2013/07/28

ネットがもたらした 「注意力散漫な脳」 は進化?退化?




「カジケンブログ」 にあるエントリーを興味深く読みました。

参考:テレビドラマって、もう一話15分で良いんじゃないの?|カジケンブログ


テレビドラマは15分くらいが最適?


エントリーの内容は、自分の SNS 上で話題になっていた NHK の連続テレビ小説 「あまちゃん」 についてでした。オンデマンドで見始めたを機に、テレビドラマは15分くらいが最適なコンテンツ時間なのではと考えるようになった、という内容です。

以下は該当箇所の引用です。

まず最初の取っ掛かりとして、15分だったらとりあえず一話ぐらいは観てみようかなという気になりました。YouTube も一つの動画の長さが最大10分なのでその感覚に近いかも。

逆に言うと、45分や1時間とかだったら観ていなかったと思います。実際今までのテレビドラマを観なかったのは、それが原因。

あと、一話の単位が15分だとちょっとしたスキマ時間で観れます。15分だからこそ 「あ、今ちょっと時間あるから次の回を観てみよう」 となる。それこそ友達に薦められた YouTube の動画をさらっと観るみたいな感じで。

これが45分とかだったら、例えば会社の昼休みをほとんど使っちゃうわけでかなりの決断になるし、この違いは大きい。

そもそも、映画館のようなスマホ利用を禁止されている場所以外で、1時間近くも一つのコンテンツを受動的に鑑賞し続けるということ自体が、なかなかしんどい感覚になりつつあります。(読書は能動的な行為なので別です)

あとアーカイブをパソコンやスマホで観る際に、もし45分だとその間に LINE や Facebook でメッセが飛んできたりして、きっと気が散るな、と。そういう意味でも15分で1話完結って、(朝の連ドラはたまたま15分なのだけど) 絶妙な時間の長さだと思います。

テレビ以外に自分のまわりに、特にネット上でコンテンツが溢れているなか、確かに15分くらいなら興味関心が続きそうです。

映画鑑賞や読書、あとはテレビでのスポーツ観戦など、能動的なコンテンツ消費は別として、受動的な姿勢ではコンテンツを集中して見られる時間は10分から15分程度が限界になっているのかもしれません。


ネットがもたらす注意力散漫な脳


思い出したのが、ネット・バカ - インターネットがわたしたちの脳にしていること という本に書かれていた内容でした。



本書の主題は、ネットを当たり前のように使うようなり人間の脳に変化が起こっていて、脳が注意力散漫になることへの警鐘です。1つのことに長く集中できないという状態への危惧です。

例えば、頻繁に Facebook や Twitter を見る、メールを受信する度にメッセージ受信のアラートで作業を中断してしまう、などです。中断頻度が多いほどそれ以外のことを長くやり続けることが困難になります。

原題は THE SHALLOWS - What the Internet Is Doing to Our Brains です (ネット・バカという邦題に違和感はありますが) 。Shallow は浅瀬という意味で、深い集中ができないことを指しています。

本書に、著者がこの本を執筆するにあたり、あえてネット環境が整っていないコロラド山中に引越し、携帯電話が通じず、ネット回線スピードが遅い状況に身を置いたことを書いています。

ツイッターのアカウントをキャンセルし、フェイスブックを休止、RSS をシャットダウンしスカイプもほとんどやらずに、メールのチェック頻度も少なくしたそうです。

当初は苦痛どころではないと苦労した様子が書かれていました。しかし、常時接続をやめた環境に慣れると、1つのことへの集中力が増し、執筆活動が大いに進んだとのことでした。

注意力散漫な状態で作業を中断して、他のことをやるのは時間にすれば短いでしょう。しかし、積み上げると時間を費やしています。中断しまた作業に戻った後も、目の前の作業に集中するまで時間もかかります。

原題にある What the Internet Is Doing to Our Brains は、インターネットが脳にもたらしたことです。 ネットによって、知らず知らずのうちに注意力散漫になってしまっています。


注意力散漫は是か非か


あらためて思ったのは注意力散漫なことは悪いことなのかです。

本書で書かれていたことで興味深かったのが、「人間の歴史のほとんどの期間で脳は注意散漫な状態であった」 でした。なぜなら、他の動物同様に不意に敵に襲われたり、近くにある食料を見落とさないようにするために、常に複数のことに注意力を注いでいたからです。自分たちの生存のためです。

もともと脳は1つのことに集中するよりも注意力散漫な状態のほうが自然でした。人間社会が発達するにつれて基本的な身の安全は保証されるようになり、本などから文字情報を獲得するなど、1つのことへの集中力が必要になっていったのです。

これがインターネットにより、また注意力散漫な状態が自然になる揺れ戻しが起きているのかもしれません。ネットにより脳が進化したのか、本来の自然な状態に戻ったのか、あるいは、退化したのかです。


テクノロジーが世の中を変える3つのステップ


テクノロジーが世の中を変えるには3段階があります。

  • 新しい技術の登場
  • 技術が制度や仕組みを変える
  • 仕組みが人々の生活や世の中を変える

例えば、インターネットの通信はパケットという情報を細分化しデータを細かく送受信する技術が使われています。

細分化という技術がまずあり、細分化で成り立っているネットを前提にした制度や仕組みがつくられ、それを利用する人たちの生活が変わり、世の中も変えました。

ネットという新しい技術が登場し、変えたのは人々の生活だけではなく、脳の使われ方 (集中の仕方) も変化させているのかもしれません。



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多田 翼 (書いた人)


外資系 IT 会社にて 「シニア マーケティングリサーチ マネージャー」 (LinkedIn) 。

1981年 (昭和56年) 生まれ。名古屋出身。学生時代は京都。家族4人で東京23区内に在住、2人の子どもの父親。気分転換は毎朝1時間のランニング。

書いている内容は、所属組織や会社の正式見解ではなく個人の見解です。