#マーケティング #顧客獲得 #カスタマージャーニー
あなたの会社は、新規顧客を獲得するためにどんな施策を打っていますか?
値段の高い本命商品をいきなりお客さんに売ろうとして、高い壁にぶつかっていないでしょうか?
ご紹介したい airCloset Salon (エアクロサロン) の事例は、集客から初回サービス体験、リピート購入、サービス利用の習慣化までを段階的につくるためのヒントを与えてくれます。
airCloset Salon
出典: airCloset
airCloset Salon とは、2025 年 3 月に本格展開を開始した骨格・カラー診断サロンです。
airCloset Salon の中身に入る前に、まず運営元である株式会社エアークローゼットの主力サービスである 「airCloset (エアークローゼット) 」 を見ておきましょう。
主力サービス 「airCloset」
株式会社エアークローゼットは、プロのスタイリストが選んだ洋服を月額制でレンタルできるファッションサービス 「airCloset」 を運営しています。
50 万着 300 ブランドを扱い、会員数は 100 万人を超える国内最大級の月額制ファッションレンタルサービスです。
airCloset は 「新しい洋服との出会い」 を体験できることをコンセプトにしています。プロのスタイリストが、利用者の好みや悩みに合わせて選んだ洋服 3 着が専用のボックスで自宅に届きます。
気に入った服はそのまま購入でき、それ以外の服は返却すると、また新しいコーディネートが届くという仕組みです。
診断サロン 「airCloset Salon」 とは
そんなエアークローゼットが始めたのが、プロのスタイリストが対面で骨格診断やパーソナルカラー診断を行う 「airCloset Salon (エアクロサロン) 」 です。
骨格診断やパーソナルカラー診断を 1 万円超で提供しています。診断後には、プロのスタイリストがコーディネートを提案し、実際に試着もできます。さらに、その場で洋服の購入も可能という、診断から実際のファッション体験、サービス利用までを提供しています。
airCloset Salon は、2024 年秋に期間限定で試験的にオープンしたところ、大変好評でした。利用者からは 「スタイリングの具体的なアドバイスがあり、今後の服選びに大いに役立ちそう」 「普段着ないようなお洋服を試すことができて良かった」 といった声が寄せられ、この成功を受けて本格展開に踏み切りました。
オンラインサービスが中心のエアークローゼットが、あえて手間とコストのかかるオフラインの店舗での顧客接点を設けた背景には、消費者やお客さんとのより深い関係性を築きたいという思いが感じられます。
サロンというリアルな顧客接点を持つことで、ネットのオンラインだけでは伝えきれない airCloset のブランドの世界観を体験してもらい、信頼を深めてもらう。そして、サロンでの診断で得た消費者の悩みや困りごと、反応を、オンラインサービスの精度向上に活かすという狙いもあることでしょう。
* * *
では、airCloset Salon の事例から学べることを掘り下げていきましょう。
この事例は、新規のお客さんをどう獲得するか、そして新規顧客をいかに継続顧客になってもらい長くお客さんでいてもらえるかに示唆があります。
airCloset Salon の顧客獲得
airCloset Salon の取り組みがマーケティングの観点から興味深いのは、「顧客獲得から継続顧客への "流れ" 」 です。
消費者が商品やサービスを認知し、購入し、そして使い続けて継続顧客になるまでの一連の流れ (カスタマージャーニー) が、巧みに設計されています。
従来の診断サービスの問題点
骨格診断やパーソナルカラー診断は、以前から存在したサービスです。
しかし、多くの場合、診断を受けたら結果が分かるだけで終わってしまいます。
「自分はこの色がパーソナルカラーだと分かったけれど、実際にどんな服を選べばいいの?」 「骨格ストレートだと診断されたけれど、具体的にどうコーディネートすればいいか分からない」 というモヤモヤや悩みを抱えたまま、せっかくの診断が活かされないケースが少なくありませんでした。
一方の診断サービス提供者にとっても、一度きりの売り切りサービスになってしまい、継続的な関係構築が難しいという問題がありました。診断結果という情報を提供しても、それが知識としてあるだけで、行動までを変える支援まではできていなかったわけです。
airCloset Salon の問題解決
airCloset Salon は、こうした診断サービスの "断絶" を解決します。
診断からの自然な流れ
骨格やカラー診断で終わらせず、その場でプロのスタイリストが服のコーディネートを提案するからです。リアルの店舗なので、実際に服の試着もでき、気に入ればその場で買って帰れます。診断結果を即座に、エアークローゼットの体験 (プロによるコーディネート提案) へと変換するのです。
こうした 「診断 → コーディネート提案 → 試着体験 → 購入」 という流れをつくることによって、お客さんはスムーズに行動を取れるという設計になっています。
しかも、診断データは月額制ファッションレンタルサービス airCloset へ連携されます。診断を受けた人がエアークローゼットの会員になれば、診断結果も活用されて自分の骨格やパーソナルカラーが反映されたスタイリングの提案を継続的に受けられます。
料金設計の妙
airCloset Salon で注目したいのは料金設計です。
通常、骨格・パーソナルカラー診断は 1 万円超ですが、airCloset の月額制サービスに登録すると、この診断料金が最大で無料になります (3 ヶ月または 12 ヶ月のプランに加入する場合) 。
診断だけにお金を払うという心理的抵抗を取り除き、airCloset に入れば骨格・カラー診断は無料になるというお得感が生まれます。
お客さんは診断サービスに価値を感じて来店しているわけで、それが実質無料になるなら、月額サービスへの加入もそれほど高いハードルではなくなります。
診断を受けたお客さんは、診断結果を最大化するために活用する動機も生まれます。せっかく自分の骨格やパーソナルカラーが分かったのだから、それを活かしたスタイリングを受け続けたいと思うのは自然な心理でしょう。
airCloset Salon の役割
airCloset Salon はお試し体験の場にとどまりません。
診断自体が価値のあるサービスとして機能しながら、同時に airCloset の顧客獲得装置としての役割も担います。
診断サービスという分かりやすい入口から、airCloset のパーソナルスタイリング提案の価値を体験でき、自然と本丸である月額サービス airCloset へと誘導するという流れです。
- 骨格・カラー診断
- 診断情報を反映したスタイリングの提案 (= airCloset の 「お試し体験」 )
- airCloset への登録
- airCloset の継続利用
階段を一段ずつ登るような顧客獲得戦略です。
汎用化した学び
airCloset Salon の事例から、ビジネスに応用できる学びがあります。
それは、顧客獲得を 「点」 ではなく 「線」 で考えることの重要性です。
戦略的な集客と継続・習慣化への自然な誘導
ビジネスの世界では、集客を目的とした商品を 「フロントエンド商品」 、本当に収益を上げたい本命の商品を 「バックエンド商品」 と呼んだりします。
airCloset Salon の診断サービスは、フロントエンド商品の役割を果たします。診断そのものではなく、その先にある月額サービスの airCloset (バックエンド商品) につなげるための、戦略的な集客装置なのです。
あなたの会社は、いきなり本命商品やサービスを売ろうとしていないでしょうか。しかし、お客さんにとってそれは高い階段を一気に登るようなものです。特に高額商品やサブスサービスの場合、その階段はさらに高くなります。
エアークローゼットがやったのは、この高い階段を低い段差の階段に作り変えることです。
第 1 段階として、診断サービスという価値を感じやすいサービスを提供。第 2 段階で、診断結果を活かしたコーディネート提案と試着体験。第 3 段階で、月額サービスへの加入という流れです。
各段階が次の段階へのなめらかな導線になっています。診断を受けたら、その結果をすぐに活かしたいと思う。コーディネートを体験したら、それを継続したいと思う。こうした消費者の心理的な流れに沿って設計されています。
金額的にも心理的にもハードルを下げる工夫があります。
診断料金の実質無料化は金額的なハードルを下げ、診断データの連携は 「せっかくの診断結果を無駄にしたくない」 という損失回避の心理をうまく突いています。
学びの応用
エアークローゼットの事例を一般化すると、お試しでの利用や初期購入のハードルをなるべく下げ、お試し利用、初回での購入、2 回目購入のリピート、そして購入と利用を習慣化してもらう (サブスクなどの定期購入) へと階段を少しずつ確実に上がってもらうマーケティングに示唆があります。
この階段設計の考え方は、様々なビジネスに応用できます。例えば、
- 化粧品なら、まず試供品や小サイズから始めて、気に入ったら通常サイズ、そして定期購入へ
- 学習サービスなら、無料体験レッスンから始めて、1 ヶ月の短期コース、そして年間契約へ
- 飲食店なら、ランチから始めて、ディナー、そして会員制サービスへ
重要なのは、各段階でしっかりとお客さんに価値を提供することです。
airCloset Salon が成功しているのは、診断サービス自体に価値があり、お客さんがお金を払ってでも利用したいと思える存在だからです。無料のお試しで一方的に提供するのではなく、お客さんが価値を感じてお金を払いたいと思えるサービスになっています。
価値あるお試し利用、初回の購入から 2 回目のリピート、そして購入の継続、商品・サービス利用の習慣化のいずれにも共通するのは、「新しい自分に出会える」 という価値です。顧客価値を体験する階段をお客さんが自然に、そして確実に登っていける設計が airCloset Salon から学べることです。
顧客獲得に悩む企業は多いですが、いきなり大きな行動をお客さんに求めるのではなく、小さな一歩から始めてもらう。その一歩一歩に価値をつくり、次への自然な導線を作る。こうした階段設計の発想が、マーケティングでは大事です。
あなたのビジネスでは、顧客にどんな 「体験の架け橋」 を用意できるでしょうか?
まとめ
今回は、airCloset Salon の事例を取り上げ、学べることを見てきました。
最後にポイントをまとめておきます。
- いきなり本命商品を売らず、金額的・物理的・心理的なハードルを低くするといい。フロントエンド商品から始めて、段階的にバックエンド商品へと導く階段を設計する
- 単発の商品やサービス提供で終わらせず、顧客との長期的な関係構築を前提とした 「お試し利用 → 初回購入 → 2回目購入 → 継続購入 → 習慣化」 へのなめらかな流れを戦略的に設計する
- 各段階でしっかりと価値をつくる。お客さんが 「お金を払ってでも利用したい」 と思える価値を各段階で確実に提供し、次への自然な動機を生み出す
- 消費者心理をつかみ、「せっかくお金を払ったので無駄にしたくない」 「この体験を続けたい」 といった人の自然な心理の流れに沿って、次のステップへ導く
- 継続への仕組み化のために、一度得た顧客データや体験を活用して、継続利用の価値を高め、習慣化を促進する仕組みを構築する
