2012/06/26

わずか3問:NBA ファイナルで見た秀逸な質問力


マイアミヒートのレブロン・ジェームス。引用:LeBron James - 2012 - NBA Finals MVPs|SI.com (2017年8月追記:リンク先が削除されていたので、こちらも削除しました)


NBA は、世界最高峰のバスケットボールを魅せてくれます。


マイアミヒートが6年ぶり2度目の優勝


2011-12年の今シーズンは、マイアミヒートの6年ぶり2度目の優勝で幕を閉じました。

NBA は普段から見ています。今年のプレイオフはカンファレンスファイナル (東西リーグ優勝決定戦) とファイナルは全試合を見ました。

マイアミヒートは 「3 Kings」 と呼ばれる、レブロン・ジェームス、ウェイド、ボッシュという3人のスーパースターを擁す強豪チームです。

昨年はファイナルで惜しくも敗れました。今年のファイナルは初戦で西リーグチャンピオンのオクラホマシティサンダーに負けたものの、その後は破竹の4連勝でした。事前の予想に反して、対戦成績は4勝1敗の圧勝でした。


興味深かった MVP レブロンへのインタビュー


ヒートの優勝が決まった第5戦の試合終了後、大歓声を送る地元ファンの前で優勝セレモニーに移りました。チームに優勝トロフィーが授与され、その後にファイナルの最優秀選手 (MVP) を受賞したのは、3キングスの1人であるレブロンでした。

MVP トロフィーを受け取った後、檀上でそのままレブロンへのインタビューが始まりました。

インタビュアーからの質問とレブロン受け答えが、興味深い内容でした。レブロンへの質問が秀逸だったのです。

日本だと、試合直後に活躍した選手に来てもらい、「放送席、放送席。それでは ○○ 選手へのインタビューです」 と続く質問とその返答は、ありきたりな内容がほとんどです。

もちろん正面から答える選手もいれば、誠実に対応する選手、考えて自分の言葉で話す選手もいます。しかし、思うのは、そもそもインタビューの質問に工夫が感じられない点です。

一方、レブロンへのインタビューは違いました。

インタビューの様子は、こちらの YouTube の動画で見られます。実際の試合直後の MVP 授賞式です。インタビューは1分10秒から始まります。


LeBron James, The 2012 NBA Finals MVP - Trophy Presentation!|YouTube


インタビュー内容


以下、レブロンへのインタビューの抄訳です。


インタビュアー (I) :MVP に相応しい大活躍でした。試合終了の瞬間の気持ちは?
レブロン (L) :やっとこの時が来たという思いでした。


I: (優勝を逃した) 昨年のファイナルの後はいろいろな批判がありました。その中で一番気になった批判は何でしたか?

L:自分勝手だという批判です。それだけが心に引っ掛かりました。優れたチームプレイヤーになるために自分は何でもやってきた。しかし、その一方で、その批判をモチベーションとして優勝に貢献できた。本当にうれしいです。


I:昨年は、「自分を証明しようとしすぎた」 と言っていました。それを今年はどのように気持ちをきり変え、どう対応したのですか?

L:基本に戻りました。全てを捧げ貢献するという気持ちです。2シーズン前までは試合に集中し、自分を証明するという気持ちはありませんでした。しかし、昨年は自分らしくなくつらい気持ちを抱えながらのプレーでした。そして今年はバスケットボールを愛し、情熱を持ち、自分の基本に立ち返りました。


I:試合終了時、ベンチで大喜びしていましたね。どのような気持ちでしたか?

L:人生で一番幸せです。チームメイトやファンとこの瞬間を分かち合いたいと思います。皆さん、応援ありがとうございます。夢が叶いました。


インタビューの質問は4問で、時間にして2分超でした。

優勝を決めた直後という状況で深い会話でした。印象的だったのが2問目の質問でした。

自身初の優勝を決め、ファイナル MVP という気分が最高潮の時、昨シーズン終了後に浴びせられたレブロン自身への批判についての質問でした。「あなたは数多くの批判を受けましたが、その中で最もつらかったものは?」と尋ねています。

質問にレブロンは誠実に答えています。自分勝手なプレーと言われたこと。自分はチームプレイヤーとしてあらゆることをやってきたこと。批判に向き合い乗り越えたからこそ、優勝につながったこと。

続く3問目もおもしろいやりとりです。

昨年にレブロンが 「自分を証明しようとしすぎた」 と言っていたことを引用し、それをどう変えたのかを聞き出す質問でした。

レブロンの答えは 「自分の原点に戻る」 というシンプルなものでしたが、一昨年・昨年・今年と比較しながらのわかりやすい回答になっています。


レブロンへのインタビュー背景


レブロンとこのインタビューの背景を解説します。

レブロンという選手は、NBA の中でも超がつくほど一流選手です。高校の頃からマイケル・ジョーダンの再来と言われていした。

これまでの経歴は輝かしい実績です。03-04年シーズンに新人王、オールスター MVP を2回、シーズン MVP を3回、そして今回のファイナル MVP と悲願だったチャンピオンズリングの獲得です。

NBA キャリアのスタートは、地元チームのクリーブランドキャバリアーズに入団しました。順調に活躍を見せますが、昨シーズン (2010-11年) の開幕前に、今のチームであるマイアミヒートに移籍しました。

移籍を巡っての経緯がネガティブに報道されたこともあり、ファンには良いイメージで受け取られませんでした。移籍後のレブロンはヒール (悪者) 扱いされることも少なくありませんでした。

マイアミヒートでもチームのエースとなり、エースであるが故に、昨シーズンのファイナルでヒート敗れたことにレブロンが批判を浴びました。

以上が、インタビューでの2問目の 「あなたは数多くの批判を受けましたが、その中で最もつらかったものは?」 と、3問目の 「 (ヒートに移籍した) 昨年は『自分を証明しようとしすぎた』と言っていたが今年はどう変わったか?」 の背景です。


レブロンへのインタビューに学ぶ 「具体的 & 本質的」 な質問力


質問から何を聞くかで、その後の会話は違ってきます。良い質問が投げかけると、相手の経験や考えが引き出されます。

良い質問とは、具体的かつ核心をついたものです。核心をつくとは、本質的な質問、あるいは相手が話したいと思っていることに触れる、かつ自分が聞きたいことです。

もう1つの条件である具体的に聞くことは、もし抽象的な質問だとえてして話の流れが発散してしまいます。

例えば、レブロンへのインタビューで 「あなたにとってバスケットとは何ですか?」 という質問だったらどうなっていたでしょうか。

聞く内容は本質的なのですが、抽象的すぎます。抽象的な質問で聞き、受け答えがされるとお互いに話していることのレベルが合わなくなります。

今回ご紹介したレブロンへのインタビューでは、4問のうち2問目と3問目が具体的かつ本質的な質問でした。

インタビュアーの質問の意図は、レブロンのこの1年間での成長についてコメントを促すことでした。何に苦しみ、どう乗り越え、自分はどう変わったかです。

たった2問の質問で引き出しました。もっと言えば、優勝後の落ち着いた記者会見や、雑誌の取材、テレビ等の出演時でのインタビューではなく、優勝直後の MVP 受賞場面で行なわれたのです。

レブロンへの MVP インタビューで学べることは、質問では本質的なことを具体的に問うことです。

例えば、複数の中から最も印象の強いことを1つ聞くこと、過去と現在の比較からどう成長したのか、何が自分を変えたのかを深掘りする、過去のその人の発言を引用して質問をすることです。


最後に


今年2012年の NBA ファイナルは、対戦内容だけを見るとヒートの強さと、対戦チームであるサンダーの若さゆえの精神的な弱さが目立ちました。

もう少し拮抗するかと思っており。少なくとも4勝1敗で決着するとは私は予想してませんでした。もう少しファイナルの試合を楽しみたかったです。


※ 参考情報

LeBron plays just well enough to lead Heat to NBA Championship|Scrape TV (2017年8月追記:リンク先が削除されていたので、こちらも削除しました)
NBA final: LeBron James leads Miami Heat to title over Oklahoma City Thunder|thestar.com
NBA = ファイナル MVP のジェームズ、「最高の気分」 |Reuters
ヒートが制覇!“キング・ジェイムズ”が開いた新たな扉 = NBA ファイナル|スポーツナビ (2017年8月追記:リンク先が削除されていたので、こちらも削除しました)
LeBron James - 2012 - NBA Finals MVPs|SI.com (2017年8月追記:リンク先が削除されていたので、こちらも削除しました)
LeBron James, The 2012 NBA Finals MVP - Trophy Presentation!|YouTube

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多田 翼 (書いた人)


外資系 IT 会社にてマーケティングリサーチ マネージャー (LinkedIn) 。

1981年 (昭和56年) 生まれ。名古屋出身。学生時代は京都。家族4人で東京23区内に在住、2人の子どもの父親。気分転換は毎朝 8km のランニングとピアノ。

書いている内容は、所属組織や会社の正式見解ではなく個人の見解です。