出典: 食品新聞
今回のテーマは 「商品やサービスの価値をお客さんにどうやって伝えるか」 です。体験のエンタメ化で価値を伝えようという話です。
おもしろいと思った 「冷凍食品の食べ放題レストラン」 から、マーケティングに学べることを見ていきましょう。
✓ わかること
- レンジで 「チン!するレストラン」 にキャンセル待ちが8000人
- オープンした狙い
- マーケティングに学べること
よかったら最後までぜひ読んでみてください。
チン!するレストラン
出典: 食品新聞
冷凍食品とアイスクリームが食べ放題のレストラン 「チン!するレストラン」 が期間限定でオープンしていました (2022年10月8日 ~ 23日) 。
場所は東京・秋葉原のヨドバシカメラマルチメディア Akiba で、8階のレストラン街でした。
約40メーカーが約200品目 (冷凍食品約150種類, アイスクリーム約50種類) を提供し、チャーハン、麺類、ハンバーグ、グラタン、から揚げなどを制限時間内に好きなだけチンして食べられるというレストランでした。
出典: ITmedia
午前11時 ~ 午後5時はランチタイムで90分制、午後5時 ~ 9時まではディナータイムで120分。料金はランチタイム1人1500円、ディナータイムは2500円でした (小学生以下は無料, 中高生は半額) 。
オープンした狙い
イベントを主催したのは日本アクセスです。食品の卸売業を手掛けている総合食品商社で、チルド品や冷凍食品を幅広く扱っています。
2013年から冷凍食品とアイスクリームの人気ナンバーワンを決める 「フローズン・アワード」 を開催していたり、公式サイトでは各商品のこだわりや開発の思いを動画で配信しているユニークな会社です。
では 「チン!するレストラン」 を開催した狙いを見てみましょう。
キャンセル待ちが約8000人! - レンジで 「チン!するレストラン」 がここまで話題を集めたワケ|ITmedia
日本アクセスのマーケティング部長である今津達也さんは、次のように話していました。
冷凍食品は便利でおいしいと評価してもらっている一方で、「保存料が入っているのではないか」 「体に悪いのではないか」 など、敬遠している方も一定数いるという課題がありました。
独自で調査したところ、1年間で冷凍食品を購入している人は全体の約4割で、残り6割は冷凍食品を購入していないというデータも明らかになっています。
しかし実際は、冷凍食品には保存料が一切入っておらず、安全な食品です。メーカー様の努力もあり、味もどんどんおいしくなってきています。
冷凍食品に対して正しい認識を持ってもらうための啓もう活動として、冷凍食品・アイスの人気投票を行うフローズンアワードを開催したり、冷凍食品の魅力を紹介するマンガを制作したりしてきました。情報だけで伝えるのではなく、実際に食べて理解してもらう機会を提供したいと考え、開催に至りました。
コロナ禍で試食の機会がなくなっていたため、いろいろな種類の商品を試せる場を目指しました。
主催者である日本アクセスには食品の卸売業だからこそ見えている 「冷凍食品の業界全体の問題意識」 がありました。
消費者からの冷凍食品へのイメージとして実際は安全にもかかわらず、「体に悪いのではないか」 という良くないイメージを持たれていました。各メーカーが企業努力で味もより良いものにしているのに歯がゆい思いをしていたわけです。
お客さんにチンして食べてもらう
課題への打ち手が 「チン!するレストラン」 です。
冷凍食品をただ食べてもらうだけではなく、期間限定のレストランでエンタメ性のあるイベントにしました。
現在はできていませんが、コロナ前はお客さまに商品を食べていただく機会は店頭での試食しかなかったため、そうではない新しい場を作りたいと考えていました。
裏面を見て商品の加熱方法などを理解してもらいたかったことや、試食で提供するのは面白みに欠けると考えていたこともあり、チン!するレストランは 「セルフで体験してもらうこと」 「食べ放題」 にこだわっています。
いろいろな商品を選べること、自分でチンする体験を楽しんでもらえるよう、エンタメ性のあるレストラン事業を採用しました。
学べること
では、今回の話から学べることを掘り下げていきましょう。
体験の解像度
冷凍食品の課題感は冷食への消費者からのイメージを良くすることでした。
「チン!するレストラン」 というイベントを開催し、「自分でセルフでチンしてもらう」 という体験に 「食べ放題」 とするエンタメ要素を入れたものにしました。
自分の好きなものを好きなだけ食べられるというお得感をもたらすだけではなく、冷凍食品の手軽さや便利さ、おいしさを体験してもらうことを狙っています。
注文してできあがった商品を食べる形式ではなく自分でレンジでチンするところがポイントです。冷凍食品の食事プロセスを丸ごと体験してもらえるわけです。
価値をどう伝えるか
今回の事例からの学びを一般化して表現をすると、「商品やサービスの利用・購入する価値を知ってもらうために、体験の機会を提供しよう」 です。
よくある方法で無料で試供品 (サンプル品) を配るやり方があります。
サンプリングは多くの人に手に取ってもらいやすい反面、商品の体験の一部しかできない場合があります。冷凍食品に当てはめればスーパーなどで冷食が小さなトレイに入っている試食をやっていたりしますが、この方法では自分でレンジで温めて食べるという一連のプロセスは体験できません。
それに対して 「チン!するレストラン」 では食べたいものを消費者が能動的に選び、レンジを使って自分でチンして食べるという体験が全てできます。体験をエンタメ化し冷凍食品の良くないイメージを払拭するというもともとの課題感に合ったアプローチです。
今回の事例には見込み客に体験機会を提供し商品を使えば良さがわかってもらえる、逆に言えば使ってもらわないと価値が伝わらないという課題へのヒントがあります。
まとめ
今回はユニークなイベント 「チン!するレストラン」 を取り上げ、マーケティングに学べることを見てきました。
最後に学びのポイントをまとめておきます。
✓ 価値の伝え方
- 良いものなのに使ってもらわないと価値がわからない時は、商品を体験できる機会を提供するといい
- 商品の体験の一部ではなく、なるべく全体のプロセスを体験してもらう
- 体験の機会を見込み客に提供し、時には体験のエンタメ化を入れて、商品やサービスの利用・購入する価値を伝えよう
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