2013/09/16

書評:意思決定のための「分析の技術」

意思決定のための「分析の技術」―最大の経営成果をあげる問題発見・解決の思考法という本がおもしろかったのでご紹介。

著者は元マッキンゼーの後正武氏、分析技術の理論と具体例を体系的に説明した一冊です。初版は1998年。その間、ビジネスや分析環境は大きく変わっていますが、内容に全く古さは感じず本質的なものでした。

本書では、分析とは「物事の実態・本質を正しく理解するための作業」の総称としています。

そして「何のために分析をするのか」。それは「正しい認識・判断」により「正しい対応」をするため。分析の目的を、正しい対応をするという次のアクションを明確にする姿勢を強調しています。

本書では分析の基本は4つあるといいます。

  • 大きさを考える
  • 分けて考える
  • 比較して考える
  • 時系列を考える

1. 大きさを考える

分析の最初のステップでは、これから分析する対象がどの程度の大きさなのかをまず把握すべきと言います。大きさを捉えることで全体での意味合いをつかみます。

分析ロジックの緻密さ等を論ずる前に、全体として大きさの程度・施策の利きの程度をおおまかに把握する。そして、大きさにより重要度を判別し、優先順位に従って、あるいは大きいものだけ着手する、という考え方です。

「大きさを考える」とは別の表現をすれば「全体像を把握する」ことでもあると理解しました。分析をする際には全体を頭の隅にでも置いておかないと、ついつい小さいところに入り込んでしまいます。木の幹ではなく枝葉ばかりに目がいってしまい、ふと気づくと全体にあまり影響しないことに注力してしまった、なんてケースです。

まず大きさを考えることで全体像を理解し、その中でどの部分が重要なのかを判断する。スルーしないようにしたい分析の第一ステップです。

2. 分けて考える

分析の中にある「分」という字は、八(左右に分ける意味がある)と刀が組み合わさっています。1つのものを2つ以上に分け、別々にすることを表した字だそうです。

分析で必ず行なうのが、総体ではなく要素に分けてみること。分けることは分析の定石です。だからこそ、「何のために、どのように分けるのか」の工夫が分析という作業にはとても大事。

分けることに唯一の正解はなくて、あるとすれば、何のためにという目的があって初めて分解できるもの。その際に注意したいのが、単なる知的興味からの思いつきによる分解をしないこと。常に目的、つまり、何がわかれば意味のある結論を出せるのか、そのためにどういう分け方の工夫が必要なのかを考えることです。いくらきれいにMECEに分けられたとしても、その結果が有効な打ち手につながらなかったとしたら、それは「分け方がよくない」のです。

分けることは、分析の重要な手段であるがゆえに、分け方が正しいか否かによって、その後の作業に要するエネルギーと成果とに大きく影響します。

3. 比較して考える

何かと何かを比較することも分析では必ず行ないます。比較をする際にまず考えないといけないのは、「それは意味ある比較ができるか」。よくAppe to Appleと表現しますが、そもそも比較をしてよいものなのか、同じリンゴ同士を比較しようとしているかを考えます。

比較においても、何のために比べるのかの目的をクリアにする必要があります。比較をすれば何かしらの違いが出てきます。その差が分析において意味のある差なのかどうか。2つのリンゴを比べれば、大きさ/色/形/味などを対等な条件で比較でき、意味のある比較です。しかし、比較がリンゴとミカンであれば、そもそも比較条件の前提が違うので比べた結果からわかることに意味が無いのです。

比較をする際には、

  • できるだけ同じものを比較すること
  • 異なるものを比較するときは、意味がありかつ比較できる指標を探すこと
  • 似たもの同士を比較する場合も、同じ要素と異なる要素を正しく見分け、異なる部分の影響を勘案しつつ合理的な比較を心がける

何の目的で比較するかという明確な自覚を持つこと。差異を全体としての漠然と見るのではなく、要素に分けて比較し検討するという姿勢が求められます。

4. 変化/時系列を考える

比較の指標としてよく用いられるものに、前年比や前月比があります。これは過去と現在を比較することでどう変化しているかを理解しようとするものです。時系列分析の目的は、今の姿を過去という歴史に照らして把握し、将来に備えること。分析で明らかになるのは現在と過去の違いですが、そこから未来はどうなるのかを考えるかです。

時系列分析のポイントとして本書にかかれていたのは、これまでの傾向/全体の流れを追いつつも、そこにどのような変化が起こりつつあるかを敏感に読み取る工夫/努力をすること。絶対量と変化に注目する、変化の意味を考える・要因を説明する習慣をつけておくことが大切。

★  ★  ★

本書には分析の理論とともに、多くの事例が書かれています。具体例は筆者がコンサルティングで扱ったケースを基にしているので、コンサルの分析手法が学べるのも本書の特徴です。

一読で終わらすにはもったいないと思った本でした。


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