2013/10/19

コンタクトレンズを 「使い捨て」 にするという逆転の発想




競争戦略の考え方の1つは 「いかにして戦わないようにするか」 です。競争しない競争戦略です。ブルーオーシャンの発想で、ターゲット層を変え新しい市場を開拓したり、新しい商品やサービスを投入して差別化を図ります。

既存の市場でイノベーションが起こるのは、従来とは全く違う発想をもつ商品やサービスが出てくる時です。

使い捨てコンタクトレンズ


例えば、使い捨てコンタクトレンズです。書籍 模倣の経営学 - 偉大なる会社はマネから生まれる で紹介されていました。

ジョンソン&ジョンソン (J&J) の使い捨てコンタクトのアキュビューの事例です。使い捨てレンズと従来レンズでは、発想が基本から異なりました。

私自身もコンタクトレンズを使っていて、最初は使い捨てではないソフトコンタクトから入りました。

従来のコンタクトの発想


従来の発想は 「いかに長く使えるか」 でした。

1枚あたりが高いので、少なくとも1年以上、できれば2-3年はもたせたいという気持ちがありました。そのためには取り外しの際には破れないように注意を払い (ハードなら割れないように) 、コンタクトを外した後は丁寧に洗浄する必要がありました。これが従来レンズのユーザー側の考え方です。

製造側のメーカーとしても 「いかにレンズの耐久性を上げるか」 「いかにレンズの表面を滑らかにするか」 「効果的で手間のかからない洗浄ケアは何か」 という発想です。レンズの長期間利用が前提なので、耐久性を向上させ品質を上げつつも、採算に合うコストダウンが問われます。

使い捨てが前提になった時の発想


ところが、コンタクトを使い捨てにするという発想に立てば大きく違ってきます。

耐久性を割り切ることができます。ソフトレンズはあまり薄くすると破れやすくなる問題が、使い捨てであればより薄くできます。また、使い捨てが前提なので洗浄も従来レンズほどは必要なくなります。

ユーザー側も使い捨てが前提になると、コンタクトに対する発想と使い方が変わります。

「いかに長く使うか」 から 「毎回新しいレンズに変える」 です。破れることへの不安がなくなり、毎回の洗浄も不要になります。新しいレンズに取り替えるので、目の健康にも良いというメリットを感じやすいです。

使い捨てコンタクトを実用化できた背景


模倣の経営学 - 偉大なる会社はマネから生まれる という本に書かれていたことは、J&J が使い捨てコンタクトを実用化できた背景には、発想の転換だけではなく、製造方法にイノベーションがあったことでした。

使い捨てコンタクトを実現するには、大量生産によるコストダウンが不可欠です。そのための方法として当時、最有力だったのはモールディング法だったとのことです。

ただ、コストが低い一方で、加工精度が粗く、(1枚のレンズを使い続けることが前提の) 高品質で耐久性の高いレンズには向かないと考えられていたそうです。既存のコンタクトメーカーにとってはあまり意味のない技術だったようです。

J&J はもともとの発祥が医療用の消耗品メーカーだったので、使い捨ての思想を持っていました。殺菌消毒をして使っていた医療器具を使い捨てにし、より高い安全性を提供するビジネスです。この発想をコンタクトレンズにも横展開したのです。

競争をしない競争戦略


使い続けるのか、使い捨てなのか。どちらが良いかは一概には言えませんが、コンタクトに関しては使い捨てモデルが適していました。従来型の使い続けるレンズが主流の中、逆の発想で登場したのが使い捨てコンタクトレンズです。競争をしない競争戦略の1つの例でした。

現在は使い捨てタイプのほうが主流になってきていると思うので、使い捨てレンズの競争が激しくなっています。次の 「逆転の発想」 はあるのでしょうか。

最後に


個人的に期待する次のコンタクトはネットに接続するコンタクトレンズです。こちらは以前に書いたエントリーです。

眼鏡型コンピュータの次はインターネットコンタクトレンズ



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多田 翼 (書いた人)


外資系 IT 会社にてマーケティングリサーチ マネージャー (LinkedIn) 。

1981年 (昭和56年) 生まれ。名古屋出身。学生時代は京都。家族4人で東京23区内に在住、2人の子どもの父親。気分転換は毎朝 8km のランニングとピアノ。

書いている内容は、所属組織や会社の正式見解ではなく個人の見解です。