投稿日 2013/04/19

インテージを退職しました


出社最終日にもらった花束


本日、2013年4月19日付で株式会社インテージを退職しました。インテージはマーケティングリサーチの会社です。

最終出社は一昨日の4月17日でした。その時はまだ気持ちの整理が着いていなかったのですが、2日経ち、思うところを書いてみます。


新規開発プロジェクト


インテージでは様々な仕事・経験ができました。全てはとても書ききれないので、1つだけ取り上げます。この2年間で関わった新規開発プロジェクトです。

このプロジェクトは会社の歴史を考えると、悲願とも言うべきものでした。

そのようなプロジェクトに初めから参加し、またプロジェクトマネジメントという役割ができたことは、大きな財産になりました。中身の濃い2年間で、経験や学びも多かったです。

プロジェクトが本格的にスタートしたのは、忘れもしない2011年3月9日でした。

このプロジェクトは自社以外のパートナーとなる企業がいて、9日の夜に 「一緒にやっていきましょう」 という合意に達しました。ここまで至るまでに色々あったので、決まったことへの安堵感と、まだどこかで現実的ではない感覚が混ざっていたことを覚えています。


東日本大震災


この2日後、3.11 の東日本大震災が起こりました。

プロジェクトの立ち上げが決まり、プロジェクト全体のガントチャート (工程表) を作っている時でした。突然起こったあの地震は一生忘れられないでしょう。

1回目の地震の最中は事の重大さにまだ気づいておらず、机の下に入った後もそのまま仕事を作業を続けてました。直後に2回目の大きな揺れがあり、ようやく異常事態だと感じました。

プロジェクトが 「さぁこれから」 というタイミングでの震災でした。プロジェクトのみならずというか日本全体の時計が止まりました。

東日本を中心に明らかになる被害規模、原発事故、計画停電や交通等社会インフラの混乱、会社も電源供給の制限から大幅な業務時間短縮をせざるを得ない状況でした。プロジェクトどころではなくなり、異様な雰囲気で新年度の2011年4月を迎えました。

幸い、4月以降は少しずつ状況が良くなり、プロジェクトのメンバーも増え、一歩ずつとは言えないまでもプロジェクトも前に進み出しました。


プロジェクトマネジメント


プロジェクトマネジメントの難しさを経験しました。

紆余曲折があり、毎日新たな問題が発生している感じた日々もありました。トラブルを解決しても、次から次に問題が起こりました。インテージでの仕事で最も大変だったし、その分だけ得るものもたくさんありました。

退職した今、あらためて振り返ると、楽しかったなと思います。その時その時は楽しんでいる余裕はなかったのですが、トータルで見ると充実できていました。自分のキャリアの1ページを間違いなく彩ってくれる経験になりました。


世界一への思い


「守破離」 という言葉があります。

日本での武道や芸術などでの師弟関係のあり方を表したもので、創造的プロセスのベースとなる思想とも言われます。プロセスというのは、

  • まずは師匠に言われた型を 「守る」 ところから修行が始まる
  • その型を自分と照らし合わせて研究し、自分に合ったより良いと考える型に進化させて既存の型を 「破る」
  • 最終的には師匠の型から 「離れて」 自在になることができる

簡単に言えば、① 真似から入り、② 少しずつ自分のものにしていき、③ 最終的に自分のオリジナルに、という考え方です。

プロジェクトは、まさに守破離のプロセスでした。プロジェクト開始当時、同じようなプロダクトは海外で先行事例がありました。すでに提供サービスも確立し、ビジネスとしての実績がありました。日本は全くのこれからでした。

プロジェクトの初めの頃は、海外先行事例を日本に当てはめることでもありました。守破離の 「守」 から入り、少しずつ日本特有のローカル状況も考慮しつつ 「破」 へと移っていきました。

参加当時からずっと思っていたのが、「このプロダクトを世界一にしたい」 ということでした。

プロジェクト開始当初、海外では実績があり、一方の日本ではゼロからのスタートでした。世界との差を感じました。日本も世界に追い付いて、そして世界一のプロダクトにしたいという思いがありました。

プロジェクト開始から2年経ち、ようやく日本も海外の先頭集団が見えてきました。あと必要なのはビジネスとしての実績です。

この2年で守 → 破ときているので、2013年は最終的には師匠の型から離れて自在になる 「離」 の年です。2011年: 守、2012年: 破、2013年: 離、という3年計画の最終年です。

今年はそのための大事な1年になると思っていたので、このタイミングで自分が退職することに正直には迷いもありました。チームには申し訳ない気持ちもあります。ただ、退職するにあたって思ったのは自分がいなくても2013年はできると今は信じています。


正式にサービス提供開始へ


インテージでの最終出社日は2013年4月17日でした。同じ日、会社からプロジェクトがサービスとして提供を開始することが社外向けに発表されました。


自分たちがプロジェクトとしてこの2年間やってきたことがプロダクトとしてサービス開始となり、会社からの正式発表されたのです。最終出社のその日に立ち会えました。何か運命を感じたこともあり、自分の中ではこれで気持ちの区切りがつきました。自分の役割は果たせたと思います。


卒業と次へのチャレンジ


退職の挨拶まわりで、お世話になった方々にかけてもらえたのは 「卒業」 という言葉でした。このタイミングでの退職にもかかわらず、暖かく送り出してもらえた。

支えられ、育ててもらいました。本当に恵まれた環境であったと感謝しています。ありがとうございました。

卒業後の 「次へのチャンレジ」 は、週明けの月曜からです (2013年4月22日) 。次の会社で新しい挑戦が始まります。


写真は、出社最終の日にもらった花束とメッセージ集です。





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多田 翼 (運営者)

書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。マーケティングおよびマーケティングリサーチのプロフェッショナル。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

前職の Google ではシニアマネージャーとしてユーザーインサイトや広告効果測定、リサーチ開発に注力し、複数のグローバルのプロジェクトに参画。Google 以前はマーケティングリサーチ会社にて、クライアントのマーケティング支援に取り組むとともに、新規事業の立ち上げや消費者パネルの刷新をリードした。独立後も培った経験と洞察力で、クライアントにソリューションを提供している。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。