#マーケティング #営業 #組織
今回のテーマは、営業とマーケティングです。
具体的な事例として食品メーカーの 「ニップン」 を取り上げ、どのように営業とマーケティングを一体化させ、成果を上げたのかご紹介します。
そして、営業チームとマーケティングチームが相乗効果を生むような関係性を築くために、具体的に何をすればいいのかを掘り下げます。
ニップンの営業
ニップン (旧 日本製粉) は、製粉技術を基盤とし、多様なパスタ製品や小麦粉などを展開する老舗企業です。
ニップンは最近だと、「オーマイプレミアム もちっとおいしいスパゲッティ」 というヒット商品を生んでいます。発売1年で累計5000万食を出荷するほどの成功を収めました。
ニップンは、マーケティング支援会社 「刀 (かたな) 」 と協業をしています。営業組織の大幅な変更も行い、お店の売場や小売のバイヤーを動かすよう営業力を強化しました (参考情報) 。
営業とマーケティングをひとつの組織で推進
ニップンでは、マーケティング推進部の配下にブランド営業企画チームを置き、営業とマーケティングの垣根をなくすよう組織を変えました。
営業担当者はマーケティング組織に所属し、ニップンは日々の営業活動と並行してブランド戦略を練り上げる体制を確立しました。マーケティングの情報がスピーディーに営業現場へ行き渡り、店舗バイヤーへの提案内容に一貫性が生まれます。
価格競争から 「価値提案」 への転換
ニップンは従来は、いくらで売るか、販促費はどのくらい投入するかといったコストをもとにした営業スタイルが主体だったといいます。
営業組織をマーケティング組織を一体化させたことで、マーケティング視点でのデータや顧客理解をもとに訴求できるようになりました。なぜこの商品は高価格帯でも売れるのか、消費者が欲しいと思うのか、具体的にどういう付加価値があるのかなどについて、自信を持って示せます。それにより、小売バイヤーの担当者から興味を引き出せるというわけです。
結果、比較的高い値段でもニップンのパスタ製品は、消費者が求めるパスタの食感に対して他にはない価値が理解され、お店での商品棚の確保と売上拡大につながりました。
このようにニップンの事例は、営業とマーケティングが組織としてひとつになり、部分最適ではなく全体最適を目指すことの重要性を示しています。
そこで、営業チームとマーケティングチームが良い関係を築き、一体となってビジネスを成功へ導くためには、どうすればいいかを見ていきましょう。
目指したい営業とマーケティングの関係
営業とマーケティングは、ビジネスが成長していくための両輪となる存在です。互いにお互いの役割を理解し、必要な場面で連携し合うことによって、部分最適ではなく全体最適を実現できます。
しかし、実際には担当範囲や評価指標が異なることで摩擦が生まれたり、コミュニケーション不足によってすれ違いが起こるケースも少なくありません。こうした状況に陥らないためには、営業とマーケティングの本質的な役割を理解しておくことが大切です。
営業の役割
営業の役割は、製品やサービスを直接顧客に販売し、売上を得ることです。
例えば小売店や卸事業者など、実際に商品を扱ってくれる取引先の状況を理解し、ニーズをくみ取り、最適な提案を行って、契約を締結するというのが営業に求められる役割です。
- 顧客 (流通や小売など) のニーズ把握
- 実際の製品の紹介やサービスのデモンストレーション
- 価格や条件などの交渉
- 契約の締結
こうした活動から、営業は会社に直接的な収益をもたらす存在です。
マーケティングの役割
一方、マーケティングの役割は、市場や消費者・顧客ニーズを理解し、製品・サービスの価値を広く伝えることです。具体的には以下のような活動が挙げられます。
- マーケットリサーチで顧客や競合、市場トレンドを把握
- 広告や SNS 、PR による製品・サービス認知度の向上
- 新規顧客の獲得や既存顧客のロイヤルティ強化
- ブランドイメージの構築と浸透・普及
ビジネスの長期的な成長を支えるのがマーケティングの役割です。
サッカーでたとえると
営業とマーケティングの関係は、サッカーにたとえるとわかりやすいです。
営業は最前線でゴールを決める FW (フォワード) です。マーケティングは攻撃を組み立て、ときには自らシュートを打つ MF (ミッドフィールダー) に相当します。
マーケティングの認知や購入意向を高めるパス回し (広告や SNS など) は、最終的にゴールを決める営業活動があってこそ真価を発揮します。マーケティング施策というパス回しだけに夢中になっていては得点にはつながらず、一方で FW である営業だけが突っ走っても、中盤からの効果的なパスが供給されなければゴールを奪うのは難しいでしょう。
チームの全員が一丸となってパスをつなぎ、ゴールを目指す。これが営業とマーケティングの連携で目指したい姿です。
部分最適ではなく全体最適の実現へ
それでは、ここまでの考察を踏まえ、営業とマーケティングの部門がうまく連携でき、部門ごとの部分最適ではなく全体最適を追求するためにはどうすればいいのでしょうか?
順番に見ていきましょう。
共通の目的設定
営業とマーケティングの連携を強化する際、共通の目的に向かっていくことが重要です。
そのためには、共通の目指すビジョンと目標を設定します。売上目標や市場シェア拡大など、会社としての全体的なゴールを明確にし、どのように連携すればそこへたどり着けるのかをのゴール達成への道筋を共有します。
ポイントは、営業とマーケティングの両部門の成功が他方の成功につながるということをお互いに認識することです。部門間の協力の土台が築かれます。
役割と責任の明確化
営業とマーケティングの役割が曖昧なままでは、どこまでを営業が担当し、どこからをマーケティングが担当するのか不透明になり、重複作業や対立を生む原因になりかねません。
そこで、営業とマーケティングの部門がどのような責任範囲を持っているのかを明確にすることが大切です。例えば、営業が得た小売からの情報はマーケティングの戦略や施策にも活かす、マーケティングからの市場データ、消費者分析、広告キャンペーンの結果を営業にリアルタイムで共有するというふうにです。
営業とマーケティングのお互いが、どんな情報をいつ、どのように共有するかをあらかじめ決めておくと、連携の質がグッと上がります。
トップのコミットとサポート
現場同士で連携を進める場合、ときには部門の壁や各種調整の難しさに直面することがあります。そこで経営層が営業とマーケティングの連携は会社の優先課題であるという方針を示し、トップレベルでコミットすることが重要です。
トップの決断として、ご紹介したニップンのように機構改革で営業組織をマーケティング部門の管轄に近い位置に移す、あるいは兼務でポジションを与えるなど、人事面での営業とマーケティングの一体化はトップのイニシアチブなくしては難しいでしょう。
トップの明確なサポートがあると、両部門の現場メンバーは後ろを振り返ることなく連携を進められます。
コミュニケーションの強化
営業とマーケティングで日常的なミーティングや情報共有の場を設けることも大切です。
ニップンでは、協業パートナーの刀との定例会議には営業社員も出席しているとのことです。新しい商品が生まれる商品企画から、商品開発後の販売まで一気通貫で営業とマーケティングが二人三脚で推進する仕組みをつくっています。
コミュニケーションの頻度と質が上がることにより、例えば、どの顧客がいまどんな課題を抱えているのか、どのキャンペーンがどのような反響を得ているのかが両部門で共有でき、問題が起きたときにもすばやく協力して問題解決への課題に対処できます。
成功・失敗体験の共有
営業とマーケティング部門の連携の成功事例を共有し、協力体制が良い方向に向かっている機運を高めるといいでしょう。連携による成功体験を全社的に共有し、良い取り組みをさらにブラッシュアップできるという好循環が生まれます。
また、うまくいったケースだけでなく、うまくいかなかった事例も含め、定期的な共有と振り返りを行うことにより、どの工程や手順に改善すべき問題があったかを明確にできます。結果として、連携の質が高まり、営業とマーケティングがお互いにサポートし合う体制が定着していくでしょう。
営業とマーケティングの連携を深めることは、一朝一夕に成し遂げられるものではありません。お互いの継続的な取り組みと忍耐も求められますが、うまくいけば企業全体や事業への恩恵は計り知れません。
まとめ
今回は、ニップンの営業組織の事例を取り上げ、学べることを見てきました。
最後にポイントをまとめておきます。
- 営業の役割は、製品やサービスを直接顧客に販売し、売上を得ること
- マーケティングの役割は、市場のニーズを理解し、製品・サービスの価値を広く伝えること
- 目指したい営業とマーケティングの関係は、お互いの役割を理解し、サッカーの FW と MF のように協力し共通のゴールを狙う関係性が理想
- 営業とマーケティングで部分最適ではなく、全体最適の実現するために以下がカギを握る。連携強化で企業全体のパフォーマンスが向上する
① 共通の目的や目標設定
② お互い役割の明確化
③ トップのコミットとサポート
④ コミュニケーション強化
⑤ 成功・失敗体験の共有
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