2010/08/15

梅棹忠夫とドラッカーから考える情報革命のこれから

今回のエントリー記事では、梅棹忠夫、ドラッカーのそれぞれの著書から情報革命にいたる歴史を大きな流れで整理し、あらためて情報革命について考えてみます。


■人類の産業の展開史 (梅棹忠夫)

梅棹忠夫の著書「情報の文明学」(中公文庫)によると、人類の産業の展開史は次の三段階を経たとしています。(1)農業の時代、(2)工業の時代、(3)精神産業の時代(以下、情報産業とします)。「情報の文明学」がおもしろいのはここからさらに進めて、この3つの時代の生物学的意味を考察している点です。ここで言う生物学的意味というのは、受精卵が発生から自らが展開していく過程のことで、具体的には人間の体が形成されるまでの、内胚葉、中胚葉、外胚葉の3つの胚葉です。以下、本書から抜粋してみます。

(1)農業の時代
生産されるのは食糧であり、この時代は人間は食べることに追われている。農業の時代を人間の機能に置き換えれば、内胚葉からできる消化器官系統の時代であり、三分類で言えば内胚葉産業の時代である。(p.133)

(2)工業の時代
工業の時代の特徴は生活物資とエネルギーの生産。人間の手足の労働を代行し、これは筋肉を中心とする中胚葉諸器官の機能充足の時代を意味する。よって、工業の時代とは中胚葉産業の時代である。(p.133)

(3)情報産業の時代
外肺葉系の諸器官は皮膚や脳神経系、感覚諸器官を生み出す。情報は感覚、脳神経に作用し、情報産業の時代は外肺葉産業の時代である。(p133-134)

以上について著者の梅棹忠夫は、食べることから筋肉の時代へ、そして精神の時代へと産業の主流が動いてきたとし、三段階を経て展開する人類の産業史は、「生命体としての人間の自己実現の過程」とも捉えることができると総括しています。(p.134)


■産業革命とIT革命 (ドラッカー)

次はドラッカーです。ドラッカーは著書「ネクスト・ソサエティ」で産業革命とIT革命について比較し、次のような内容を書いています。

(2)産業革命
産業革命が、実際に最初の50年間にしたことは産業革命以前からあった製品の生産の機械化だけだった。鉄道こそ、産業革命を真の革命にするものだった。経済を変えただけでなく、心理的な地理概念を変えた。(p.75-76)

(3)IT革命
今日までのところ、IT革命が行なったことは、昔からあった諸々のプロセスをルーティン化しただけだった。情報自体にはいささかの変化ももたらしていない。IT革命におけるeコマースの位置は、産業革命における鉄道と同じである。eコマースが生んだ心理的な地理によって人は距離をなくす。もはや世界には1つの経済、1つの市場しかない。(p77-79)


■インターネットの2つの特徴

梅棹忠夫の言う情報産業、あるいはドラッカーの言うIT革命を語る上で、欠かせない存在はインターネットだと思います。もはや自分の生活や仕事においてなくてはならない存在ですが、私はインターネットの特徴は「双方向性」「個の情報発信」だと考えています。この2つの特徴の例としては、例えばmixiやFacebookのようなSNSやツイッター、あるいはソーシャルゲームなどで、ネットによりこれまでにはなかった「つながり」が実現しています。


■これまでになかった「つながり」とは

これまでになかった「つながり」をもう少し掘り下げてみます。例えば前述のSNS。SNS上では、過去から現在に至る自分の人間関係がフラットに並んでいます。例えば、小中学校時代の友達、高校や大学の友達、社会人になってからの知人もいれば、趣味を通して知り合った友人もいます。また、お互いに会ったことがない人でも、SNS上でつながることもでき、これら友人・知人がSNS上に並んでいます。SNSや携帯がなかった時には、中学校を卒業すれば次に会い近況を話す・知る時は5年後の成人式だったかもしれませんが、SNSでつながっていれば、(全てではないですが)お互いの状況を確認することもできます。

SNSが長い時間軸にわたる人間関係が並び情報がストックされるイメージな一方で、ツイッターはリアルタイムでその時その瞬間でつながるフローのイメージです。お互いがツイッターを使っているという前提はありますが、ツイッターで「○○なう」とつぶやけば状況が、楽しいやおいしいとつぶやけば感情が瞬時に伝わります。もしネットがなければ、「昨日、××を食べておいしかった」などとなり、おいしいという感情がその場にいない友人にリアルタイムでつながることはできないでしょう。


■情報革命のこれから

上記のドラッカーが言及するIT革命も考慮すると、eコマースでは買い手と売り手の距離をなくしましたが、ネットによる「つながり」ではこれまでにはなかった人と人との距離感を生み出しているように思います。やや大げさかもしれませんが、既存の人間関係の距離感を破壊していると感じます。

ここまでは「つながり」について人と人との場合を見てきましたが、「双方向性」と「個の情報発信」は何も人だけとは限らないと思います。モノと人やモノとモノのつながりも考えられます。例えば、デジタル家電と人がネットを媒体につながることや、異なる複数の家電が情報のやりとりをする可能性も十分にあります。単なる想像ですが、外部から携帯で連絡すれば、冷蔵庫と台所と電子レンジが連携し勝手に料理を作ってくれるとか、自動車と自動車がつながれば車同士の交通事故が無くせるかもしれないなど、いろんな可能性があります。

梅棹忠夫は先述の「情報の文明学」において、工業の時代になり農業は飛躍的に生産性が向上し、情報産業の時代でも工業だけでなく農業も大発展を遂げた書いています。ネットによるこれまでにない人と人、人とモノ、モノとモノがつながることで、情報革命はこれからも進化が続きそうです。


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多田 翼 (書いた人)


外資系 IT 会社にてマーケティングリサーチ マネージャー (LinkedIn) 。

1981年 (昭和56年) 生まれ。名古屋出身。学生時代は京都。家族4人で東京23区内に在住、2人の子どもの父親。気分転換は毎朝 8km のランニングとピアノ。

書いている内容は、所属組織や会社の正式見解ではなく個人の見解です。