2010/04/04

書籍 「知的生産の技術」

最近読んだ書籍の中で、非常に感銘を受けた本があります。「知的生産の技術」(梅棹忠夫著 岩波出版)。なぜ印象的だったのか、その理由は次の2点に整理できます。

  1. 情報について本質的な内容が記述されている
  2. 初版が40年以上も前の1969年である。これは、情報の本質は現在においても陳腐化していないことを示唆している


■「知的生産」の定義

この本の中身に入る前に、まずは書籍の題名にもなっている「知的生産」の定義に触れておく必要があります。著者の言葉をそのまま引用すると、知的生産とは「頭をはたらかせて、なにかあたらしいことがら-情報-を、ひとにわかるかたちで提出することなのだ、くらいにかんがえておけばよいだろう。」(p.9より引用)と説明されています。

あえて超ざっくりと表現すると、情報処理・解釈と言えるかもしれません。自分自身の解釈としては、「様々な一次情報・二次情報を人間が処理・意味付けをし、新たな付加価値(新しい情報)をつくり出すこと」と認識しています。

■書籍内容の構成

さて、本書の構成ですが、大きく2つに分けることができます。前半部分(1章~5章)では、手帳、ノート、カード、ファイルなど、知的生産における各種ツールについて取り上げています。後半(6章~11章)は、主に「読み書き」について、つまり、知的生産におけるインプットとアウトプットについて触れています。

情報を扱うための各ツールについては、書かれていることをそのまま実行するよりも、IT技術によりもたらされている現在のツールに置き換えたほうがいいと思います。例えば、インターネットがまさにそうであり、携帯電話、PC、メール、ブログ、SNS、ツイッターなどのミニブログなど、まだまだ他にも多数存在します。しかし、ここであらためて考えたいのは、単にこの本にかかれている情報ツールが今の時代に合わないなどと表面的な話ではなく、ベースとなっている情報の考え方についてです。

■情報の本質

では、ベースとなっている情報についての考え方とは何か。これがまさに冒頭で述べた「感銘を受けた」ことであり、個人的に「情報における本質」だと思っているものです。著者は次のように述べています。
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ひとびとは、情報をえて、整理し、かんがえ、結論をだし、他の個人にそれを伝達し、行動する。それは、程度の差こそあれ、みんながやらなければならないことだ。(p.12より引用)
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自分の中での解釈としては、情報は「目的」ではなくインサイトや意思決定、または次の行動への「手段」であると考えています。例えば、同じ情報でも、どういう問題意識からその情報に接し、意味付けをし体系立てるか、そしてそこから得られるもの、ひいては次の行動に大きく影響すると思います。これは、情報収集や分析を単に「目的」と位置づけていただけでは、到達できないことではないでしょうか。

もう一つ、印象的だった内容は、情報整理についての考え方です。著者の主張をそのまま引用すると、以下のような考え方です。
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ものごとがよく整理されているとうは、みた目にはともかく、必要なものが必要なときにすぐとりだせるようになっている、ということだとおもう。(p.81より引用)
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これも、情報整理を目的ではなく、手段と捉えている考え方だと思います。著者は、見た目が単に良い状態である「整頓」ではなく、必要な際にすぐ取り出せる「整理」をするべきであると説きます。

■情報整理の方法

情報整理をどのように行えば必要な時にすぐに取り出せるようになるのでしょうか。何かてっとり早く整理できる方法がないものかと、つい思ってしまうかもしれません。これについての自分の答えは、「ない」と考えています。正確に言うと、誰にも使える唯一絶対的な方法はない、というものです。情報整理については、人それぞれで百人いればそれこそ百通りの方法が存在するものであるというのが個人的意見だからです。

さらに言うと、人それぞれということに加え、時代ごとにその方法も常に変わるものではないでしょうか。例えば、今でこそ日本人のほぼ1人に1台が持っている携帯電話も、ほんの10~15年くらい前は、持っている人のほうが少ないという状況でした。もう少し時代を戻すと、インターネットがない時代も確かにあったのです。従って、携帯やネットがない時とある時では、情報整理の方法も全く違うのです。

ちなみに、著者の主張も同様です。
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くりかえしていうが、今日は情報の時代である。社会としても、この情報の洪水にどう対処するかということについて、さまざまな対策がかんがえられつつある。個人としても、どのようなことが必要なのか、時代とともにくりかえし検討してみることが必要であろう。(p.15より引用)
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情報整理の追及は、おそらく一生続く課題になると思っています。一生かかっても未完のままである可能性すらあります。これからも、上記で考えた、
・情報は目的ではなく手段
・整理の目的は、必要なものが必要な時ににすぐ取り出せるようになっていること
については見失わないようにしたいものです。

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多田 翼 (書いた人)


外資系 IT 会社にて 「シニア マーケティングリサーチ マネージャー」 (LinkedIn) 。

1981年 (昭和56年) 生まれ。名古屋出身。学生時代は京都。家族4人で東京23区内に在住、2人の子どもの父親。気分転換は毎朝1時間のランニング。

書いている内容は、所属組織や会社の正式見解ではなく個人の見解です。