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2015/12/23

Instagram の提供価値 (2015年時点) - なぜあの人はインスタを使うのか




マーケティングにはバリュープロポジションという考え方があります。日本語にすると提供価値です。


バリュープロポジションとは


価値を実感するのは顧客です。提供する側にとって重要な問いは、商品やサービスはターゲット顧客にとってどのような価値を提供しているかです。

バリュープロポジションの要素は3つあります。この3つが全て成立していることがポイントです。

2012/03/31

ここ最近考えている4層フレームワークと、コミュニケーションとコンテンツの話

当たり前のように使っているiPhoneや、ツイッターなどのソーシャルメディア。このへんを自分が使いだしたのはここ5年以内くらいであることにふと気づきます。

今から5年前の2007年当時を思い返してみると、携帯電話はケータイと表現される今でいうフィーチャーフォンでした。SNSと言えばmixiだったし、ソーシャルゲームも今ほど話題を呼んではいなかった。当時、ケータイを使って何をしていたかというと、キャリアのメールや電話のコミュニケーションが中心で、今スマホでやっているようなネット閲覧、ソーシャルサービスの利用、あるいは動画などのコンテンツを見る/遊ぶのようなことはほとんどしていなかったはずです。ちょっと話が脱線しますが、最近は「ケータイ」という表現をあまり見なくなったように思います。「スマホ」が多い。もしかしたらケータイという言葉は死語になりつつあるのかも。

2007年と今を比べると、ここ5年くらいで大きく変わったんだなとつくづく思います。その要因をあらためて考えてみると、(1)ネットワークのインフラは高速/大容量通信がコストを下げながら実現され、(2)モバイルデバイスは2007年にiPhoneという新しいスマートフォンの登場とGoogleがAndroid OSの無料オープンにしたことでアンドロイド端末との競争、(3)ツイッターやフェイスブックあるいはGREEやモバゲーなどのプラットフォームが次々につくられ、(4)プラットフォーム上で音楽・動画・ゲームなどのコンテンツプロバイダーが展開する。これら4つの要素:インフラ、デバイス、プラットフォーム、コンテンツプロバイダーの成長や変化がここ5年くらいで多くを変えてしまったのではと思います。

■4層のフレームワーク

この4層は、今の状況がどうなっているのか、あるいは今後はどう変わるのかを考えるために役に立つ切り口だと思っています。例えば2007年くらいというのは、4層は携帯キャリアがほぼ独占できていたように思います。ドコモなんかが典型で、
  • インフラ:ドコモが提供する携帯回線
  • デバイス:ドコモ仕様で携帯製造メーカーが作ったケータイ
  • プラットフォーム:iモード
  • コンテンツプロバイダー:iモード向けに様々なコンテンツを提供
こうして見ると、きれいに囲い込みができていますよね。ドコモ以外の例えばauでもez webというプラットフォームを持っていて、それぞれのキャリアが4層で独自のエコシステムを展開していました。

ところが2012年現在を考えると、4層には様々なプレイヤーが存在しキャリアの影響力は小さくなっている状況がうかがえます。
  • インフラ:キャリアが提供する携帯回線、Wi-Fiなど
  • デバイス:iPhone、Android。スマホやタブレットなど種類も増加。必ずしもキャリアに依存していない
  • プラットフォーム:フェイスブック、ツイッター、グーグル。GREE、モバゲーなどのコンテンツプラットフォーム。LINEなどのコミュニケーションプラットフォーム
  • コンテンツプロバイダー:ソーシャルメディアと連携された音楽/動画、ゲーム、など

最近、仕事でスマホを使うことがあったのですが、発注して新しく届いたアンドロイド端末を使用してみて思ったのは、使うのにあまりキャリアを意識することがなかったことでした。どういうことかと言うと、アカウントはGoogleアカウントで登録し、メールも@docomoではなく@gmailがあれば十分。電話もスカイプとかLINEなどのアプリを使えばいいし、ちょっとしたコミュニケーションだったらフェイスブックからもできてしまう。動画はYouTubeやTEDのアプリで余りあるほど見られるし、ゲームもAngry BirdsとかGREEとかいろんなアプリが用意されている。携帯会社というキャリアは携帯回線の4層で言うインフラ部分くらいです。

■コミュニケーションとコンテンツの2つに

ところで、自分がネット上でやりとりしている情報(データ)は大きく分けてしまうと、コミュニケーションとコンテンツの2つだと思っています。それぞれ具体的には
  • コミュニケーション:通話・メール・チャット。検索した言葉や何を買ったかなど人が発する情報も含む
  • コンテンツ:映画/動画・音楽・ニュースなどの情報やゲームなどのエンターテイメント
ニコニコ動画などは、動画を複数ユーザーで視聴しながらコメントをつけるなどのコミュニケーションの要素もあるので、コミュニケーションとコンテンツの両方を要素を持つ場合もありますが。

大きな方向性として、コミュニケーションは無料化の方向に、コンテンツは無料化と一部有料化に分かれると考えています。コミュニケーションは人と人とのやりとりなので、本来はそこにお金はかからないもの。コミュニケーションをする相手が目の前にいれば直接話すので、特にお金がかかるとかはありません。コミュニケーションを物理的に離れた人と、あるいはメールなどで時間差を使って行なうニーズが起こり、そのためにはコミュニケーションインフラを使うことになった。インフラ構築/維持にコストがかかるのでその分をユーザーが負担するため、携帯電話で電話をしたりメールを送るのに相応の料金が発生しています。

それが、技術の進歩やビジネスモデルを工夫することで無料で使える様々なコミュニケーションサービスがでてきています。電話であれば、スカイプやLINE、Viber、050プラスなどは基本無料。メールもドコモなどの携帯キャリアが提供するアカウントではなくGmailを使えばタダ。これが前述のコミュニケーションが無料化する流れです。

次にコンテンツの無料化と一部有料化。無料コンテンツの代表例は天気や電車/交通情報、ニュースなどでしょう。ニュースは日経や朝日が有料化に積極的ですが、国内外の出来事をざっと知るくらいであれば無料で手に入ってしまいます。これに比べ、お金を払ってでも見たい/遊びたいコンテンツは有料モデルが成立します。有料モデルとはユーザーへの課金モデルのことで、身近な例ではソーシャルゲームが当てはまります。もちろん基本無料で遊べますが、ゲームにハマってしまうと有料アイテムを使うケースも増えユーザーへの課金が発生します。逆に言えば、ユーザーはゲーム内のアイテムにお金を払ってでも遊びたい、ゲームを続けたいというニーズです。有料コンテンツは海外のほうが整備されている印象で、NetflixやHuluなどの有料動画サービス、Spotifyといった課金モデルの音楽サービスなど。無料登録だけでも利用できますが、有料会員になることでより便利に使えるようになります。フりーミアムモデルとも呼ばれている世界です。

■4層への影響

コミュニケーションの無料化と、コンテンツは無料化/有料化は、4層それぞれに影響を与えます。

インフラ:無料コミュニケーションにシフトしコンテンツ使用のためのデータ通信量が増大。ドコモやauなどの通信障害がたびたび発生しましたが、今後も増え続けるスマホユーザーとユーザーごとの利用データ量のダブルで増えるのでインフラ構築コストがかさみます。それに耐えられなくなったときに定額制がデータ従量制になるかもしれません。ネットワークの中立性という継続課題もあります。

デバイス:コミュニケーションとコンテンツ利用をするには不可欠なデバイス。スマホは先進国だけではなく低価格で多機能な端末提供されると新興国でもユーザーが爆発的に増えそうです。PCはないけどモバイルはある、コミュニケーションインフラが整っていない新興国ではモバイルでのコミュニケーションが無料というのは大きい。その後はゲームなどのコンテンツユーザーも増えるのでビジネスチャンスは広がりそうです。

プラットフォーム:コミュニケーションやコンテンツを提供するプラットフォーム。人間関係が構築されるフェイスブック、人間関係+興味のツイッター、ビジネスでの人間関係のリンクトイン。グローバル展開を加速させているGREEやモバゲーなどのゲームコンテンツプラットフォーム。プラットフォーム上ではコミュニケーションが行われ、ユーザーはコンテンツを利用する。無料サービスは今のところ広告モデルで成立させ、一部コンテンツを有料化するというビジネスモデルです。

コンテンツプロバイダー:同じコンテンツでも利用範囲が制限される無料版は広告モデルで、より便利なサービスは有料版でコンテンツを提供します。コンテンツが、お金を払ってでも利用したくなるようなプレミアムなものと、CGM(Consumer Generated Media:消費者生成メディア)などの無料で利用できるものに分かれていく。

■最後に

冒頭で2007年と2012年現在を比べましたが、5年後の2017年には今とは大きく変わっているはずです。変化の幅は07年⇒12年よりもっと大きく変わっているかもしれません。「そういえばあのころはフェイスブックとかあったよね」みたいな会話をすることになるのかもしれません。人間関係のプラットフォームは今のところはフェイスブックですが、5年後もそうとは限らないのです。

インフラ、デバイス、プラットフォーム、コンテンツプロバイダーの4層で、これから何が変わり、何が変わらないのか。変化の激しい時代にいますが、表面的なことに振り回されず本質を見落とさないようにしたいものです。

2011/12/23

「我が事化」がカギだったソーシャルメディア進化論

昨日はJMRX勉強会に参加してきました(11年12月22日)。講師として招かれたのは「ソーシャルメディア進化論」の著者である武田隆氏(エイベック研究所代表取締役)。この本は今年読んだ中でもベスト5には間違いなく入るもので、最初に読んだ時にブログに書こうとしたものの下書き状態で残ったままでした。JMRX勉強会に参加し著書本人から直接話を聞いたこともあり、あらためて「ソーシャルメディア進化論」から考えたことをエントリーとしてまとめておきます。

■「心あたたまる関係」と「お金もうけ」を両立させる企業コミュニティモデル

本書の主題を一言で表現すると、「ソーシャルメディアでの心あたたまる関係」と「お金もうけ」をどうやって両立させるか。すなわち、ソーシャルメディアのマネタイズ(収益化)です。そして、著者が提示する解は、企業サイトでコミュニティをつくり企業と消費者の絆をつくること。エイベック研究所の知見が凝縮された企業コミュニティを活用したマーケティングモデルで、大きくは2つの柱があります。プロモーションとマーケティングリサーチ。各プロセスを簡単に書いておくと以下の通りです(詳細が気になる方はぜひ本書をご覧ください。一読の価値あると思います)。

引用:書籍「ソーシャルメディア進化論」
  1. 参加者の意識の向上:企業サイト上のコミュニティで参加者の発言が投稿され、参加者同士のコミュニケーションが活性化してくると、参加者の我が事化とコミュニティへの帰属意識が向上
  2. 企業サイトへの掲載:コミュニティの発言内容を企業サイトの他のページにも掲載することで、企業サイト訪問者の態度変容を促す
  3. 広告・PRへの転用:他のPRや店頭施策と組み合わせ、ファンの声を外部にも広く表出
  4. 外部の検索サイトからの閲覧者増加:発言内のワードが検索サイトで引っかかるようになり、閲覧者が増加
  5. ユーザーを把握:コミュニティ参加者を趣味や発言、影響力などで細かく把握する。特徴で参加者をグループ化
  6. オンライブループインタビューへ:特に深く知りたいグループに対してオンライン上でグループインタビューを実施
※実はこのモデルには7があるのですが、それは後述します

プロモーションとマーケリサーチの2つと書きましたが、1~4までがプロモーション、5と6がリサーチに該当します。このモデルは、プロモーションという企業から消費者に伝えることと、リサーチという消費者が企業に伝えるというコミュニケーションのキャッチボールであり、本質的には市場との会話であると武田氏は言います。1~6をPDCAサイクルでまわし、企業と消費者(参加者からファンへ)のコミュニケーション履歴が蓄積することで、お互いがお互いのことを理解するようになる。最終的にはロイヤリティの高いファンを獲得し、結果として自社商品・サービスやブランドの売上や利益が得られる。これが本書で提示された「企業と消費者の心温まる関係」と「お金儲け」の両立なのです。

■なぜFacebookではないのか

ここまでで、なぜ場が企業コミュニティなのか、あるいはフェイスブックではないのか、という疑問が出てくるのではないでしょうか。武田氏は自らの知見も踏まえた上で、フェイスブックを企業が使う場合の位置づけは「メールマガジン」がいいのでは、と昨日のJMRX勉強会でおっしゃっていたのが印象的でした。

フェイスブックは実名での参加が基本です。実名であるが故に、知人を越えたコミュニケーションが発生しづらく、お互いに実名や背後に自分の人間関係を背負っていることで、知人以外とのいきなりのコミュニケーションに不安やリスクを感じるそう。もちろん、コメントを投稿する人やいいねを残す人もいると思いますが、コミュニケーションのハードルが高いことで活性化しにくい。武田氏曰く、フェイスブックでのコメントは1~2行くらいの「言い切り」のコメントで終わるケースが多く、一方の活性化している企業コミュニティではコメントは「質問」や「呼びかけ」で終わっている。つまり、コミュニケーションが活性化しやすいコメントが続くそうです。

ただし、企業にとってフェイスブックが使えないかというとそうではなく、有効な使い方もあり、例えばANAのフェイスブックページでは、キャビンアテンダントや航空整備士など色々な立場の人がウォールに書き込んでいて、そこにユーザーがいいねやコメントを付けています。このように「人が出る」ようなコンテンツは有効だそうです。とはいえ、企業のフェイスブックページではユーザー同士の横のつながりが起こりにくく、どうしても企業と消費者の1to1のコミュニケーションになりがちで、これは企業担当者の負担も大きく、コストがペイできなくなる側面もあるようです。おそらくこれはツイッターも同様なのではないでしょうか。

■企業コミュニティを活性化させる「我が事化」

昨日のJMRX勉強会の武田氏の講演では、ポイントとなるキーワードは「我が事化」でした。ちなみに武田さんは我が事化のことを「レリバンシー」という言葉で表現されていて、これはrelevancy:関連性、つまり自分に関連があること=我が事化という使い方だと理解しました。我が事化は企業コミュニティをいかに活性化させるかに直結し、ここがそもそも非常に難しいというお話でした。あらためて冒頭のモデル図を見ると、①参加者意識の向上がきますが、コミュニティが活性化してこないと、①で止まってしまいとてもマネタイズどころではなくなります。

当然のことながら、始めから我が事化している参加者は多くありません。企業サイドから無理やり関与を求めても引かれるだけでしょう。ここは時間をかけてじっくりと関係性を醸成することが大事だそうで、例えば、共感するコメントに拍手をするような仕組みを設けておくなど、軽い行動から始めるよう促す。拍手をすれば、その後も気になるので返信コメントを付けたり、自ら投稿するようになる。このように関与レベルを段階的に上げていき、参加者の我が事化を育んでいくそうです。

我が事化を持ってもらう施策で大切なのは2つ。参加者にあるテーマを投げかけ投稿してもらいそれに拍手するなどのコミュニティ内での「役割の設定」(ご自由にどうぞ、だと逆に行動しづらくなる)、誰かのコメントに拍手したり投稿することにポイントを上げるなどの「報酬の設定」(インセンティブになるとともに参加する「言い訳」を与える意味もある)。思ったのは、役割や報酬の設定とともに、コミュニティ参加者同士での共感、そこで生まれる信頼関係をいかに構築するかなど、企業コミュニティとはいえ非常にリアルな人間味あふれる空気をいかにつくるか、ここが大事だということでした。

「我が事化」に関してなるほどと思ったのは、コミュニティ参加者が「私がいないと成り立たない」と思ってもらうところまで持って行けるか、つまり、そのコミュニティの中で自分が大事な一員だとみんなが思えている状況、そう自覚できるかということ。参加メンバーがこう思う状況になると、場が最も活性化されるのだそうです。

参加者がコミュニティを我が事化し、帰属意識を高める、それが企業へのロイヤリティを向上させるというのは、言うが易し行うは難しだと思います。ちなみに、エイベック研究所はソーシャルメディア(企業運営型BtoCコミュニティサイト)構築市場における売上トップシェア(10年。矢野経済研究所調べ)だそうですが、ここがきっちりとできるからこそだと思います。このノウハウを持っていることが強みだと感じました。「ソーシャルメディア進化論」という本では、企業コミュニティで同研究所が収益を上げるまでの紆余曲折も書かれており、武田氏は最も苦しい頃の1日の食事がみたらし団子1本だったというベンチャーならでは(?)のエピソードもありましたが、そんな状況からトップになった方の説明には説得力がありました。以前のエントリーで我が事化を取り上げた記事も書きましたが、あらためて我が事化って大事だなと。
相手も自分も動かす「自分ごと化」のススメ|思考の整理日記

■企業コミュニティモデルの可能性

心暖まる関係とお金もうけの両立は企業コミュニティを活用したプロモーションとマーケティングリサーチでした。このモデルの可能性として、企業だけではなく他の組織にも活用できるのではと思いました。武田氏が企業コミュニティで企業と消費者をつなげることを思い付いたのは、企業の自社商品やサービスに対する思いが消費者に全くと言っていいほど届いていないと気付いたからでした。実際に当時のお客さんから自社商品への思いを聞けば聞くほど、それって消費者はほとんど知らない現実。そこで、企業と消費者をインターネットらしく結びつけることが一番初めにできたコンセプト。これを具現化したのが企業コミュニティモデルです。ここで思うのが、組織の思いが消費者/生活者に届いていないのは何も企業だけではなく、NPOやNGOなどの組織、自治体や地方団体、政党、病院など、あらゆる組織と生活者に当てはまるのではということ。企業コミュニティで実現されていること、双方向のコミュニケーションが他でも実現されれば私たちの社会はもっと豊かになっていくのではないでしょうか。

ただ、昨日の武田氏の話では、例えば企業コミュニティのモデルを活用した地域の活性化は現時点ではとても難しいとのことでした。このモデルを導入するためには、組織との二人三脚が不可欠です。企業コミュニティの場合は企業サイト運営と連携し、プロモーションやリサーチなどのマーケティングに関わることになります。実際にある市の行政に提案したこともあるようですが、結局担当者に受け入れてもらえなかったエピソードも語っていただきました。

冒頭で紹介した企業コミュニティモデルは6つのプロセスがありましたが、実は7つ目まであり、1~6を繰り返すことで企業と消費者の距離は縮まっていくとしています。

引用:書籍「ソーシャルメディア進化論」

昨日のJMRX勉強会での武田氏の講演では、始めに紹介されたのは「見える人」と「見えない人」の違いでした。見える人とはネットワークを味方にする人で、「スモールワールド」を感じている人という話。武田さん曰く、コミュニティで成功する企業はスモールワールドを肌感覚で理解しているとのこと。

書籍「ソーシャルメディア進化論」で最後のほうに書かれていたのが、スモールワールドへのパスポートは「ありがとう」。昨日の話を聞くと、「心あたたまる関係」と「社会の豊かさ」の両立には期待したいですし、ありがとうという感謝の気持ちがキーワードなのかもしれません。


ソーシャルメディア進化論
武田隆
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2011/08/27

日本の1万年の人口増減とFacebookのネクストステージ

先日、ツイッター上である先輩が「Facebookがそろそろ潮時かもしれない」というツイートをされていました。飽きたとか単純な理由ではなさそうだったので、ちょっと気になりReplyをすると、次のような状況からでした。
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色々な「友達」が増えすぎてなんとなく投稿がしにくくなった。フェイスブックには最近できた友達から中学時代の友人までいるので、投稿内容を妙に意識してしまう結果、無難なことしか書けない。今は不特定多数の人に見られるtwitterのほうが逆に気軽に投稿しやすい。
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■なぜFacebookでは無難な投稿内容になるのか

上記のリプライをもらった時に、確かにそうだなと思いました。フェイスブック(以下、FB)上にはいろんな「友達」がいます。地元の友達や大学の友人、仕事でお世話になっている方、等々です。FBに投稿するとき、どこかで見られることを意識してしまいます。例えば、投稿内容が特定のグループにしか意味・背景が通じないことだったりする時は書き込むのを結局やめたり、あるいはどこかで自分のことを良く見せようという気持ちがあるような気がします。つまり、書き込み内容にフィルターがかかってしまい、結局フィルターを通るのは無難な内容になってしまうのです。最大公約数的な感じで。

一方のツイッターの場合、気軽にできるのは不特定多数の人というところがポイントだと思っています。というのも、不特定多数だと投稿内容から自分がどう思われてもある程度構わないという意識があり、だからFBほど投稿内容にフィルターがかからなく、無難なことでなくてもアップできる。もちろんその中にはFBと同じように知り合いや友達、同僚もいるわけで、ツイートする/しないのフィルターをかけますが、それでも気楽にツイートできてしまいます。

■Facebook上の友達が増えるとどうなるか

FBに話を戻しますが、FB上で友達の数が増えることで次第に投稿内容がPersonalな内容が少なくなるという記事がありました。
Do Growing Friend Lists Mean Shrinking Facebook Use?|All Facebook

以下の図は同記事の元記事からの引用ですが、それによればFB上でつながっている友達の数により、より個人的なネットワークであるPersonal Networkから、Social Network、Professional Networkの3つに分かれると指摘しています。

NETWORK OVERLOAD: WHY FACEBOOK IS SINKING UNDER ITS OWN POPULARITY (WARNING TO GOOGLE+)|GREAT FINDSから引用

記事では同じ内容でも、Personal、Social、Professionalの3つで表現が次のように変わると言います。「週末をJaneと過ごしてとても楽しかったよ」(Personal)、「楽しかったハワイ旅行から今戻ってきた」(Social)、「ハワイで有意義な時間を過ごした」(Professional)。

もちろん、人により様々だとは思いますが、友達が増えるということは冒頭で書いたように色々な人間関係がFB上にできるので、個人的な内容やプライベートの話が中心だったものが、人数が多くなることでより公なメッセージになるというこの記事での指摘は理解できるものだと思います。

この引用記事のタイトルは「Do Growing Friend Lists Mean Shrinking Facebook Use?」(友達が増えることでフェイスブックの使用が減る?)です。確かに、フェイスブック疲れというか、フェイスブック離れみたいなものもちらほらと聞いたり、ネット上でも見かけるようになりました。(理由は様々で一概に友達の人数とは限らないことだと思いますが)

■1万年間の日本人口の趨勢からの示唆

「2100年、人口3分の1の日本」(鬼頭 宏 メディアファクトリー新書)という本をちょっと前に読んだのですが、そこにおもしろいことが書かれていました。2005年をピークに日本が人口が減少期に入ったと言われていますが、本書によると縄文時代以来の約1万年間において、日本では少なくとも4回の人口増加期と減退期があったようです(p.47-48)。

人口が増加するのは、海外から新しい技術や物産・社会制度が導入され新しい文明システムへと転換していく時代、一方で人口減退が起きるのはそれが定着して社会が成熟し発展の余地がなくなる時代だと言います。一例を引用します。狩猟採集社会であった縄文時代、人口密度は狩猟採集で成り立つ社会として世界一と考えられてるようですが、一方で生活は環境に左右され縄文時代後半は寒冷化も進んだことで人口は減少したようです。ですが、人口減退に歯止めをかけたのが稲作文化の流入でした。日本に水稲農耕が定着すると人口増加期に入ったようです。つまり、原始的な狩猟社会に稲作という新しいシステムが外部から入ったことで、新しい段階に移ったのです。 

人口から読む日本の歴史から引用

■外部からの「変化」がFacebookに何をもたらすのか

個人的に思うのが、これと同じようなことがフェイスブックにも起きているのではないかということ。もちろん全然仮説レベルなのですが、FBも転換期にあり、これまでのユーザー数が爆発的に増大しているフェーズから次の段階に移りつつあるんじゃないかなと。さっきの日本での人口増加・減退の歴史を参照すると、FBが次のフェーズに入り、さらに成長するためには外部からの新たな文化・システムが必要ということになります。それは何なのか。

そのきっかけになるのでは思っているのが、つい最近FBが発表した複数のアップデートです。その中には投稿の公開範囲を制限するのが簡単になるとあります。ユーザーが投稿を下書きしている時点で公開範囲のオプションが表示され、Friends(友だち), Public(一般公開)、Custom(カスタム)と選べるようです。
Making It Easier to Share With Who You Want|The Facebook Blog
Facebook、友だちがタグ付けした写真を事前に承認できるようになった―その他改良多数発表|TechCrunch JAPAN

これの発表内容を見た時に連想させられたのがGoogle+のCircleです。G+とFBの違いの特徴として、G+はサークル機能により投稿内容が指定しやすくなっていることがあります。G+では他のユーザーをフォローする時にそのタイミングでどのサークルに含めるかを決めますが、FBではこれまではリストはあまり有効に使われていない印象でした。それが、今回のFBの発表でG+のシステムを意識した変更のように思えました。

この変更がFBや私たちユーザーに何をもたらすのか。投稿の公開範囲が選びやすくなったことで、冒頭で書いたような無難な投稿内容にとどまらなずより活発なコミュニケーションができるようになるのでしょうか。今後の様子を見る必要がありそうですが、次のフェーズに入るための「外部からの新しい文化・システム」になるのか、興味深いところです。


※参考情報

Do Growing Friend Lists Mean Shrinking Facebook Use?|All Facebook
NETWORK OVERLOAD: WHY FACEBOOK IS SINKING UNDER ITS OWN POPULARITY (WARNING TO GOOGLE+)|GREAT FINDS
Facebook Sees Big Traffic Drops in US and Canada as It Nears 700 Million Users Worldwide|Inside Facebook
人口から読む日本の歴史
Making It Easier to Share With Who You Want|The Facebook Blog
Facebook、友だちがタグ付けした写真を事前に承認できるようになった―その他改良多数発表|TechCrunch JAPAN
Facebook、プライバシー機能をアップデート--投稿の公開先指定やタグ付けの承認などで変更|CNET Japan


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2011/07/10

「ソーシャルメディア実践の書」から得られたノウハウ以上のこと

ここ最近で読んだ本に「ソーシャルメディア実践の書 -facebook・Twitterによるパーソナルブランディング-」があります。

ソーシャルメディアを活用して個人レベルでできるブランディングのヒントがたくさん書かれていました。それ以外にも考えさせられたこともあり、興味深く読めました。

著者である大元隆志氏はソーシャルメディアの最も重要な特徴を次のように表現します。「世界中の人に、あなたというこの世でたった一つの存在を知ってもらうことを実現する最良のメディアである」と。

では、自分のこと、それも「あなたの魅力」をソーシャルメディアで伝えるにはどうすればよいか、これが本書の主題です。

この本では、自分自身のポテンシャル向上方法と、ソーシャルメディア活用し自分の魅力伝える方法の2点が指南されています。

■ ソーシャルメディアを活用する心得

本書の構成は大きくは3つです。

  • ソーシャルメディアとは何か(第一章・第二章)
  • ソーシャルメディアでの実践ノウハウ(第三章・第四章)
  • ソーシャルメディアの未来(第五章)

本書はタイトルが「ソーシャルメディア実践の書」とある通り、ソーシャルメディアで自分の魅力を伝えるためにどう考え、何をすればよいかが具体的に書かれているのが特徴です。

よく、ソーシャルメディアでは絆をつくることが大切であるということが言われます。例えば、企業が消費者と絆を形成することで、自社のブランドや商品のファンになってくれる、これをソーシャルメディアであれば実現できる、というようなことも書かれていたりします。

ただ、肝心の「絆をどうつくるか」はあまりフォーカスされていないような気がします。それが本書では、個人レベルでもできる内容が書かれています。もちろん、著者が言うように本書のノウハウを実践したとしても、成果が出るには早くても半年くらいはかかるとあるように、継続してやるのはそれなりの努力は必要です。

本書で提示されているソーシャルメディアの実践ノウハウは2つに分けることができます。1つがソーシャルメディアのリテラシーで心得、2つ目が具体的な活用ノウハウです。

1つ目の心得ですが、私が印象に残った内容は以下のようなものでした。

  • ソーシャルコミュニケーションの王道は人から尊敬され人望を集めていくこと
  • パーソナルブランディングは目立つことよりも信頼されることを重視するべき

■ ソーシャルメディアの実践

それではソーシャルメディアを使って、人望を集め信頼されるにはどうすればよいのでしょうか。

著者のアドバイスが「実践の書」として書かれていて、一言で表現すると必要なのは「評判を管理していく能力」です。

評判を管理し、自分への信頼を少しずつ積上げていきます。必要な能力は3つだと著者は言います。

  • キューレーション能力
  • 表現力
  • コミュニケーション能力

なぜこの3つなのかというと、それはソーシャルメディア上での自分の魅力を伝えるための活動と関係しています。

つまり、情報をインプットするためには目利きとしてのキュレーション能力が必要になり、インプットした情報をコンテンツ(例.ブログ記事にする)にして自分の魅力を伝えるために表現力が、ソーシャルメディア上で交流するためにはコミュニケーション力が要求されるというものです。このサイクルをまわすことで評判を管理するのです。

詳細は本書に譲りますが、この3つの能力のうち表現力に該当する情報提供について、著者の考え方に共感しました。

例えば、ツイッターやブログで何かをツイート・記事のエントリーをするということは情報を提供することになりますが、その時に重要なのはいかに質の高い情報を発信し相手に貢献できるか、価値を提供できるかという考え方です。ただ読んでもらうだけではなく、そこに自分ならでは視点・考え方をプラスアルファで提示し、共感をしてもらえることを目指します。

ここに著者の哲学がありました。この本の最後の「結び」で、次のようなことが書かれていました。

  • ソーシャルメディアで活躍する最もよい方法は誰かを幸せにすること
  • あなたの隣にいる人を幸せにしたいと願う気持ちが成功の秘訣である

これらが、著者が本書を通じて最も伝えたかったことであり、この本を通じて書かれていた実践の仕方はこの考え方がベースになっていると思いました。

■ ソーシャルメディア時代の4つの絆から考えた本当に大切なもの

ここまでは本書のソーシャルメディア実践の考え方・ノウハウでした。この本に書かれていたことで印象的だったのはノウハウ以外にもありました。

おもしろいと思ったのは、ソーシャルメディア時代には四種類の絆が形成されると書かれていたことです。強い絆、仲間の絆、弱い絆、一時的な絆です。



上図は本書(p.318)からの引用です。

ソーシャルメディアにより、それまでは家族などの強い絆と友人などの仲間の絆という2つだったものが、弱い絆、一時的な絆(ちなみに図では一次となっていますが一時のはずです)が形成されるようになると言います。

弱い絆は例えばツイッターで2、3回やりとりした、ソーシャルメディアを通じて知り合った人などの相互フォローの関係です。一時的な絆はあるトピックでその時だけ一時的にコミュニケーションをとったことのある関係です。

上図のソーシャルメディア時代の4つの絆について、弱い絆や一時的な絆はソーシャルメディア以前にも存在はしていたと思います。

というのも、ソーシャルメディア以前にも、弱い絆は、例えば会社内で顔と名前は知っているけれども、あまり話したことがない人やメールでしかやりとりをしたことがない人です。一時的な絆は、業界カンファレンスや何かの集まりで会って話したけど、それ以降は特にコミュニケーションが発生していない人などがいたからです。

ただし、ソーシャルメディアの使用以前と以後で大きく違うのは、この関係の人たちから得られる情報です。

弱い絆や一時的な絆からの情報(業界動向、ニュースなど)も、時には有力なものに成り得ると実感するからです。

例えば自分の専門ではない話題(経済、政治など)のニュースや考察などの情報は、ツイッターで流れていることが多く、それは多くの場合弱い絆や一時的な絆である人たちからのものです。あるいは、自分がいる業界の情報も、時にはこうした人たちが情報源になることもあり、情報が入ってくる速さ・頻度・質がソーシャルメディア使用以前よりも明らかに向上しています。

これは絆が弱かったり、一時的だったとしてもソーシャルメディア上でつながっていることが大きいのではと思います。

自分にとって大切なのは家族などの強い絆や友達や一緒に仕事をしている人たちで構成される仲間の絆です。そこに弱い絆と一時的な絆が加わり、様々な関係性が形成されます。

ソーシャルメディアはこうした関係性を充実させてくれるツールだと思いますし、いくらソーシャルメディアの使い方に詳しくてもそこにコミュニティがあるかどうかで楽しさが違ってきます。

本書で書かれているソーシャルメディアの実践も参考になりますが、一方で自分が持つコミュニティは財産とも言え、お金では買えない大切なものだということが本書を読んであらためて考えたことでした。

※参考情報
ソーシャルメディア実践の書 -facebook・Twitterによるパーソナルブランディング-|ASSIOMA:ITmedia オルタナティブ・ブログ


ソーシャルメディア実践の書 ーfacebook・Twitterによるパーソナルブランディングー
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2011/07/03

グーグルが新SNSのGoogle+をリリースする2つの意味とわくわく感

ついにGoogleも動いてきました。同社が世界に発表した新しいSNSであるGoogle+です。(11年7月2日現在まだパイロットテスト段階で、一部のユーザー限定で使用が可能)

参考:Introducing the Google+ project: Real-life sharing, rethought for the web|The Official Google Blog

今回のエントリーでは、Google+について以下のような論点で書いています。

  • Google+とは何か?Facebookとの違いは?
  • なぜGoogleはSNSに取り組むのか?
  • Google+が普及するとどうなるのか?そして期待すること

2011/05/28

トヨタが SNS で目指す 「クルマが人の生活において友だちとなること」 は実現できるのか?

先日の5月23日に、トヨタ自動車と米セールスフォース・ドットコムがクルマ向けのソーシャルネットワーク「トヨタフレンド」の構築に向けて提携することで基本合意したと発表しています。

「トヨタフレンド」は、2012年に市販される予定のEV(電気自動車)およびPHV(プラグインハイブリッド車)で開始するサービスで、自動車を購入する人とクルマ、販売店、メーカーをソーシャルネットワークサービスで結びつけるようです。

参考:セールスフォース・ドットコムとトヨタ、クルマ向けソーシャルネットワーク「トヨタフレンド」の構築に向けた戦略的提携に基本合意|TOYOTA


セールスフォースとトヨタが業務提携--Chatterを基盤に「クルマがつぶやく」SNS|CNET Japanから引用


トヨタフレンドとは


トヨタフレンドの内容をもう少し見てみます。

ソーシャルネットワークという表現を使っているので、何と何がどうつながるかが重要になってくると思いますが、上記のトヨタの発表内容では、「トヨタフレンド」は、人とクルマ、販売店、メーカーを繋ぐソーシャルネットワークサービスである、としています。

これらの中でどういった情報のやりとりがされるのかというと、「カーライフに必要な様々な商品・サービス情報などをお客様に提供」とあります。

例えば、EV及びPHVの電池残量が少ない場合、充電を促す情報をあたかもクルマの「つぶやき」としてお客様に発信するとあります。

あるいは、走行距離によって定期点検を促してくれたり、点検の予約をトヨタフレンドを通じて販売店と行うことも可能だそうです。

右の画像では、ユーザーと販売店のつぶやき内容が表示されており、車が点検のアナウンスをし、ユーザーが販売店に予約するという流れになっています。(イメージ画像はセールスフォースとトヨタが業務提携--Chatterを基盤に「クルマがつぶやく」SNS|CNET Japanから引用)


SNS とクルマの主従関係


このニュースを報じた記事はいくつかありましたが、それらの中でおもしろいと思ったのは日経にあった「(セールスフォース社CEOの)Benioff氏からクルマがSNSに入るというアイデアの話を聞いて感銘を受けた」というトヨタの豊田章男社長のコメントでした。

車とSNSという両者において、「車がSNSに入る」ということは、SNSを中心にし車がその上に乗るという関係だと思います。ここがなぜおもしろいかと思ったかというと、この主従関係を自動車会社の社長である豊田氏がコメントをしている点です。

逆の発想として、車の中にSNSを組み込むということも考えられますが、トヨタがこのサービスで目指すのはあくまでソーシャルネットワークをベースに、その上で車の価値を上げていこうという取組みだという印象を受けました。

実際に、豊田氏は以下のように述べています。セールスフォースとの提携意図を説明しています(上記、CNET Japanの記事から引用)。

トヨタフレンドは、SNSにクルマそのものが参加するという構想。

これにより、クルマが人の生活において友だちとなることを願っている。近年、人と人とのつながり方やコミュニケーションスタイルが大きく変化している。

クルマもそれに合わせて変化していくことで、若者のクルマ離れや、魅力の低下を食い止められるのではないかと考えている。従来の“走る”“止まる” “曲がる”に、“つながる”というバリューを付加することで、より魅力のあるクルマを作るためのひとつの試みとなる。


トヨタフレンドは「ソーシャルネットワーク」になれるか


さて、あらためてソーシャルネットワークの魅力を考えた時に、SNS内でのソーシャルグラフ(人間関係)があります。

友達の友達を伝って、昔の知り合いを発見することもあり、ソーシャルグラフがあたかも網目のように展開しており、そこではコミュニケーションが活性化している世界です。

このようなにSNSを捉えた時に、今回のトヨタフレンドはどう評価できるのでしょうか。トヨタフレンドでのソーシャルグラフは人だけではなく、車と人がつながります。自分の車と会話とつながるというのは、既存のSNSと比べると比較優位の要素として挙げられそうです。

ただし、それには前提があります。車と人のコミュニケーションが活性化していないと、ユーザーにとっては魅力的ではなくなります。発表や関連記事で説明されていたコミュニケーション例では、電池残量が少ない場合の充電督促情報、走行距離からの定期点検を促してくれるなどを、車が「つぶやき」として発信するとありました。

個人的に思うのが、これらの話題はそう毎日発生するものではなく、また、発生したとしてもコミュニケーションの発展性があまり期待できないように思います。

ツイッターやフェイスブックを使っていて感じるのは、他愛のない出来事でも、SNS上でやりとりが発生し、1対1ではなく、時として多対多のコミュニケーションに発展するおもしろさがあります。

これがトヨタフレンド上でどこまでできるか、トヨタフレンドをソーシャルネットワークと定義するからには、また、ユーザーに飽きられずに使い続けてもらうためには、ここがカギだと思います。

車からのユーザーへの充電督促や定期点検のお知らせ、ユーザーから販売店などへの点検の予約、といったものはどれも1対1のコミュニケーションであり、これだけのためであればSNSとして活用する必要性が小さいのではないでしょうか。

トヨタフレンドでは、TwitterやFacebook等の外部のソーシャルネットワークサービスとも連携し家族や友人とのコミュニケーションツールと位置づけるとありますが、単に連携するだけでなく、ここに優位性のある車とのつながりをどこまでユーザーに魅力を提示できるかが重要になると思います。実際に使ってみないと何とも言えませんが。

「クルマが人の生活において友だちとなること」を目指すトヨタの取り組みは、期待感もあり一方では課題もある印象です。


※参考情報

セールスフォース・ドットコムとトヨタ、クルマ向けソーシャルネットワーク「トヨタフレンド」の構築に向けた戦略的提携に基本合意|TOYOTA
セールスフォースとトヨタが業務提携--Chatterを基盤に「クルマがつぶやく」SNS|CNET Japan
トヨタとセールスフォース、クルマ向けSNS開発 2012年に車両の充電推奨時刻などを自動ツイートするサービス|日本経済新聞


2011/03/26

ソーシャルメディアで株価は予測できるのか?

ニューヨーク州のペース大学Famecount.comとの共同研究により、フェイスブックと株価に連動性が見られると発表しています。
New study finds link between social media popularity and stock prices|FAMECOUNT
Can Facebook Popularity Predict Stock Prices?|All Facebook

■ソーシャルメディアを活用した株価予測事例

この研究内容の概要は次の通りです。スターバックス、コカ・コーラ、ナイキの3銘柄の株価パフォーマンスと、それぞれの企業のソーシャルメディア上での人気度には関連性があるとのこと。ソーシャルメディアとは具体的には、フェイスブック、ツイッター、YouTubeで、それぞれ、いいね!ボタン、フォロワー数、YouTube閲覧者数を使ったようです。上記記事では今回のデータ結果から、以下のようなコメントを出しています。Data suggests social media popularity may be a lead indicator of stock performance.

日本でも同じような取り組みがあります。ブログなどの口コミ解析サービスなどを提供するホットリンクでは、ビジネスとしてブログなどのソーシャルメディア情報を活用して予測サービスを展開しています。その中の1つに、株式市場変動の予測を行っています。同社のホームページによると、従来のテクニカル分析が中心の金融工学に対して、ソーシャルメディア分析を活用した新しい金融工学という位置づけで、意欲的な取り組みという印象です。課題意識としては、実際の株式の売買は、売買する人々の「今」の思考・感情に基づく判断の需給バランスで決定される面もあることから、ソーシャルメディア上のデータで、「今」の日本中の人々の思考・感情を抽出・分析することで、今後の株式市場の予測をする「ソーシャルメディア分析を利用した新しい金融工学」が生まれると考えている、としています(参考:株式市場変動の予測|ホットリンク)。

では、ホットリンクの取り組み内容です。同社が提供するブログなどのソーシャルメディア分析ツール「クチコミ@係長」を活用し、日経225先物の株価予測の研究を進めているとしています。ブログ記事情報と、過去の日経225出来高と価格情報との関係を、人工知能分野の技術である機械学習技術でコンピュータに学習させる事により、株式市場価格の予測モデルを構築したと発表しています。(検証シミュレーション期間は09年8月1日~10年6月30日、運用成績は純利益:160,720円、運用益:161%)

■実現には多くの参加者が必要

ソーシャルメディアの活用事例としてはおもしろい取り組みだと思う一方で、課題もあると思います。対象銘柄が誰もが知っているスタバ、コカコーラ、ナイキであったり、日経225だという点で、ソーシャルメディアと株価の連動が見られるのは、ある程度、いや相当にメジャーなものでしか表れないのではないか、と思いました。企業銘柄については、上記のようにBtoCでないと、たとえ知名度はあったとしても、フェイスブックやツイッターではあまり出現しないのではないかという気がします。

ところで、江戸時代の徳川吉宗(八代将軍)の時に実行された享保の改革の時に、経済諮問であった大岡越前(大岡忠相)という人がいます。当時は先物は投機的な行動で倫理的によくないという考え方が支配的だったようですが、大岡越前はそれに対して、次のような考えから堂島に米の先物市場を開設したそうです。「そのような投機的な行動をも含めて多くの市場参加者が参加して市場に厚みが出来ることによって、結果的に適切な価格形成がされて、値動きも小さくなる」(参考:大岡越前はケインズだった!|ひふみ便り vol.57

ソーシャルメディアを活用し株価を予測する場合には、ソーシャルメディアでもこれと同じことが当てはまるように思います。すなわち、ソーシャルメディア上でも多くの参加者が参加し情報発信に厚みができることで、結果的に適切な(真実に近い)判断形成がされるということ。これを踏まえれば、株式市場でのその銘柄への市場参加者と、ソーシャルメディア上での出現数という両方である程度のボリュームがないと、予測に耐えうるような連動性が出ないのではないでしょうか。

■塵も積もれば宝になる?

先ほど引用した「ひふみ便り」を発行している、藤野英人氏(年金・投資信託運用のレオス・キャピタルワークスCIO)の著書:ビジネスに役立つ「商売の日本史」講義 (PHPビジネス新書)に、興味深いエピソードがあったので最後に紹介しておきます(p.177-178)。太平洋戦争の終戦直前の話です。

アメリカ・イギリス・ソ連は日本に無条件降伏を求める「ポツダム宣言」を1945年7月に発表しました。日本政府はその対応策を検討したものの、結論はなかなか出ず、日本海軍を指揮する連合艦隊司令部も政府の真意がわからずにいました。本土決戦なのか、降伏なのか、そこで司令部では参謀らが情報収集に走ったところ、株価にある兆候が見られたそうです。当時、株式市場は閑散としてたものの、8月に入り、突如として「平和株」とされる銘柄が上昇していたというのです。本書には、百貨店の三越、繊維産業の東洋紡、鐘紡など、消費や生活に密着する企業が挙げられています。

この現象は投資家の読みなのか、ポツダム宣言受諾情報がどこかから漏れたのか、その真意はわかりません。これはいわゆる、「噂で買って事実で売る」と言えるかもしれません。噂は期待とも解釈できますが、誰かが、本土決戦か降伏なのかという極限状態でも、終戦から日本にも平和が訪れることを期待して関連銘柄の株を買っていたのでしょう。

ソーシャルメディアを活用すれば、噂をデータ化し情報として活用できるようになるのかもしれません。1つ1つは単なる消費者・生活者のつぶやきのような存在だったにも関わらず、ネットというインフラ、ソーシャルメディアというプラットフォームが整備されることで、これまでは塵だったものが、積もり積もればやがて宝になるのかもしれませんね。


※参考情報

New study finds link between social media popularity and stock prices|FAMECOUNT
Can Facebook Popularity Predict Stock Prices?|All Facebook
株式市場変動の予測|ホットリンク
クチコミ@係長|ホットリンク
大岡越前はケインズだった!|ひふみ便り vol.57
大岡忠相|Wikipedia



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2011/03/08

個人情報という価値を考えてみる


Free Image on Pixabay


今回のエントリーでは、若者がプライバシーをよりオープンにする傾向が見られる点、消費者自らが個人情報を売る事例 (海外) 、これらを踏まえ個人情報という価値をあらためて考えます。


1981年以降に生まれた世代のプライバシー意識


アメリカの位置情報サービスの1つ Loopt の CEO である Sam Alnman によれば、1981年以降に生まれた世代は、オンライン上のプライバシーに対する意識がそれまでの世代と明らかに異なるとのことです。

参考:People born after 1981 have lower privacy standards, Loopt CEO says | Hillicon Valley

2011/03/05

AISASとSIPSから考える検索連動型広告とこれからの広告の方向性

ネット広告の代表的な手法の1つである検索連動型広告について、おもしろい記事がありました。
検索連動型広告がもたらした「悪しき」広告観|Adver Times(アドタイ)

■AISASモデルで見る検索連動型広告の位置づけ

ここで言う悪しき広告観とは、(マスメディアの広告に比べ)検索連動型広告は効果がはっきりと分かり費用対効果がちゃんと出せることだと記事では指摘しています。ネット広告ではクリック数が分かり、検索連動型広告では検索キーワードに連動する広告が表示されることから、一見すると広告効果が高いように思えます。しかし記事では、ここに落とし穴があると言います。

それは何か。落とし穴とは消費者の興味・関心・要求が生まれるプロセスの見落としですが、これを理解するために、AISAS(図1)という消費者の購買行動モデルで考えてみます。なお、AISASとは、Attention(注意)=>Interest(興味・関心)=>Search(検索)=>Action(行動)=>Share(共有)の頭文字をとったもので、電通が考案したマーケティングにおける消費行動プロセスを表す考え方です。具体的には、消費者がある商品を知ってから購入に至るまでは、注意が喚起され、興味;関心が生まれ、関連する情報を検索し、その商品やサービス購入し、そのことを共有する、というプロセスのこと。


話を検索に戻すと、当たり前ですが何かを検索するためにはキーワードが必要です。これはつまり、この時点で自分の興味・関心はそのキーワードに落とし込めているということです。これをAISASで見ると、すでに3番目のプロセスまで進んでいるのです。前述のように、検索連動型広告では、このキーワードに関連する広告が検索結果のページに表示されます。要するに言いたいのは、検索連動型広告で効果があるのは、すでに興味・関心が生み出された後の段階だということなのです。

これは、逆に言うと検索連動型広告では「知りたい」とか「欲しい」といった欲求を生み出すことができないことになります。そこで大事になるのが、記事が最後で問題提起するように「なぜ検索が起きているか」を考えること。AISASで言えば、Searchより前のAttentionやInterest。これが、消費者の興味・関心・要求が生まれるプロセスを見落とす落とし穴なのです。

■広告は目的により役割が違う

広告のその目的により役割が異なります。例えば、商品・サービス・ブランドのことを知らない人に知ってもらうこと(認知)、おいしそう・使ってみたいと興味を持ってもらうこと、機能を詳しく伝え買ってもらうこと、一度買ってもらった人にリピーターになってもらうこと、まわりの友達に進めてもらうこと、などなどです。これらの例はAISASの流れで挙げてみましたが、広告は5段階のそれぞれで役割が異なります。

ここから導かれる考え方として、検索連動型広告も手法としては有効であるが、かと言ってそれだけでは不十分ではないということ。すなわち、すでに検索キーワードレベルで興味・関心を持っている人への広告としての役割を持っている一方で、興味・関心を生み出す役割の広告が別に必要になる。

■セレンディピティと共感

最近読んでおもしろかったキュレーションの時代 「つながり」の情報革命が始まる(佐々木俊尚 ちくま新書)にセレンディピティという言葉が出てきます(p.175)。これはserendipityという「偶然に素晴らしい幸運に巡り合ったり、発見をすること」を意味する英単語のことですが、著者の佐々木氏によれば、ネットの世界でのニュアンスとしては、「自分が探していたわけではないけれども凄く良い情報を偶然見つけてしまう」ことだと説明されています。

広告の視点で考えると、従来はこのセレンディピティを生み出していたのは、ブランド露出に貢献するマスメディアが担っていたように思います。TVCMで思いがけないモノを初めて知り(セレンディピティ)、店頭で見つけついつい買ってしまったみたいなプロセスです。個人的に思うのは、日本の広告費:5兆8427億円(日本の広告費2010|電通)のうちTV広告は依然として30%近い1兆7321円を占め、一方のネットは増加傾向とはいえ13%程度(7747億円)なのは、ここにも要因があるのではということです。

となると、ネット広告において、検索連動型では捉えられない「興味・関心を生み出す」ための広告、セレンディピティを生み出すような広告が今のところ足りない要素となります。ここに対するヒントは、同じく電通が2011年1月に発表したSIPSモデル(図2)にあるのではと思っています。

Source:SIPSモデル|電通から引用

電通によれば、SIPSモデルはAISASから進化したソーシャルメディアの視点を重視し、生活者の行動を深掘りした概念と説明されています(注.電通によればSIPSはAISASにとって代わるものではなくAISASはなくならないとしている)。ヒントとはSIPSの、特に「共感する(Sympathize)」の部分。先ほどセレンディピティとは偶然に凄く良い情報を見つけると書きましたが、自分にとってセレンディピティなことは共感につながると思っています。であればいかに消費者の共感を生み出すか、それを広告でできるかが検索連動型広告にはないピースとなります。

ただ、共感を生むのは必ずしも広告である必要はなく、それは前述の佐々木氏の言う、膨大な情報から選び意味づけをしてくれるキュレーターかもしれず、単に友人のお勧めなのかもしれません。そういえば、「フェイスブック 若き天才の野望 (5億人をつなぐソーシャルネットワークはこう生まれた)」(デビッド・カークパトリック 日経BP社)という本にはこんな記述がありました。『グーグルのアドワーズ検索広告は「要求を満たす」。対照的に、フェイスブックは要求を生み出す。(ザッカーバークたちの)グループはそう結論を出した。』(p.379)。AISASのモデルに当てはめると以下のイメージです(図3)。


要求を生み出すためには多数ある広告手法をどう組み合わせるか(クロスメディア)、あるいは従来の広告の概念とは違う、例えばソーシャル性を取り入れていくのか、企業側だけではなく消費者をどう巻き込んでいくのか(SIPSの「参加する(Participate)」)。このあたりは個人的にもとても興味がありますし、今後どう進化していくのかが興味深いところです。


※参考情報

検索連動型広告がもたらした「悪しき」広告観|Adver Times(アドタイ)
日本の広告費2010|電通
SIPSモデル|電通


キュレーションの時代 「つながり」の情報革命が始まる (ちくま新書)
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2011/02/20

リアルタイムウェブとチェックインの可能性を考える

「チェックイン」と言えば、数年くらい前であればホテルへの入館手続きであったり、飛行機への搭乗手続きを表す言葉でした。ところが、ここ最近は、Foursquareなどの位置情報サービスを使って、その場所に訪れたことを指すようにもなってきました。位置情報サービスでは、チェックインをすることでGPSからその場所を特定します。同サービスの特徴は、その情報をツイッターなどのソーシャルメディアを通じて友人に知らせることができたり、訪れたお店にチェックインをすればお店によっては割引クーポンをもらえたりする点、あるいはゲームの要素が取り入れられている点にあります。

■様々なチェックインとその本質

チェックインをするのは場所だけにはとどまりません。チェックインの考え方を応用すれば、例えば自分が買ったものなどにも適用できます。これはすでにSwipelyBlipplyなどのサービスで実現されています。ユニークな存在としては、今飲んでいるビールにチェックインをするというUntappdなんていうのもあります。目の前にあるビールをリストの中から選びチェックインすることで、自分が今ビールを飲んでいることを友人に伝えることができるサービス。実際にUntappdのページを見てみると、たくさんの飲んでいる発信がフィード上を流れています。

では、チェックインという概念の本質はどこにあるのでしょうか。それは、○○に訪れた・△△を買ったという「今自分がしている行為の可視化」だと思います。あるいは趣味嗜好の可視化と言ってもいいかもしれません。

■リアルタイムウェブが成立する3つの要素

それでは、なぜ人はこのようにリアルタイムで情報を発信するようになったのでしょうか。これに関しては、「リアルタイムウェブ-「なう」の時代」(小林啓倫 マイコミ新書)という本で書かれていることが参考になります。この本では情報がリアルタイムに伝わるウェブを「リアルタイムウェブ」とし、リアルタイムウェブが登場した背景には3つの要素があるとしています。3つの要素とは、ウェブ技術の進化、モバイル技術の進化、社会環境の進化(図1)。
出所:書籍「リアルタイムウェブ-「なう」の時代」

ウェブ技術の進化とは、例えば上記のようなFoursquareやSwipelyであったり、あるいはツイッターやフェイスブックもそうです。これらのウェブ技術の進化により、情報発信の速報性は既存のウェブサービスにはないレベルでのリアルタイム性が実現されました。

モバイル技術の進化も大きく寄与しています。いくらリアルタイムで発信できるようなサービスが出てきても、それをリアルタイムで利用できなければ宝の持ち腐れになってしまいます。モバイル技術の進化は、私たちがいつでもどこでもウェブにつながる環境を与えてくれました。位置情報サービスで言えば、その場所でその時に情報を発信することに価値があり、これが家に帰ってからパソコンを立ち上げて「○○へ行ってきた」では遅いのです。モバイルにおいては、スマートフォンによるスムーズな操作性は各種アプリの登場も、リアルタイムの発信を促進したのではないでしょうか。

3点目の社会環境の進化とはなんでしょうか。同書によれば、ポイントは「情報にスピードを求める人々の登場」と「プライバシー意識の変化」。スピードを求めるとはいきつくのはリアルタイムでの情報の送受信です。プライバシーへの意識については、日本でもツイッターやフェイスブックの登場で、それまでなら公にすることはなかった情報まで公開されています。本名、顔写真、経歴、趣味などであり、または自分が訪れた場所、買ったものも然りです。

3つの要素の詳細は本書に書かれていますが、以上のようなリアルタイムでの情報発信・共有ができるウェブサービスの登場、いつでもどこでもウェブにアクセスできるモバイル端末、リアルタイムでの情報共有に価値を見出した人々の増加。こうした条件により、リアルタイムウェブが成立すると、著者である小林啓倫氏は言います。

■メディアチェックイン

チェックインの概念は、まだまだいろんな可能性があると感じます。個人的に興味深いのは「メディアチェックイン」。いずれも海外のサービスですが、テレビ番組へチェックインするというコンセプトのものはいくつか存在します。具体的には、MisoPhiloComcast’s Tunerfishなど。そして最近知ったサービスの「IntoNow」(図2)。これはIntoNowというiPhoneアプリで、テレビを見ている時にアプリ上のボタンを押すことで、音声からアプリが番組を認識し、ツイッターやフェイスブックで共有も可能です。

IntoNowの画面

引用:TechCrunch

■IntoNowの番組認識

IntoNowは、音声からの番組認識がすごいです。同社独自のSoundPrintという技術を使っているようで、簡単に書くとアプリが収集した音声とIntoNow社が独自に構築した番組情報のデータベースと照合し、数秒内に認識させるというもの。このデータベースはリアルタイムで更新され続けており、TechCrunchの記事(IntoNow Can Hear What You’re Watching On TV. The Media Check-In Game Just Changed.)によれば、同社では全米の130チャンネルの番組を24時間365日収集し、そのデータ量は1億4000万分、年に換算すると約266年相当の時間です。このような膨大な量の番組がインデックス化されデータベースに保管されているとのこと。

実名Q&AサイトのQuoraでは、IntoNow社の技術者であるRob Johnson氏が「How does IntoNow recognize shows that are airing live?」(IntoNowは生放送の番組をどのように認識するのか?)という質問トピックに回答しており、その中で、この技術について魔法のようだ(as a little bit of a magic)と表現しています。権利上の問題で新しいDVDの対応はまだのようですが、今後はあらゆる映像コンテンツをその対象としていくはずです。

■メディアチェックインとテレビ

実はテレビとツイッターなどのソーシャルメディアは相性は悪くないと思えるところがあり、というのも、時節ツイッターのタイムラインを見ていると、複数の人がテレビを見ていることや番組内容について、リアルタイムでツイートしている時があります。確かにネットによってテレビ視聴時間は奪われている側面もあると思いますが、一方で、それでも人々がテレビを見る時間は一日あたりでは3時間弱もあります(図3)。
出所:「メディア定点調査 2010」(メディア環境研究所)

また、テレビ広告のマーケットは2009年は1兆7,139億円であり(電通調べ)、減少傾向とはいえ依然として広告費全体の5兆9,222億円の3割弱を占めています。IntoNowは現在のところアメリカだけのiPhone限定アプリですが、メディアチェックインというソーシャル性を活かしTV番組あるいは広告と連動すれば、これまでとは違ったテレビの価値が出てくるかもしれません。もちろん、良質なテレビ番組というコンテンツの提供が大前提ですが。


※参考情報

○ローカルチェックイン
Foursquare

○買ったものへのチェックイン
Swipely
Blipply

○ビールへのチェックイン
Untappd

○メディアチェックイン
Miso
Philo
Comcast’s Tunerfish
IntoNow

○その他
IntoNow Can Hear What You’re Watching On TV. The Media Check-In Game Just Changed.|TechCrunch
How does IntoNow recognize shows that are airing live?|Quora
メディア定点調査 2010|メディア環境研究所
た2009 年(平成 21 年)日本の広告費|電通


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2011/01/23

ポケベルのブームとソーシャルという功績




2011年の今から15年前の1996年当時、女子高生を中心に大ブームを巻き起こしていたのが、ポケベルことポケットベル (無線呼び出し) でした。

今回のエントリーでは、ポケベルを取り上げます。ポケベルブームの背景、当時の状況、ポケベルの功績は何だったのかを書いています。

2011/01/21

これからの「シェアと評判」の話をしよう

わたしだけの「所有」からあなたとの「共有」へ。書籍「シェア <共有>からビジネスを生みだす新戦略」では、消費システムが変わる歴史的なターニングポイントに私たちはいると書かれています。今回は、「シェア」という本を読んで考えたことを中心に書いています。

■3つのコラボ消費

本書では、共有(シェア)される消費システムを「コラボ消費」という、コラボレーション+コンサンプションから作られた言葉で表現しています。そして、コラボ消費には大きく3つのカテゴリーがあるとします。すなわち、1.プロダクト=サービス・システム(PSS)、2.再分配市場、3.コラボ的ライフスタイル(表1)。

出所:「シェア <共有>からビジネスを生みだす新戦略」

■我慢から便利へ

さて、上記の例を見ると、コラボ消費は特筆すべき概念ではないように思えるかもしれません。確かに、私たちには、日本語特有の「もったいない」という言葉であったり、近所へのおすそ分け、兄弟間でのお下がりなどがあり、昔から普通に見られるものでした。あるいはDVDレンタルや書籍・ゲームなどの中古、またはフリマなど、不特定多数の人との間でも行われています。

このように、すでに私たちの身の回りに存在しているコラボ消費ですが、個人的に思うことに、レンタルや中古品の利用は従来はどちらかというと消費の主流ではなかったという点があります。つまり、中古ではなく新品を買うこと、あるいはレンタルではなく自分の物として所有することがこれまでの主流で、中古品を積極的に利用することはどこか「かっこよくない」というイメージを与えていたのではないでしょうか。レンタルや中古品を「我慢」して利用してきたように感じます。

しかし、本書を読んであらためて思ったのは、こうした潮流に変化が起こってきたのではないかということです。個人的に感じるのが中古品であっても、場合によっては満足度の高い購買ができていることです。私はよくアマゾンで本を買うのですが、少し古い本などを探していると、新品は取り扱っておらず中古品でしか買えないことがよくあります。そして実際に中古の本を買いますが、ほとんどの場合、自分の欲しい本が手に入り読むことができるという満足感が得られます。レンタルの場合も同様で、ずっと所有しているよりも必要な時だけ利用するほうがむしろ便利なのではないかと思います。

■間違った場所から正しい場所へ

本書で印象的だったのは、「世の中にいらないものはなく、使えるものが、ただ間違った場所にあるだけ」という表現です。これは、ある物に対して自分には必要がないけれど、他の誰かにとっては欲しいものだということを言っています。別の表現をすれば、ある物に対して供給と需要がうまくマッチングしていない状況を指しています。

ここにネット、特に人と人のつながりが無数につくられるソーシャルネットワークが介することで、需要と供給のマッチングがこれまで以上に起こってくるのではないかと思います。上記の表現で言い直せば、使えるものが正しい場所に移るということ。個人的に、インターネットの本質は「ネットワーク上の双方向性」と「個の情報発信」だと捉えていますが、このような特徴を持つネットが、人々の物に対する「いらない」と「欲しい」を結びつけます。その結果、こんなふうに考えるかもしれません。「所有するより必要な時だけ利用しその分だけお金を払えばいいのではないか」と。「所有」よりも「共有」にメリットを感じるようになるのです。

いくつかのシェアビジネスを挙げておきます。まずアメリカ。世界最大のカーシェアリングサービス「Zipcar(ジップカー)」。近所の人と貸し借りをサービス化した「Neighborgoods(ネイバーグッズ)」。お下がりを共有するサービス「ThredUP(スレッドアップ)」。そして日本。使っていない時だけ自分の車を貸し出すカーシェアリングの「CaFoRe(カフォレ)」。ツイッターを通じてモノをあげたりもらったりすることができるサービスの「Livlis(リブリス)」などです。

■「お金」からこれからの「評判」を考える

それでは、共有という考え方がもっと一般的になり、人々がよりシェアをするようになるとどうなるのでしょうか。「シェア」という本には、あるおもしろい示唆が書かれていました。それが「評判の口座」というものです。

何かをシェアするためには自分一人ではできなく、シェアをする相手が必要になります。そしてシェアは相手とのお互いの信用のもとで成り立っています。ということは、他人からの信用や評価、評判がある人ほど、ますますシェアすることができるようになると本書では指摘しています。こうして出来上がっていくのが「評判の口座」で、信用の上に成り立っているシェアに参加できるかどうかを判断するカギになるとも書かれています。

ここで思ったのが、お金と似ているなということです。物々交換の時代、人々の間で取り引きがしやすいようにとお金という仕組みが生まれました。それまでは個々人の相対的な評価(価値)で物々交換がされていたのが、お金により物やサービスの価値が定量的に判断できるようになったのです。

これと同じことが、信頼や評判でも起こるのかもしれません。それが、「評判の口座」という考え方だと思いました。相手のことが信頼できるかどうか、あるいはどの程度信頼できるかどうかは、実は人それぞれで判断されているのではないでしょうか。これは、上記の物々交換の時と同じ構図です。もし評判の口座、つまりどれだけ信頼できるかが定量的に判断できるようなものが生まれるなら、もしかしたら、シェアされる世界では評判はお金のような存在になるのかもしれません。

■最後に

去年の後半くらいからよく目にする言葉に、「断捨離」というものがあります。断捨離とは、もともとはヨガの「断業」、「捨行」、「離行」という考え方に由来するようで、その意味は、不要なモノを断ち、そして捨てることで、モノへの執着から離れて身軽で快適な生活を手に入れようというものです。こうしたことからも、無駄なものを所有をしない暮らし方は少しずつ広がってきているように感じます。


シェア <共有>からビジネスを生みだす新戦略
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「What's Mine Is Yours」紹介ムービー

http://www.youtube.com

※参考情報
Zipcar(ジップカー)
Neighborgoods(ネイバーグッズ)
ThredUP(スレッドアップ)
CaFoRe(カフォレ)
Livlis(リブリス)

2010/11/13

ソーシャルはユニバースかマルチバースか

11月4日にソフトバンクモバイルとミクシィは、「ソーシャルフォン」サービスの提供を開始すると発表しました。

■ソーシャルがモバイルのベースに

発表内容を見ると、「ソーシャルフォン」サービスは、mixiのさまざまな機能とスマートフォンの機能を連動させることで、友人・知人とのコミュニケーションを、より便利に楽しんでいただけるスマートフォン向けのアプリケーションサービスです、とあり、2011年2月より開始するようです。スマートフォンの電話帳とmixiの友人データが自動的に同期するなど、これまでの「スマートフォン+SNSアプリ」とは異なり、注目に値すると思っています。(とはいえ、買うことはないかと思いますが)

SNS世界最大手のFacebookは、世界でユーザーが5億人を突破し現在も増え続けているようです。CEOのZuckerberg氏はFacebookケータイについてあるインタビューで次のように語っています。(出所:TechCrunch) Our whole strategy is not to build any specific device or integration or anything like that. (中略) Our strategy is very horizontal. We’re trying to build a social layer for everything. (中略) So I guess, we view it primarily as a platform. Our role is to be a platform for making all of these apps more social,  英語部分をすごく簡単に言ってしまえば、Facebookケータイではなくプラットフォームをつくりたいとのこと。

また、別の記事(Scobleizer)によれば、Facebookがソーシャルフォンそのものを開発しないであろう理由として、以下を挙げています。 Facebook is so powerful that mobile companies are forced to build their own Facebook apps, after all, who would buy a phone that doesn’t have Facebook today?  すでにたくさんのケータイにはフェースブックのアプリが入っており、故に、フェースブック自身がケータイを開発する必要がないことを示唆しています(記事ではこれ以外にも開発しない理由が書かれています)。

ソーシャルケータイをリリースするmixi、自らは開発しないと説明するFacebook。どちらの戦略が正しいかは現時点ではわかりませんが、いずれにしてもSNSなどのソーシャルグラフ(人間関係)をモバイルであたかも身に着けるような方向性に進んでいるように思います。上記のmixiフォンではついに、SNSのデータが電話帳に同期します。これまでは、モバイル機能の1つでしかなかったソーシャルが、ソーシャルをベースとしたモバイルの登場です(図1)。



■ソーシャルは1つになるのか?

さて、私たちは複数の人間関係を持っています。家族、彼氏・彼女、友人、バイト仲間、仕事関係、などなどです。ここで、いくつかの人間関係を下図のようなマトリクスで整理してみます(図2)。



リアル世界では、これまでは自分の持つ人間関係は別々に存在していました。しかしSNSなどの登場により人間関係がSNS上でつながり、自分に関係ある人たちがフラットに並びつつあるような気がします。今後ますます多くの人がSNSを利用した場合、そこには仕事の同僚もいれば、幼馴染もいたりとか、1つの大きな人間関係がソーシャル上に存在することになっていくことも考えられます(図3)。いや、もしかしたら、ビジネスライクなSNS、友達用のカジュアルなSNS、などと、複数のソーシャルを持つのかもしれません(図4)。

ユニバース型SNS




マルチバース型SNS



人間は社会的な動物です。人とつながりたいという気持ちは普遍的な感情だと思います。これは何もSNSができたからでは決してなく、大昔からずっとそうだったはずです。人間の三大欲求には含まれませんが、人間の本能に近い欲求なのではないでしょうか。ソーシャルというキーワードはますますいろんなところに入り込んでいきそうです。


※参考情報

「ソーシャルフォン®」サービスを提供開始 (ソフトバンクモバイル株式会社)
http://www.softbankmobile.co.jp/ja/news/press/2010/20101104_03/index.html

Interview With Mark Zuckerberg On The “Facebook Phone” (TechCrunch)
http://techcrunch.com/2010/09/22/zuckerberg-interview-facebook-phone/

Why Mark Zuckerberg would be an idiot to announce a hardware device today (scobleizer)
http://scobleizer.com/2010/11/03/why-mark-zuckerberg-would-be-an-idiot-to-announce-a-hardware-device-today/


2010/11/02

RSSとソーシャルフィルターはひとまず共存で

■様々なソーシャル

ソーシャルという言葉があります。個人的に感じるのは、特に今年は様々なものにソーシャルという言葉が付いたことです。これまではSNSのソーシャルくらいでしたが、ソーシャルゲーム、ソーシャルメディア、SNSなどでの人間関係を表すソーシャルグラフ、ソーシャルブックマーク、などです。

ソーシャルサーチと言う検索もあります。これは、世間の評判や意見、あるいはユーザーの趣味や嗜好を反映させた検索のことです。あるいは、ソーシャルフィルターと呼ばれるものもあります。ソーシャルフィルターとは、興味関心が似ている自分の選んだ人によって情報を選んでもらい、結果的に多種多様な情報から必要なものを手に入れることだと思っています。例えば、自分の趣味や考え方が近い人をツイッターでフォローすれば、その人からの情報は自分のアンテナにひっかかりやすい、という感じです。

■RSSの役割は終わった?

2か月くらい前だったかと思いますが、「RSSの役割は終わったのでは」という話がネットで話題になっていました。その理由として、ツイッターやSNSなどのソーシャルメディアの登場でRSSリーダを使わなくても情報を収集できる方法が出てきたためで、例えばツイッターをうまく活用すれば、自分が欲しい情報も入ってくるし、自分の興味範囲外の思わぬ情報が入ってくることもあるからです。普段ツイッターを使っているのでこの説明は理解できますし、故に、わざわざRSSリーダーを使わなくても情報が入ってくるという話だと思います。RSSがソーシャルフィルターに取ってかわる、または、ソーシャルサーチの台頭はイメージとしては、下図のようになりそうです(図1)。


本当に、ソーシャルサーチではない従来型の検索やRSSは不要なのでしょうか?個人的には、両方とも引き続き必要であると思っています。

まず、能動的な情報収集である検索ですが、確かにソーシャルサーチは場合によっては有効なツールです。自分の嗜好や趣味に合わせた検索結果が出てくる、例えば、自分の興味に合った書籍が検索結果の上位に出てくれば、その検索結果には満足できそうです。一方で、このような検索は悪く言えば、人間的なバイアスが発生します。つまり、自分の嗜好や意見に近いものばかりでは一様な検索結果となり、多様な情報に触れる機会を失ってしまうかもしれません。

■RSSとソーシャルフィルターは共存する

次に、RSSですが、確かにツイッターやFacebookをうまく活用できれば、それだけでも十分すぎるくらいの情報が手に入ることができるかもしれません。実際に先日、RSSをあえて一日使わないことを試してみましたが、大きな問題はありませんでした。しかしそれでも、RSSは現在のところ、自分にとっては不可欠なツールなのです。なにもこれはソーシャルフィルターを否定するという意味ではなく、むしろ、RSSとツイッターなどのソーシャルフィルターはお互いを補完しながら使えるツールだと考えてます。ここで、RSSとソーシャルフィルターをいくつかの項目で整理してみます(表1)。


この表を少し補足すると、RSSはブログやサイト単位で登録をする一方で、ツイッターやSNSは人というアカウントごとの登録です。Whoを登録するソーシャルフィルタ-のほうが多様な情報が入ってきます(ニュース記事以外にも、その人の行動などのつぶやき等)。またRSSはストック型の情報管理に対して、ソーシャルフィルターはフローのイメージです。

RSSを重宝している理由の1つに、RSSはサイトの文字や画像をRSS画面上で見ることができる点にあります。これがツイッターだと140文字という文字数制限とiPhoneという画面サイズの制約からどうしても、リンク先に飛ばざるをえない状況がよくあります。特に屋外ではリンク先に飛ぶという時間が意外に長く感じられ、スターをつけたりInstapaperに保管したりして、あとから読んでいます。でもRSSならその場でさくさく読めて便利です。

ソーシャルフィルターは、RSSに比べてフィルターの精度がどうしても劣るような気がしています。これは、自分のソーシャルフィルターの使い方が甘いだけなのかもしれませんが、どうしても相対的に「広く浅い」情報だというのが現在の印象です。ただ、ツイッターの「広い」情報は時として思いがけないものであり、これはこれでおもしろいと思っています。

今のところの結論としては、RSSとソーシャルフィルターは共存する、ということになります(図2)。マトリクスの4つの象限とも、自分にとっては必要な情報収集方法なのです。


今回あらためて思ったのは、ソーシャルフィルターとはまだまだ発展途上なものだということです。もちろん、もうすでに使いこなしている人も多くいると思いますが、個人的には、RSSの活用に比べ、ツイッターやSNSの利用は試行錯誤が続いているように思います。

ツイッターやFacebookは活用方法において工夫の余地が大きいと思います。また、APIにより、これまでになかったような便利なアプリやサービスが開発される可能性があります。その時は、もしかしたらRSSとソーシャルフィルターがハイブリッドされ、もっと便利な情報収集ツールになるのかもしれません。


2010/08/15

梅棹忠夫とドラッカーから考える情報革命のこれから

今回のエントリー記事では、梅棹忠夫、ドラッカーのそれぞれの著書から情報革命にいたる歴史を大きな流れで整理し、あらためて情報革命について考えてみます。


■人類の産業の展開史 (梅棹忠夫)

梅棹忠夫の著書「情報の文明学」(中公文庫)によると、人類の産業の展開史は次の三段階を経たとしています。(1)農業の時代、(2)工業の時代、(3)精神産業の時代(以下、情報産業とします)。「情報の文明学」がおもしろいのはここからさらに進めて、この3つの時代の生物学的意味を考察している点です。ここで言う生物学的意味というのは、受精卵が発生から自らが展開していく過程のことで、具体的には人間の体が形成されるまでの、内胚葉、中胚葉、外胚葉の3つの胚葉です。以下、本書から抜粋してみます。

(1)農業の時代
生産されるのは食糧であり、この時代は人間は食べることに追われている。農業の時代を人間の機能に置き換えれば、内胚葉からできる消化器官系統の時代であり、三分類で言えば内胚葉産業の時代である。(p.133)

(2)工業の時代
工業の時代の特徴は生活物資とエネルギーの生産。人間の手足の労働を代行し、これは筋肉を中心とする中胚葉諸器官の機能充足の時代を意味する。よって、工業の時代とは中胚葉産業の時代である。(p.133)

(3)情報産業の時代
外肺葉系の諸器官は皮膚や脳神経系、感覚諸器官を生み出す。情報は感覚、脳神経に作用し、情報産業の時代は外肺葉産業の時代である。(p133-134)

以上について著者の梅棹忠夫は、食べることから筋肉の時代へ、そして精神の時代へと産業の主流が動いてきたとし、三段階を経て展開する人類の産業史は、「生命体としての人間の自己実現の過程」とも捉えることができると総括しています。(p.134)


■産業革命とIT革命 (ドラッカー)

次はドラッカーです。ドラッカーは著書「ネクスト・ソサエティ」で産業革命とIT革命について比較し、次のような内容を書いています。

(2)産業革命
産業革命が、実際に最初の50年間にしたことは産業革命以前からあった製品の生産の機械化だけだった。鉄道こそ、産業革命を真の革命にするものだった。経済を変えただけでなく、心理的な地理概念を変えた。(p.75-76)

(3)IT革命
今日までのところ、IT革命が行なったことは、昔からあった諸々のプロセスをルーティン化しただけだった。情報自体にはいささかの変化ももたらしていない。IT革命におけるeコマースの位置は、産業革命における鉄道と同じである。eコマースが生んだ心理的な地理によって人は距離をなくす。もはや世界には1つの経済、1つの市場しかない。(p77-79)


■インターネットの2つの特徴

梅棹忠夫の言う情報産業、あるいはドラッカーの言うIT革命を語る上で、欠かせない存在はインターネットだと思います。もはや自分の生活や仕事においてなくてはならない存在ですが、私はインターネットの特徴は「双方向性」「個の情報発信」だと考えています。この2つの特徴の例としては、例えばmixiやFacebookのようなSNSやツイッター、あるいはソーシャルゲームなどで、ネットによりこれまでにはなかった「つながり」が実現しています。


■これまでになかった「つながり」とは

これまでになかった「つながり」をもう少し掘り下げてみます。例えば前述のSNS。SNS上では、過去から現在に至る自分の人間関係がフラットに並んでいます。例えば、小中学校時代の友達、高校や大学の友達、社会人になってからの知人もいれば、趣味を通して知り合った友人もいます。また、お互いに会ったことがない人でも、SNS上でつながることもでき、これら友人・知人がSNS上に並んでいます。SNSや携帯がなかった時には、中学校を卒業すれば次に会い近況を話す・知る時は5年後の成人式だったかもしれませんが、SNSでつながっていれば、(全てではないですが)お互いの状況を確認することもできます。

SNSが長い時間軸にわたる人間関係が並び情報がストックされるイメージな一方で、ツイッターはリアルタイムでその時その瞬間でつながるフローのイメージです。お互いがツイッターを使っているという前提はありますが、ツイッターで「○○なう」とつぶやけば状況が、楽しいやおいしいとつぶやけば感情が瞬時に伝わります。もしネットがなければ、「昨日、××を食べておいしかった」などとなり、おいしいという感情がその場にいない友人にリアルタイムでつながることはできないでしょう。


■情報革命のこれから

上記のドラッカーが言及するIT革命も考慮すると、eコマースでは買い手と売り手の距離をなくしましたが、ネットによる「つながり」ではこれまでにはなかった人と人との距離感を生み出しているように思います。やや大げさかもしれませんが、既存の人間関係の距離感を破壊していると感じます。

ここまでは「つながり」について人と人との場合を見てきましたが、「双方向性」と「個の情報発信」は何も人だけとは限らないと思います。モノと人やモノとモノのつながりも考えられます。例えば、デジタル家電と人がネットを媒体につながることや、異なる複数の家電が情報のやりとりをする可能性も十分にあります。単なる想像ですが、外部から携帯で連絡すれば、冷蔵庫と台所と電子レンジが連携し勝手に料理を作ってくれるとか、自動車と自動車がつながれば車同士の交通事故が無くせるかもしれないなど、いろんな可能性があります。

梅棹忠夫は先述の「情報の文明学」において、工業の時代になり農業は飛躍的に生産性が向上し、情報産業の時代でも工業だけでなく農業も大発展を遂げた書いています。ネットによるこれまでにない人と人、人とモノ、モノとモノがつながることで、情報革命はこれからも進化が続きそうです。


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書いている人 (多田 翼)

複数のスタートアップ支援に従事。経営や事業戦略のコンサルティング・アドバイザー・メンター、プロダクトマネージャー、マーケター。前職は Google でシニアマーケティングリサーチマネージャー、現在は独立 (詳細は LinkedIn または Facebook をご覧ください) 。

1981年 (昭和56年) 生まれ。名古屋出身、学生時代は京都。現在は東京23区内に在住。気分転換は毎朝の1時間のランニング。note も更新しています。

内容は個人の見解です。