2013/05/12

YouTube有料チャンネルを開始したGoogleの狙いをビジネスモデルから考えてみる

YouTubeが月額課金制でチャンネルを開設できる新サービスを開始しました(米国時間5月9日)。

まずはパイロットプログラムとしてのスタート。チャンネルを購読(サブスクリプション)するユーザーから課金できるもので、最低料金は月額99セントから。全てのチャンネルに14日間の無料トライアル期間がつけられ、年間契約でディスカウントもされるとのこと。

今回のYouTube有料チャンネルが、Googleのビジネスモデルにどう影響するかを考えてみます。(なお、考察内容はあくまで個人的なもので実際の話はグーグル先生に聞いてみないとわかりません)。

■Googleのビジネスモデル

Googleはいろんな取り組みをしていますが、こと収益に関してはほぼ広告から得ていると考えていいくらいです。

広告のビジネスモデルについて、Googleは大きく3つの顧客を持っています。①Googleユーザー、②広告主、③コンテンツ製作者。①Googleユーザーとは検索などのGoogleサービスを使う一般ユーザーのことです。この3つの顧客にGoogleは何を提供しているかと言うと、
  • Googleユーザーへの提供価値:検索サービスや、Gmail、Google Map、等々の便利なサービスを提供。無料で使える
  • 広告主への提供価値:AdWordsのテキスト表示形式だけではなく、バナー広告やYouTubeでの動画広告などディスプレイ広告を、自分たちのことを知ってほしいターゲットに対して表示できる価値。広告配信・レポーティング等のPDCAがGoogleサービスを使ってまわせる
  • コンテンツ製作者への提供価値:コンテンツの収益化に寄与。自分のサイトやブログにAdSenseを導入することで広告を表示し、クリックという成果に連動してGoogleからお金が支払われる

ビジネスモデルを考える時にカギになるのがお金の流れで、誰から誰にお金が渡り、何に対して支払われるのか。Googleのビジネスモデルの特徴としては、3つの顧客に対して、お金をもらう顧客ともらわない顧客を明確に分けている点です。
  • 広告主からはお金をもらう
  • Googleユーザーへは無料でサービスを提供
  • コンテンツ製作者へはお金を支払う(広告主からの収入の一部を渡す)
まとめると、Googleは広告主からの収益があるから、Googleや検索サービスなどをユーザーに無料に提供でき、コンテンツ製作者にはお金を支払うことができるのです。

Googleユーザーが増えるほど、広告媒体としてのGoogleの価値は上がります。広告主やコンテンツ製作者にはそれがGoogleへの魅力を高める。好循環がグーグルのビジネスモデルの特徴です。3つの顧客は上記の提供価値を享受でき、結果、Win-Winが成り立っている。これがGoogleのプラットフォームとしての強みです。

■YouTube有料チャンネルでGoogleが目指すこと

YouTubeの有料チャンネルは、ユーザーから月額で課金し、収益をコンテンツ提供者とGoogleで分け合います。Googleはこれまでは広告主からお金を得ていたのが、YouTubeユーザーから直接お金をもらうことになり、上で書いたビジネスモデルとは異なります。

ただ、Googleが有料チャンネルで本当にやりたいことは、単にユーザーから収益を上げることではないと思っています。YouTubeユーザーからの収益は副産物であって、狙いはYouTube自体の価値の向上だと私は考えています。

月額の有料チャンネルの仕組みは、コンテンツプロバイダー(提供者)にとっては毎月の収益が確保できるので魅力です。これまでは広告掲載からお金を得ていたのが、購買登録ユーザーから収益を得られる。登録者数が増えるほど売上も上がり、良質なコンテンツをつくるインセンティブになります。

YouTubeにとってはコンテンツが増え、かつ質のいいもの(ユーザーが有料でも見たい動画)が集まります。結果、YouTubeの動画サイトとしての価値が上がる。

有料チャンネルのサービスを開始しても、広告モデルはYouTubeの収益の柱に変わりはなさそうなので、動画サイトとしての価値が上がることは、YouTubeの広告媒体としての価値向上にもつながります。広告媒体として価値が上がるというのは、広告を掲載したいという広告主が増え、広告掲載費用も上がり、この2つの分がダブルでGoogleへの収益に貢献する。これが、有料チャンネルのグーグルの狙いだと思います。

★  ★  ★

YouTubeの有料チャンネルがうまくいくかは、どれだけ良質なコンテンツを用意できるかです。ユーザーにとって、毎月お金を払っても見たいと思う動画があるかどうかに尽きます。

今回のGoogleからの発表ではパイロットプログラムとのことですが、問題なければ正式サービスとして広げるはず。日本のコンテンツも有料チャンネルに入ってきます。

アメリカはケーブルTVが主流で、テレビにお金を払って視聴する文化があるものの、日本は民放はCMが番組の合間に流れるという広告モデル。視聴者の感覚はTVは無料で見られる娯楽。そもそものYouTubeのイメージは無料で見られる動画サイト。日本でYouTubeの有料チャンネルがどれだけ受け入れられるか。注目しておきたい流れです。


※参考情報
New ways to support great content on YouTube|The Official YouTube Blog
YouTube有料チャンネル一覧
YouTube、課金制の有料チャンネルを試験的にスタート 月額1ドルから|ITmediaニュース
YouTubeが有料チャンネルを開始 放送・レンタルビジネスが激動するかも|SNN


最新エントリー

多田 翼 (書いた人)