投稿日 2012/07/14

誰も幸せにしない 「自分がやった方が早い病」 を克服する仕事の任せ方


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対応しきれない仕事量を抱え、残業をしないと終わらない状況はビジネスパーソンであれば、誰しもが経験のあることです。

自分でやった方が早い病 という本は、全てを抱え込むことの原因として 「この仕事は自分でやった方が早い」 と思うことを問題と捉えます。



本書に書かれているのは、「自分でやった方が早い病」 の原因と治療法、そもそもなぜ克服しなければいけないのか、本当の仕事の任せ方や人の育て方です。


自分でやった方が早いと思う要因


「自分でやった方が早い」 と考えてしまうことは誰しもがあるでしょう。本書では特に仕事ができる人に多いとありますが、誰もが一度や二度はそう思ったことはあるはずです。

まわりや部下に任せてみたけど期待通りの結果にならない、返ってくるのが遅い、結局自分で修正するので二度手間だと思う、任せるための説明している時間がもったいない、と思えてきます。結局、最初から自分でやったほうが早かったという経験です。

本書では、「自分でやったほうが早い」 と思う要因は大きくは、2つあると言います。

  • まわりよりも自分ができてしまうから
  • お願いするのが上手くない。任せるのも相手にも悪いと思ってしまうから


本書の問題意識


この本のそもそもの出発点となる問題意識は、次の通りです。

  • 自分でやったほうが早いスタイルを続けていても、いずれ限界がくること
  • 単に成長が鈍化するだけでなく、仕事を抱え込みすぎといずれは心身に支障をきたし、まわりにも迷惑かける
  • たとえ自分一人で成功を収めたとしても、それは本当に幸せな人生なのか

本書は、単にまわりに仕事を振るノウハウやテクニックの話では終わりません。

なぜ 「自分でやったほうが早い病」 を克服しなければいけないのか、そのためにはどう考え方を変えていかなければならないかについて書かれています。

ここからは、なぜ克服しなければいけないのか (why) 、どのように克服するか (how) 、病を克服したあるべき姿 (what) について書いています。


Why: なぜ 「自分でやったほうが早い病」 を克服しなければいけないのか


本書のターゲット層は、ビジネスパーソンとしてある程度は一人前になってきて、これからはリーダーだったりマネージャーの役割も担う人です。

著者は、リーダーが 「自分でやったほうが早い」 と思うことは失格と言います。

なぜならいつまでも1プレイヤーとしての一人分の仕事しかできない状態が続くからです。

自分が本来やるべきこと以外にもリーダーが一人で抱え込むことは、まわりのメンバーも含めたチームの成長が望めません。そればかりか、リーダー自身の成長も止まってしまいます。

部下などまわりのメンバーからすれば、自分に仕事を任せてもらえない不満がたまっていきます。一方のリーダーは、自分だけがこんなにがんばっているのに終わらないと思えます。リーダーとメンバーの両方で悪循環です。

この状態が続くと本人の精神や健康状態にも悪影響が及びます。


How: どうやって克服するのか


「自分でやったほうが早い病」 の根本には、利己主義があると著者である小倉広氏は言います。いい仕事をしてほめられたい、結果や成果を出して上司やまわりから認められたいという気持ちです。

意識を変えないといけないのは、任せることによって、まわりもひいては自分も成長できるということです。まわりとの信頼関係を築くこともできます。

「自分がやったほうが早い」 から脱するためには、単に仕事を振るテクニックを知ることではありません。自分だけの成長ではなくまわりの成長も一緒に考えるという、人としての成長が求められるのではないでしょうか。

本書で印象的だったのは、仕事を任せることの3つの勘違いでした。

  • 「任せる」 は失敗が前提
  • 「任せる」 は 「丸投げ」 ではない
  • 他人に任せても楽にはならない

任せたとしても短期的には自分の仕事は減らないのです。任せる時はこの前提を意識する必要があります。任せ方を色々試す時には失敗しながらも、任せる側の自分が成長しないといけないわけです。

本書で紹介されていた、任せるためのマインドチェンジは以下がありました。

  • 任せるとは失敗させる権利を与えることである
  • 仕事と責任をセットにして任せる
  • 自分がではなく、まわり (部下) をヒーローにする
  • PDCA のうち計画と検証は一緒に、実行のみは一人でやってもらう任せ方
  • 任せた後も、ティーチング (教える) とコーチング (自ら気づかせる) の両方から後方支援
  • 任せてもいい人の特徴は、信頼性と責任感のある人


What: 「自分でやったほうが早い病」 を克服したあるべき姿


以前のエントリーで、働き方について書きました。

参考:何のために働くか? - 「働き方革命」 を自分ごと化してみる


このエントリーでは、働き方革命 - あなたが今日から日本を変える方法 という本を取り上げています。



本書には、次のことが書かれています。

働くことは、傍 (はた) を楽 (らく) にすること。妻・子・家族・友・社会を全ての他者を楽にさせることが働くである。

著者である駒崎さんの考え方のベースとなっているものです。働くほど他者への貢献が増え、ひいては世の中が楽になる方向へシフトさせたいという意志です。

自分が仕事を抱えて増え続け、働くほど自分やまわりを犠牲にすることとは逆の考え方です。

自分がやったほうが早いと考え抱え込むことは、一見すると他者を楽にさせているように映るかもしれません。しかし、長い目で見ればそうではありません。

リーダーが本来やるべきであるチームが進む方向性を示せなかったり、メンバーとの信頼性が築けない、リーダー自身の精神的や肉体的な悪影響が出てしまっては、傍 (はた) を楽 (らく) にしている状態とは言えないからです。

「自分がやったほうが早い」 と思うのは、デメリットの方が多く、はじめは任す・任される両方で失敗が起こり得ます。

しかし俯瞰して見れば、そこから素直に学び、お互いが仕事を進める中で人としても成長できることが、「自分でやったほうが早い病」 を克服したあるべき姿です。




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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

ブログ以外にマーケティングレターを毎週1万字で配信しています。音声配信は Podcast, Spotify, Amazon music, stand.fm からどうぞ。

名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。