2012/02/18

Screenwise panel から考える Google の本質、貪欲なまでのデータ至上主義




以下のモデル図は、グーグルとユーザーの関係を簡単に表したものです。グーグルは、ユーザーに無料で検索・Gmail・YouTube などの様々なサービスを提供しています。




グーグルが得ているのは、膨大なユーザーデータです。それをさらなるサービスの利便性向上や、グーグルの主要事業であるネット広告事業に活かしています。

ユーザーは利便性を享受し、グーグルも集めたデータを有効活用し、収益化しているというウィンウィンが成立しています。


Google が集める個人データの価値


報道で、グーグルがユーザーから集めているデータの価値は、年間1人あたり50 ~ 5,000ドルの価値があるという話題がありました。日本円にすると4,000~400,000円 (1ドル80円) です。

参考:Who Would Pay $5,000 to Use Google? (You)|Real-Time Advice - SmartMoney


最大40万円の価値を持つデータに、お金を支払う価値があると考えているのが広告主です。広告主にとって価値があるのは、ユーザーデータにより自分たちのターゲットとする層に広告を出せることです。

収集したユーザーデータにこれだけの価値があるとすると、グーグルはこの金額 × ユーザー数分の売上を広告ビジネスから得ていることになります。

私たちは普段ネットを当たり前のように使っています。検索や Gmail などのグーグル提供サービスを利用しています。利用状況がデータとなり蓄積されると、私たちの利用データの価値は最大40万円になるというのは興味深いです。


Google の新しい取り組み


グーグルのビジネスモデルは、プロダクト利用者に無料でサービスを提供し、広告で稼ぐものです。

このモデルとは異なる取り組みが、話題に上がっていました。グーグルが直接ユーザーにお金を支払うという仕組みです。

ネット閲覧を追跡させてくれたら25ドル--グーグルがギフトカードを進呈|CNET Japan
Google が協力してくれた人に礼金を払って詳細な Web 利用実態調査を|TechCrunch Japan


ウェブ閲覧情報の提供者にお金を支払う


グーグルが始めるのは、データを提供するユーザーにお金を支払うことです。

具体的には、ユーザーが訪問するウェブサイト閲覧情報の提供者に対し、最大で年間25ドルを支払うとのことです。支払われるのはアマゾンギフトカードのようです。グーグルによると、協力許可してくれたユーザーに支払うのは 「我々なりの『ありがとう』の気持ちの伝え方」 とのことです。

追跡方法は、Google Chrome にブラウザ拡張システムがインストールされ、ユーザーの利用データを自動収集しグーグルに送信されます。収集目的は、人々がインターネットをどのように利用しているかを調査することとグーグルは説明しています。データから、自社製品およびサービスの向上を図るためだと述べています。

グーグルはさらに詳細なユーザーデータを集めようとしています。

専用のルーターをユーザーに配布し、自宅のネット接続環境に組み込んでもらう方法です。ルーターがより詳細にネット利用状況を記録する仕組みです (名称は Screenwise Panel) 。

また、特定のサイトに訪れた人にアンケート調査をすることもあるようで、これに協力してくれた人には、謝礼として最初に100ドル、その後は毎月20ドル支払うそうです。

ルーターを使うとクロームブラウザを使った追跡以上のかなりのデータが取れるのでしょう。おそらく、ウェブ利用のあらゆるデータがルーターで収集されると考えられます。もちろん、個人情報は匿名化され個人を特定しないなどの処置は取られるでしょう。

グーグルがユーザーに直接お金を支払って、ユーザーデータを集める取り組みを図にすると以下のようになります。




グーグルからのデータ収集調査に協力したい?


グーグルにデータ収集を協力し、専用ルーターを自宅設置すれば8000円、その後は協力し続ける限り毎月1600円がもらえます。単純計算で年間に27,200円です。

調査対象者になることは、意見が分かれるでしょう。「ウェブでの利用データは、すでに取られており、それにお金がもらえるなら協力してもいい」 と、「自分のウェブ利用履歴が取られるのはお金もらっても断る」 という考え方です。

協力してもいいと言う人には、単にお金がもらえちょっとした小遣い稼ぎになるというだけの人もいるかもしれません。


収集データの代表性


グーグルの取り組みは、一定規模の人たちからデータを集めない限り、有効に活用できないません。専用ルーターを配布するのは2,500世帯と書かれていましたが、まずは小規模で開始し、各種課題に目処がつけば対象世帯を拡大させるのでしょう。

このプロジェクトの課題は、協力する人の 「偏り」 がどの程度発生するかです。具体的には、いくら多くの人から協力許可を得てもその人たちが一部の偏った人たちだと、データの価値に疑問が生まれてしまいます。

協力する人が特定のサイトばかり利用する場合 (例: YouTube の利用が普通の人より多い) 、それがあたかも世の中全般のことのように見えてしまいます。そのデータを使った意思決定をミスリードする可能性があります。

専門的な表現をすると 「調査の代表性」 です。

もちろん、グーグルにとっては百も承知でしょう。そもそもグーグルは今回の事例のように礼金を払わない方法で普段からユーザーの利用データは集めています。それ以上のデータをあえて集めたいので礼金を直接ユーザーに支払うという形をとっているので、それに対するメリットとデメリットは十分に議論されての結論を出したはずです。

ユーザーが自分に関するデータで直接対価がもらえるのは成立すると思います。前提として、自分の個人データが 「誰が」 「何の目的で」 使うかを把握した上でということです。


※ 参考情報


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多田 翼 (書いた人)


外資系 IT 会社にてマーケティングリサーチ マネージャー (LinkedIn) 。

1981年 (昭和56年) 生まれ。名古屋出身。学生時代は京都。家族4人で東京23区内に在住、2人の子どもの父親。気分転換は毎朝 8km のランニングとピアノ。

書いている内容は、所属組織や会社の正式見解ではなく個人の見解です。