投稿日 2015/03/01

Facebook のクロスメディア広告効果調査に、あえてツッコんでみる




Facebook Japan が、自社広告を含むクロスメディア広告効果調査を発表しました (2015年2月22日) 。

参考:花王エッセンシャルで Facebook 広告が驚きの効果! | Facebook for Business


花王のシャンプーブランド 「エッセンシャル」 が、2014年8月に行なったキャンペーンの広告効果調査とのことです。広告はフェイスブックを含む、TV / 店頭 POP / Web / 雑誌 / OOH に展開した大規模なキャンペーンだったようです。

上記の発表タイトルで 「Facebook 広告が驚きの効果」 とあるように、いくつか紹介されている結果自体は興味深いものでした。

一方で、Facebook からの発表のスタンスそのものに疑問点がありました。

上記のリンク先で調査結果が発表されていますが、ケースをまとめた4分ほどの動画と、「まとめ」 として5つが箇条書きであるのみです。

今回のエントリーでは、Facebook のクロスメディア調査発表について、あえて批判的な考察をしてみます。


調査手法が不明


そもそものところで疑問だったのは、広告効果を測った 「調査手法」 が開示されていないことです。

Facebook for Business の発表では、いくつかの結果が箇条書きされているだけです。詳しくはご覧くださいとあるケーススタディ動画でも、具体的な調査方法については全く触れられていません。

調査方法として言及されているのは、「世界的な調査機関であるミルウォードブラウン社のクロスメディア調査で、各媒体の効果を検証しました」 と言っている程度です(動画 0:32 から10秒程度)。

この手の検証やスタディは、どういう方法で実施したかが調査結果とともに大切な情報です。

調査手法が開示されれば、どういった前提による調査結果なのかがわかります。「誰に」 「どのような方法」 で調査したのかです。それにより、どんなバイアス可能性が考えられるか、その結果、調査結果を見る際に何に注意する必要があるのかを、読み手は考えることができます。

こうした情報がすっぽりと抜けている今回の Facebook の発表は、調査報告としての情報開示が不十分です。

もちろん、調査方法自体がノウハウ (資産) でもある調査会社からすると、調査方法を100%オープンにすることは難しい一面もあるでしょう。それでも、一定範囲の情報は明らかにすべきです。

調査を行なったのがミルウォードブラウンで、また、調査結果から得られた数字からおおよその査方法は予想できますが、調査手法情報なき調査結果は、本来は何も語っていないのと同じです。


ターゲット層や広告効果指標が不明確


調査結果の Facebook 広告効果として出ていた数字も、疑問点がいくつかありました。次の通りです。「」 内は Facebook が言及した内容です。


「全メディアの平均と比較して Facebook 広告が約7倍の費用対効果」

費用対効果が具体的に何を指しての効果なのかわからない。広告出稿コストに対する購入意向なのか、利用意向、ブランド認知、あるいは広告想起なのか。

比較は、Facebook vs 全メディア平均 (Facebook, テレビ, 店頭 POP, ウェブ, 雑誌, OOH の平均) ではなく、各メディアそれぞれとの比較結果を出すべき (全平均 vs FB vs TV vs … )


「Facebook 広告は少ない投資額でターゲットユーザーの態度変容を生み出した」 

1) ターゲットユーザーは誰なのか、2) 態度変容は具体的に何を指しているのか、がいずれも不明瞭


「全体のわずか 1.5% の投資額で、ターゲット層の 20% にリーチ」 

ターゲット層がわからないので、20% の分母が不明。特にターゲット層が Facebook ユーザーに絞っているのかどうか重要な点だが、わからない


「新商品のトライアル促進には、Facebook 広告と店頭 POP の組み合わせが最も効果的」 

効果の数字を 19% と出しているが、この 19% が何を指した数字なのかが不明。Facebook と店頭 POP の両方を見た人の 19% が使ってみたいと答えたのか。

そもそも、何をもって 「最も効果が高い」 と言っているのかも不明確。


花王と協力した調査であり、動画内に登場する花王関係者のコメントを聞く限りは、調査結果からフェイスブック広告が効果的であったことが見て取れます。調査自体はしかるべき方法で実施されたのでしょう。

しかし、Facebook からの調査結果発表のスタンスや中身が情報として十分ではなく、読み手としては解釈しづらい内容でした。


最後に


Web 広告効果調査をすると、その広告の対象商品やブランド・広告クリエイティブ・キャンペーンプランによっては、効果が出ないケースもあります。

花王エッセンシャルのキャンペーンでは、Facebook 広告の効果がはっきりと出たようです。だからこそ、誰にどんな方法で聞いた調査だったのか (調査方法) 、何を持って効果があったと言えたのか (ターゲット層と広告効果指標) が知りたかったです。

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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。