2016/06/11

スーパーリサーチャーから学ぶマーケティングリサーチの課題設定




マーケティングリサーチ会社のインテージが、自社サイトでマーケティングリサーチの基本をまんがで紹介しています。

こっそり知りたいマーケティングリサーチのツボ!|インテージ

マーケティングリサーチの素朴な疑問や落とし穴、あるいは最新トレンドをまんがでわかりやすく学べることを狙ったコンテンツです。

第一話は「売上減 = ユーザー離れ?? ~ 『仮説と事実』の落とし穴 ~ 」です。

マーケティングリサーチをやる上で、とても大切なことが書かれていましたのでご紹介します。第一話のテーマは「マーケティングリサーチの課題設定」でした。

■ マンガのストーリー

まんがは、2人の登場人物がいます。

リサーチ企画1部に配属して2年目になる若手の「てーじ君」、数々の顧客課題を解決してきたスーパーリサーチャーの「高山せんせい」です。

第一話のストーリーは、てーじ君がクライアントから自社商品のお菓子「パンダグミ」の売上が減っている状況を伝えられ、リサーチを提案してほしいという相談を受けます。

クライアントが考える調査課題は、ユーザーの脱落が増えている理由と、ユーザーの不満を知ることでした。

てーじ君は、いい企画をつくろうと意気込むものの、どう手をつけていいかわかりません。高山せんせいに相談したところ、調査設計を考えるにあたっての基本情報を持っていないことを、てーじ君は指摘されます。

  • クライアントが言っていた「ユーザーの脱落が増えていて売上が減少している」を、そのまま事実と受け止めた (事実と仮説の混同)
  • 調査課題は聞いたが、その背後にあるマーケティング課題と、それを解決するためにクライアントが持っている仮説を聞いていなかった (調査結果をどう活用したいかが不明)

高山せんせいに怒られてしまったてーじ君は、1つ目の確認を自社パネルデータから、2つ目を急いでクライアントに確認しました。

1つ目についてわかったのは、売上減少の原因は、既存ユーザーの脱落ではなく新規ユーザーが減っていることでした (これが手元でわかるのはてーじ君の会社の資産です) 。

2つ目の調査の背景情報は、売上回復のために商品の大型リニューアルを考えていることでした。リニューアルの意思決定の参考情報として調査を実施したいというのが、クライアントの意図です。

■ マーケティングとマーケティングリサーチには一貫性があるか

マーケティングリサーチを企画するためには、「マーケティング」と「マーケティングリサーチ」の関係を理解する必要があります。この整理はとても重要です。

自社商品やサービスのビジネスをする上で、マーケティングの目的があります。今回のまんがの例で言えば、マーケティング目的はパンダグミの大型リニューアルをし、売上回復 (増加) をすることです。

ただし、マーケティング目的を達成するために、まだ自信を持って実行できる状態ではありません。リニューアルをしても、成功するかはわからないとクライアントは考えています。

大型リニューアルの方向性や戦略を決めるにあたっての情報が足りないからです。つまり、リニューアルによる売上増加というマーケティング目的には「マーケティング課題」があるということです。

まんがのストーリーでのマーケティング課題は、大型リニューアルは新規ユーザー取り込みが重要なので、新規ターゲットのニーズを理解することです。

このマーケティング課題を解決することが「リサーチ目的」です。リニューアルの戦略をつくり意思決定するための示唆を提示することがリサーチに求められます。

ここまでを整理すると、

  • マーケティング目的:大型リニューアルで売上減少を増加に転じたい
  • マーケティング課題:大型リニューアルの戦略を決める必要情報が不足。具体的には、リニューアルで狙う新規ユーザーのニーズが不明
  • リサーチ目的:新規ユーザーを取り込むためにニーズを調査をし、マーケティング課題解決の一助とする

マーケティングとマーケティングリサーチの関係で大切なのは、マーケティング課題とリサーチ目的の一貫性です。リサーチの目的が、マーケティング課題を解決することにつながるかどうかです。

■ リサーチ課題への答えは、マーケティング課題解決のために示唆を与えるものか

リサーチ目的を達成するために設定するのが「リサーチ課題」です。

リサーチ課題は、どういう視点で調査し分析をするかの論点です。マーケティング課題を解決するために、リサーチ課題に答えを出します。

まんがの例で言えば、リサーチ目的「新規ユーザーのニーズを理解し、リニューアル戦略の意思決定に貢献する」に対して、以下のようなリサーチ課題が考えられます。

  • 新規ターゲットユーザーはどういう人たちなのか?
    • お菓子に求める価値 (どのようなうれしいことを期待してグミなどのお菓子を買うのか)
    • 普段の買いものはどこで、いつ、何を、どれくらい買っているのか
    • 生活状況などのライフスタイル、接触メディア (情報媒体)
  • 新規ユーザーから見た競合は何か?グミを買う際に、頭に浮かぶであろう他の選択肢は何か (直接の競合であるグミ以外のお菓子も含めて) ?
  • 新規ターゲットは何人くらいのボリュームなのか?
  • そのボリュームのうち、どの程度の人が買ってくれそうか (既存売上に増加の影響を与えるほどの規模はいるか) ?
  • 新規ユーザーのバンダグミへの認知、興味、商品特徴理解はそれぞれどのくらいか?どこにボトルネックがあるか?

これらの論点に、調査から1つ1つ答えや示唆を出します。リサーチ目的でありマーケティング課題を解決するために、大型リニューアルの意思決定に役に立つ情報を提供するのです。

リサーチを基点に考えれば、以下の流れです。

  • リサーチ課題に答えを出す
  • リサーチ目的を達成する = マーケティング課題を解決する
  • マーケティング目的を達成する

■ クライアントに言われたことを鵜呑みにしない

第一話のまんがに書かれていたもう1つ重要なことは、クライアントの言うことを鵜呑みにしない姿勢です。

まんがでは、てーじ君はクライアントから「パンダグミの売上が落ちてきており、ユーザーが脱落している」と説明を受けます。既存ユーザーが買わなくなったことを事実として前提にし、そこから調査企画を考えようとしました。

しかし、高山せんせいから本当にそうなのかと問われ、データで確認すると事実は異なることがわかりました。既存ユーザーは減っていなく、新規ユーザーが減少していたのです。パンダグミを新しく買う人 (競合グミからのスイッチ) 、グミ自体を今ままで買っていなかった人の両方です。

「クライアントの言うことを鵜呑みにしない」について、誤解のないように書くと、クライアントの説明から得られる情報は貴重です。話を聞くなということではありません。

大切なのは、クライアントの言うことをそのまま全てが正しいと受け取るのではなく、健全な批判精神を持つことです。例えば、高山せんせいが指摘するように、事実と仮説の混同をしないことです。

これはまんがには書かれていませんが、正しい批判精神はリサーチ結果を分析するときにも重要な姿勢です。

データや調査からの情報を読み込む際に、結果をファクトとして見る一方で、これは本当に正しいのかというスタンスも同時に持っておくべきです。

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まんがに登場する高山せんせいのモデルになった人物は、知っている方です。以前のエントリーに、高山せんせいから教えられたことを書いています。

新人研修で学んだ「事前準備」の大切さ


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