投稿日 2013/04/29

リスクテイク → 変化 → 成長という方程式




プロゲーマーである梅原大吾氏の著書 勝ち続ける意志力 の冒頭プロローグには、次のように書かれています。

「結果を出す」ことと、「結果を出し続ける」ことは根本的に性質が異なる。勝つことに執着している人間は、勝ち続けることができない。

(引用:書籍「勝ち続ける意志力」

この部分を初めて読んだ時、いきなり先制パンチを食らった感じでした。なぜなら結果を出すことを1つずつ積み重ねると、結果を出し続けられる、と思っていたからです。しかし、梅原氏によれば2つは根本的に異なるのです。


「勝ち続ける意志力」とは


梅原氏が考える「勝ち続ける意志力」とは何でしょうか。

結論から先に言うと、勝ち続ける意志力とは、勝つことではなく「自分が成長し続けること」を目的とすることです。

勝つ、あるいは結果を出すというのは1地点でのことにすぎず、成長し続けるというのはその意思や向上心がある限りは終わりのないことです。梅原氏の言葉が印象的でした。

僕にとって生きることとは、チャレンジし続けること、成長し続けることだ。成長を諦めて惰性で過ごす姿は、生きているとはいえ生き生きしているとは言えない。

(引用:書籍「勝ち続ける意志力」


変化なくして成長なし


「成長すること」について次に考えてみたいのが、どうすれば成長することができるのかです。

書籍「勝ち続ける意志力」に書かれていたヒントは「変化なくして成長なし」でした。印象深い内容だったので引用しておきます。

僕にとっての正しい努力。それはズバリ、変化することだ。

昨日と同じ自分でいないーーー。そんな意識が自分を成長させてくれる。ゲームの世界においては、変化なくして成長はない。
「本当にこのままでいいのか?」
「自分の殻を破って新しいことに挑戦してみよう」
「必死に編み出したやり方も通用しなくなった。別のやり方を考えてみよう」
常に自分を変えようとする、そうした意識が求められる。

しかし、多くの人は、変わることと前に進むことは別だと思っているだろう。確かに、自分を変えることは不安だし、変化した先に勝利があるとは限らない。けれども、変わり続けていれば必ず前へ進める。

変化したことで失敗したり、後ろに下がったりしたときは、もう一度変化すればいい。失敗に気づいて変化すれば、以前の自分よりも必ず高い位置に行ける。一歩後退しても、その後退には意味があり、それがきっかけで二歩進む方法が見えてくることもある。
変化を続けていれば、きっと正しいことが見つかる。また、正しくないことが見つかれば、その反対が正しいことだと分かる。だから、前へ進める。

成長というのは、とにもかくにも同じ場所にいないことで促進される。そして、常に成長していれば年を取っても、ゲームが新しくなっても、若くて有能なプレイヤーが出てきても、変わらず勝ち続けることができると考えている。

(引用:書籍「勝ち続ける意志力」

自分を変えることについて、梅原氏の考え方で特徴的だと思ったのは変化するためのコツでした。自らを変化させるかどうか判断する時に「そうすることで良くなるかどうかまで考えないこと」と言います。とにかく大事なのは変わり続けることである、と。

変わってみてもし悪くなったとしても、それに気づいてまた変えればいいという考え方です。変わる前から、良くなるか or 悪くなるかは誰にも分からなく、であれば「まずは変わってみる」というスタンスです。


羽生善治氏のリスクテイクの考え方


自分を変えるとは、別の見方をすればリスクを取ることです。

リスクについて思い出すのは、羽生さんとサッカーの岡田武史監督の対談本である 勝負哲学 に書かれていたことです。印象的だったのは、羽生善治氏のリスクテイクの考え方でした。

  • リスクとの上手なつきあい方は勝負にとって非常に大切な要素。だから「いかに適切なリスクを取るか」を考えるようにしている
  • 将棋で少しずつ力が後退していくことがあり、後退要因として最も大きいのが「リスクをとらない」こと。リスクテイクをためらったり怖がると、ちょっとずつだが確実に弱くなっていってしまう
  • 勝つためにリスクを取らず安全地帯にとどまっていると、周囲の変化に取り残される、進歩についていけなくなる。結果、自分の力が弱くなっていく。それを避けるために積極的なリスクテイクが必要。だから必要なリスクは果敢に取りにいくことを心がけている

つい、リスク → 危険 → 避けるべきこと、と解釈してしまいがちです。しかし、それは違うのです。

リスクとは不確実性の尺度であり、リスクが高いとは結果予想が立てにくい・予想の振れ幅が大きいということです。

リスクを取ることのそもそもの意味は、不確実性をあえて選択し、起こりえる結果の幅が大きくなる、ということです。良い方向に振れることもあれば、悪い方向に振れることも同じだけあり得ます。

羽生さんが、「いかに適切なリスクをとるか」、「リスクとの上手なつきあい方は勝負にとってきわめて大切なファクター」、「リスクテイクを避けると周囲の変化に取り残され自分が弱くなっていく」と言っているはあらためて考えさせられます。

羽生さんのリスクの考え方から学んだポイント2つです。

  • 「リスクとはやみくもに避けるべき対象ではない。正しく付き合うことが大事」という認識に変える
  • いかに「適切なリスク」を取っていくか


「適切なリスク」をどうやって取るか


いかに適切なリスクテイクができるかについて、適切なリスクを取るために重要だと思っているのが以下の3ステップです。

  • 自分にとって何がリスクかを知る。「わからない」をまずは「知る」こと
  • リスクの度合い(不確実性)の見極める
  • リスクを取るかどうかの決断。やみくもに避けるのではなく、正しく付き合う

リスクを取ることについては、結果ではなく、リスクを取ったという自分の判断を尊重/肯定したほうがいいと思います。リスクテイクの結果がうまくいったかどうかではなく、リスクをとったことに自分自身が納得しているかどうかです。この視点を大事にすべきです。

リスクを取らなかった後悔より、取ったことの後悔のほうがが小さい。チャレンジしなかった後悔より、チャレンジした後悔のほうが小さい。このように思うようにしています。


まとめ


最後に、今回の内容を整理しておきます。

  • 「勝つことと(結果を出す)」と「勝ち続けること(結果を出し続ける)」は根本的に異なる。勝ち続けるための意志力とは、「自分が成長し続けること」を目的とすること
  • 成長のためには「変化し続ける」こと。自分が変わる前から良くなるか or 悪くなるかは誰にも分からなく、であれば「まずは変わってみる」というスタンスが大事
  • 変わるということはリスクを取ること。リスクテイクのためには、リスクを見極め理解し、いかに「適切なリスク」を取るかが大切





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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。