2015/03/10

三越伊勢丹の「店頭販売員の行動データ」分析がおもしろい

三越伊勢丹ホールディングスと富士通で、協働で行なわれた取り組みが興味深かったのでご紹介します。2011年のものですが、店頭販売やサービス力をどう強化するかの事例です。

接客力を科学的に分析することで、お客様へのサービスの質を向上 (株式会社三越伊勢丹ホールディングス様)|富士通




■調査方法/結果が課題解決につながらない

背景としてあった問題意識がこちらです。
百貨店も商品力だけでは生き残れない時代。将来にわたって安定的な収益をあげていける構造に転換する必要があり、そのためには従業員一人ひとりが夢とほこりをもって働ける企業風土を醸成していかなければならない。接客販売力を強化することで、販売力を競争力に変えていく必要がある。

では、どうやって接客販売力を強化するのか。三越伊勢丹ホールディングスの課題だったようです。

優秀な販売員の売上は、一般的な販売員の何倍にもなるとのこと。接客販売力は経験やノウハウなど個人の力量に依存しがちな能力だけに、その差がどこにあるのか解明することは非常に難しい現状でした。

優秀販売員のノウハウの体系化は幾度となく実施してきましたが、できることには限界があったとのこと。三越伊勢丹ホールディングスによれば、
どれくらい店頭に立っていたか、どのくらい接客していたかを目視で確認したり、アンケートを採って調査をしてみても、『ホスピタリティが大事』といった抽象的な結論は出るものの、定量的な調査・データ分析には時間や労力がかかるため、具体的な施策への『仕組み化』には至りませんでした。
課題は見えているものの、それを解決するはずの調査方法/結果が課題解決につながらない。故に、具体的なアクションにできないケースです。

■販売員の行動データ収集し「優秀な店員 vs 一般的な店員」を比較した調査

三越伊勢丹ホールディングスと富士通が行なったのは、店頭販売員の店頭での「行動データ」を収集し、優秀な店員と一般的な店員で比較分析をすることでした。

販売員の接客回数、接客時間、動線といった販売員の実行動データをスマートフォンを使って測定。データから見える化することで、たくさん売れる販売員と一般的な販売員の動きの特性の違いがわかったそうです。
  • 優秀な販売員:普通の店員に比べて動きは明らかに少なく、売り場を見わたせる位置でじっくり全体を見ている。「いける」と思った時に動き接客
  • 一般的な販売員:店内をまんべんなく動き回っているが、無駄な動きが目立つ。入ってきた顧客を見逃すことが多かった

接客力を科学的に分析することで、お客様へのサービスの質を向上 (株式会社三越伊勢丹ホールディングス様)|富士通


■調査から、課題解決となるアクションへ

この調査結果からの発見で興味深いと思ったのは、優秀な販売員と一般的な販売員の違いが、単に行動量の多さだけの違いで終わっていないことです。

なぜ、優秀な店員はあえて動かないのか。

動かずに売り場全体を常に見ているという、一歩踏み込んだ言及がされているのが、良い分析結果だと思いました。ここがポイントであり、課題解決となる具体的なアクションにつなげているからです。

単に行動データを集計しただけでは、得られた結論として「優秀な販売員は店内を動かない。だからあまり移動しないようにしよう」という課題解決策をミスリードする可能性もでてきてしまいます。

行動データを収集し、集計し分析/考察をした調査結果として、「売り場全体を観察する」「顧客が入ってきたことを見逃さない」ことがインサイトとして重要であり、店内を無駄に動かないのは、これらを実践したからにすぎないのです。

三越伊勢丹ホールディングスでは、優秀な販売員のノウハウを体系化するために、従来はアンケート調査をやったもの、抽象的な答えしか得られず、打ち手につながらない背景がありました。

アンケートという被験対象者への意識データではなく、行動データを非常にうまく活用し、問題解決を試みたおもしろい事例です。

行動データでファクトを見つける。(今回の事例ではやっていないかもしれませんが)行動データでわかったこと/仮説を、アンケート調査という意識データで補完する。

こうした行動データ+意識データの組み合わせは、色々と応用範囲がありそうです。


Related Posts Plugin for WordPress, Blogger...