2017/04/24

頭で思い浮かんだことを文章にする技術を Facebook が開発中 (2017年4月現在) 。マーケティングリサーチへの応用に期待


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フェイスブックが毎年開催している開発者向け会議 「F8」 で、頭で考えたことを直接文章にする技術を開発していることを発表しました (2017年4月19日) 。以下はフェイスブックの発表詳細です。

F8 2017: AI, Building 8 and More Technology Updates From Day Two | Facebook Newsroom


Facebook が考えるだけで文字入力ができる技術を開発中


日経新聞 (2017年4月20日) からの引用です。

米フェイスブックは19日、頭に思い浮かべるだけで文章が書けるコンピューターの入力技術の研究開発を進めていることを明らかにした。「ダイレクト・ブレーン・インターフェース」 と呼ぶもので、数年以内の実用化を目指している。

ITpro の記事によれば、フェイスブックは、頭の中で考えていることを1分当たり100ワードの速度を目指しているようです。これは、スマートフォンで指でテキスト入力するスピードの5倍とのことです。

頭の中に自分が思い浮かべたものが、どのように文章になるかについて、フェイスブックは次のように説明しました。ITpro の記事からの引用です。

ただし頭の中で考えていることをすべて読み取るわけではないと、同氏 (引用者注: ハードウエア開発部門 Building 8 担当バイスプレジデントの Regina Dugan 氏) は強調する。たくさんの写真を撮ってその中からシェアするものを数枚選ぶように、頭の中にあるさまざまな考えから、発言すると決定して会話中枢に送られた言葉を解読する。

言葉にして話せるよう頭の中で言語化されたレベルのものが文章になるようです。本人が意識していないような無意識下の感情や思考は、文章にはならないのでしょう。

以下は NHK ニュースからの引用です。

研究チームでは帽子のようなものを頭に被り、1秒間に100回という高速で脳をスキャンして活動を読み取る技術を開発しているということです。

Dugan 氏による F8 のキーノートの動画です。脳からの文章作成のデモンストレーションは 6:15 からです。




この技術で期待できること


この技術やツールで期待できるのは、文章作成が効率的になることです。

2017年現在、デジタルでのテキスト入力方法はパソコンであればキーボード、スマホやタブレットは画面のタップやフリック入力、そして、音声入力です。スピードは音声入力が最も早いものの、正確性は劣ります。誤字を修正する時間も考えると、私が一番使い勝手がよいと思うのはパソコンからのキーボード入力です。

フェイスブックが開発中している脳から直接文章が書けるようになり、スピードも今の文章作成方法よりも早く、かつ誤字もキーボードのテキスト入力程度の少なさになれば、有力な文章作成方法になります。

ボトルネックは脳内の言葉の読み取り装置で、帽子のような専用装置を使わないといけないのかどうかです。

頭で考えたことを直接文章にできることが実現すれば、仕事でのメールやメッセージの作成時間が短縮できます。プライベートでのメッセージのやりとりもスムーズになります。また、例えば筆談によるコミュニケーションの代替にもなります。

応用は他にも考えられます。

頭の中のことを文章にする際に、文章としてのアウトプットを母国語以外の言語として表現できることを期待したいです。日本語の文章を英語などの他の言語にするのではなく、頭の中に思い浮かんだ内容を文章に変換するタイミングと同時に、母国語以外の言語で表現するやり方です。


脳内の無意識を見える化できないか


もう1つ、応用できないかと思うのは、今のフェイスブックが目指している方針とは異なることです。それは、無意識の言語化です。

通常、人が自分の言葉で話すことができるのは、頭の中で意識された範囲です。例えば、何かの出来事に対して説明できるのは、自分が意識できていることで、言葉として表現できるくらいに整理されたものです。無意識の領域は、本人が意識できるレベルになるまでは言語化できません。

フェイスブックが開発中の脳から直接文章にする技術を応用すれば、脳の中の無意識の感情や気持ちを文章として見える化できないかと思います。

できあがった文章は乱雑で、文としての体裁はなしていないかもしれません。それでも、無意識の脳内情報を取り出せるメリットはあります。

例えば、マーケティングリサーチでは、脳内の無意識の領域を専用の機械で読み取ろうとするニューロリサーチという調査手法があります。具体的には、専用の機械を頭に被り、機械が脳波や脳内の血流の変化を測定します。測定されたデータから、被験者がどのような感情や気持ちだったのかを人が解釈します。

脳波などを使う以外には、皮膚の状態から人の反応を調査するアプローチもあります。

これらのアプローチはいずれも、コストや実施のハードルが高く、マーケティングリサーチの世界では広く普及するには至っていません。

何よりも課題は、脳波を読み取る専用装置を調査対象者の頭に付けた状態での調査が、普段の日常での生活状況と全く異なることです。専用機械を頭に取り付けた非日常での調査状況が、調査結果のバイアスになることが考えられます (普段の生活での反応と実験調査での反応が乖離する可能性) 。

フェイスブックが開発中の考えるだけで文章が作られる技術を、自分の無意識の感情を取り出すことに応用できれば、このボトルネックを解消してくれるのではと期待します。

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多田 翼 (書いた人)


外資系 IT 会社にて 「シニア マーケティングリサーチ マネージャー」 (LinkedIn) 。

1981年 (昭和56年) 生まれ。名古屋出身。学生時代は京都。家族4人で東京23区内に在住、2人の子どもの父親。気分転換は毎朝1時間のランニング。

書いている内容は、所属組織や会社の正式見解ではなく個人の見解です。