紹介されています。読んだ感想として、学べることがたくさんあり、かつ感動できる本でした。普段からよく本を読むほうですが、この2つを共に満たす本ってなかなかないんですよね。


葉っぱビジネスとは

まずは「葉っぱビジネス」について簡単に。料亭とか寿司屋さんでの料理には葉や花が添えられていますが、季節を彩る葉や花があることで日本料理を美しく見せてくれます。この葉や花を販売する農業ビジネスのことです。添えられる葉や花は妻物(つまもの)と言うそうですが、料理が主役であくまで葉っぱは主役を引き立たせるものという位置づけ。

引用:株式会社いろどり

上勝町での葉っぱビジネスの特徴は、担い手の中心が地元のおばあちゃんということ。70代とか80代、中には90才を超える方もいるとのことですが、そんなおばあちゃんたちによって葉っぱが育てられ、採集し、市場に出荷される。本書によると、上勝町での葉っぱビジネスは年商2億6000万円。年収1000万円を超えるおばあちゃんもいるとか。たかが葉っぱではなく、それだけの価値を持っているのです。

ゼロからのスタート

葉っぱビジネスの何がすごいかって、全くのゼロからスタートした点にあります。今でこそ上勝町だけでも2.6億円の売上高をあげますが、当初はマーケットすらありませんでした。妻物として葉や花は使われていましたが、葉っぱビジネスが存在する前は料理人の人が自分で山とかに探しに行って葉っぱを取ってきていたそうです。つまり、葉っぱを売る/買うという発想がそもそもなかった。そこにマーケットチャンスを見出し、実現させたのが著者である横石さんでした。

「葉っぱがビジネスになる」と横石さんがひらめいたのは、大阪の難波に立ち寄ったがんこ寿司でのことでした。たまたま横石さんの席の近くに座っていた女子大生3人が料理についていた赤いモミジの葉を手に取り、「これ、かわいい」と大喜びしたそうです。そして、女の子は自分のハンカチで丁寧に葉っぱを包み持って帰ろうとしたその光景を見て、横石さんはひらめきます。「葉っぱを売ろう」。

横石さんは葉っぱがビジネスになることを確信しますが、実際に売れるまでには紆余曲折がありました。横石さんが早速、葉っぱビジネスを一緒にやろうと上勝町の人々に紹介しても誰も賛同しない。「そんなもん、売れるわけないよ」と。あきらめなかった横石さんはその後なんとか賛同者を募って、上勝町で採れた葉っぱを市場に売りに行ってもさっぱり売れない。上勝町での葉っぱビジネスはこんな状態でのゼロからのスタートだったのです。

1.全てはビションから

横石さんは葉っぱビジネスを思いついた当初から、確固たるビジョンがありました。上勝町の人たちに自分の住んでいる町のことを誇りに思うようになってほしい。

横石さんが上勝町の農協に営農指導員としてやってきた当時、上勝町の人たちの様子を見て「これではいけない」と強い危機感を抱いたそうです。男は朝から酒を飲み、女の人は他人の悪口ばかり言うだけで何もしていない。また、女の人の仕事がないことも葉っぱビジネスを思いついたきっかけでもあります。葉っぱなら女の人でもおばあちゃんでも扱えることができるから。

本書の最後の方に書かれていましたが、横石さんは「みんなが働ける社会をつくりたい」という思いを持っています。単に、葉っぱが売れそうとか一儲けしたいという動機ではなく、社会を豊かにするというビジョンがあったのが印象的でした。本書はリーダーシップという視点でも読むとおもしろくて、リーダーとは未来のあるべき姿を実現するため、ビジョンを語り、まわりの人を導いていく。そして実現する。これこそ本物のリーダーだと思いました。

2.マーケティング:強みを活かして差異化し価値を届ける

本書の面白い点は、マーケティングの視点で読んでもなかなか興味深い事例だということ。葉っぱビジネスはゼロからのスタートだったので前例や参考となるものはなく、自分たちで試行錯誤するしかありませんでした。「葉っぱが売れる」という確信があっても、当初はさっぱり売れなかった。なぜか。横石さんは葉っぱが実際に料亭でどう使われるかを知らないことに気づきます。

横石さんのすごいところは現場主義を徹底されていることだと思いました。妻物の使用シーンを自分が知らないと思うと、勉強するために料亭に2年以上も自腹で通ったそうです。そこで葉や花がどう使われているか、季節ごとの違い、どういう葉っぱだと料理人やお店に喜ばれるのか。自分たちが売ろうとしている葉っぱの「価値」を直接現場に足を運び、学び続けたのです。

現場を見て歩いたことで、横石さんはあることに気づきます。それは、妻物の葉は山に生えている自然のままが必ずしもいいわけではないこと。葉にしみや虫食い穴が少しでもあると、妻物としては使えない。妻物はあくまで料理を引き立てるので、器や料理とのバランスがあり、それぞれ適切な色合いや大きさ、季節感というタイミングもある。だから季節を少し早めて葉っぱを取れるような栽培をしたり、料理人が使いやすいように大・中・小とサイズを分けてきっちりとそろえてパッケージしたりなど、現場での知識や経験から少しずつ葉を価値化していきます。

ここに、おばあちゃんたち農家の知恵と技術が活きました。実際の季節よりも先に花をほころばせるとか、狙った時期に小ぶりな葉っぱを採取するなどのノウハウを持っていたのです。おばあちゃんたちの根気強さ、丁寧さ、仕事への意欲もまた、上勝町の葉っぱビジネスに大きく貢献します。

戦略の本質は、強みを活かして差異化することだと思っています。「強みを活かす」と「差異化する」の2つが両方満たさせることがポイントだと思っていて、例えば差別化できたとしても、そこに自分たちの強みに基づいていないと、すぐに競合に真似されたりと中長期で継続的に勝ち続けることが難しくなる。強みを活かして差別化し、お客さんに価値・ベネフィットを実感してもらう。時代が変わろうともこのマーケティングの考え方は変わらないと理解しています。

横石さんや上勝町の人たちの努力によって、葉っぱビジネスは拡大していきました。マスコミにも取り上げられるようになり、今では人口が2000人ほどの町に年間にその2倍もの人が視察に訪れるような町になりました。株式会社いろどりという会社ができました。「葉っぱが売れたら、逆立ちして歩いたるわ」とまで言われた葉っぱがそれだけの価値を生んだのです。

3.当事者意識が人々と町を変える

本書を読むと葉っぱビジネスを通じて、上勝町の人たち、そして町自体が変わっていったことがよくわかります。雨の日は朝から役場に集まり酒を飲むだけだった人たち、近所の悪口をしゃべってばかりだった人たちも、「彩(いろどり)」という自分たちの葉っぱビジネスを担うことでそんな暇がなくなりました。

何よりも「住民みんなが町のことを自分たちの問題として考えられるようなった」といいます。見聞きしたことを自分ごと化できていて、自分の商品のことだけではなく、葉っぱ事業全体のこととして捉えているそうです。「彩」という自分たちの葉っぱブランドを守るためのごみゼロ運動、そして自分の住んでいる町のことを誇りに思っている。誇りに思っているから町を環境を守ろうとするし、葉っぱビジネスにもやりがいを感じる。こうした当事者意識は素晴らしいの一言だと感じました。

あるおばあちゃんが横石さんにこんなことを言ったそうです。「世界中探したって、こんな楽しい仕事はないでよ」。葉っぱを売るという生きがいがあり、自分の取った葉っぱがお店でどう使われているかという自分がやっていることの価値を実感している。女の人もお年寄りもみんなが働いている社会。「ここに生まれて、本当によかった」と笑顔で言うおばあちゃん。自分が住んでいる町を誇りに思っている。実現されたのは横石さんのビジョンそのままです。


※参考情報
株式会社いろどり


そうだ、葉っぱを売ろう! 過疎の町、どん底からの再生
横石 知二
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