#マーケティング #顧客設定 #顧客獲得
ガンダムのスマートフォン向けのゲームが、リリース直後から話題を呼んでいます。
その裏側には、緻密に計算されたマーケティングがありました。
今回はこの事例を紐解きながら、あらゆるビジネスの基本である 「客数を増やす方法」 について、一緒に考えていきたいと思います。
ガンダムのアプリゲーム
ガンダムのスマホゲーム 「SD ガンダム ジージェネレーション エターナル」 は、1998年から続く人気シリーズの最新作です。
本格的なシミュレーション要素をスマホゲームに取り入れた意欲作です。
歴代ガンダム作品から好きなモビルスーツやキャラクターを集め、自分だけの部隊を編成して戦略的に戦うというシミュレーションゲームです。
70作品以上が参戦し、500体を超えるユニットが登場するという圧倒的なボリュームを誇ります。アニメの場面写真を ADV (アドベンチャー) パートに取り入れ、スマホの小さな画面でも物語の魅力を視覚的に伝える工夫がされています。
バンダイナムコエンターテインメントは、家庭用ゲーム機で長年愛されてきた 「ジージェネ」 を、スマホという新しいプラットフォームに最適化することに挑戦しました。
結果、事前登録100万人超、サービス開始数日で200万ダウンロード、2ヶ月半で500万ダウンロードという驚異的な数字を記録 (参考情報) 。新規アプリの成功が難しいと言われるスマホゲーム市場で、健闘以上の成果を残しています。
では、ガンダムのアプリゲームの事例から、学べることを掘り下げていきましょう。
客数を増やす方法
売上を分解すると、基本的には 「客数」 と 「客単価」 に分けることができます。
これはビジネスをされている方にはすでにおなじみのことかと思います。「売上 = 客数 × 客単価」 というシンプルな式で、売上がどのように構成されているかを表すものです。
多くの経営者や販売責任者の方々は、日々このふたつの数字を念頭に置いて戦略を立てていらっしゃることでしょう。
では、さらに 「客数」 を分解してみます。 顧客数は売上を構成する重要な要素であり、お客さんを増やすことが売上向上のカギを握ります。
では、具体的にどのようなアプローチで客数を増やすことができるのでしょうか?
結論から言うと、客数を増やすアプローチは以下に分けられます。
- 新しいお客さんを増やす [新規顧客の獲得]
- 一度買ってくれたお客さんに二度目・三度目と買ってもらう [新規顧客の継続顧客化]
- 長くずっとお客さんでいてもらう [継続顧客の維持]
- お客さんが離れていかないようにする [離反顧客の最小化]
- 一度離れていたお客さんにまた買ってもらう [離反顧客の復帰]
以上が、売上の客数を増やす、あるいは減らさないための5つの方法です。
ガンダムアプリゲームの顧客獲得
では、ガンダムのスマホゲーム 「SD ガンダム ジージェネレーション エターナル」 に当てはめていきましょう。
顧客をひとくくりにせず、3つの異なる層に分け、それぞれに最適化されたアプローチを展開しました。
継続顧客の維持と離反防止 [コアファン層]
まずアプローチしたのは、シリーズを長年支え続けてきた熱心な支持者であるコアファン層です。
ゲームのクオリティに厳しい目を持つファンに対して重要なのは、期待を裏切らず、信頼関係を維持し、離反させないことでした。
そこでとった戦略は、徹底した 「正直さ」 です。
スマートフォンのアプリゲーム化にあたって、ファンが期待するであろう要素、例えば戦艦がユニットとして使えなかったり、一部の戦闘演出が簡略化されたりといった、普通なら隠したくなるようなマイナス情報から先に公開しました。
なぜそうしたのかという理由まで丁寧に説明し、一方的な通知ではなく、ファンとの対話という姿勢を示しました。公式ブログで開発状況を継続的に発信し続けたこともその表れです。
こうした誠実なコミュニケーションがファンとの信頼関係を築きました。
サービス開始前のネットワークテストでは 「期待通りの本格的なシミュレーションゲームだ」 というポジティブな評価につながり、最も離れてほしくない顧客層の離反を防ぐことに成功したのです。
離反顧客の復帰 [休眠ユーザー層]
次なるターゲットは、かつてはガンダムゲームを楽しんでいたものの、今は離れてしまった人たち、休眠ユーザー層です。
離れてしまった理由を 「学生時代はプレイしていたが、社会人になり時間がなくなった」 と捉えました。
そこで打ち出したメッセージは 「15分で遊べる」 という、休眠ユーザー層の今のライフスタイルに寄り添ったものでした。
このメッセージを具体的に裏付けるのが、オートモードや演出の倍速機能、アイテム集めが楽になるスキップ機能といった、タイパ (タイムパフォーマンス) を高める機能です。
手軽さを YouTube 広告や SNS 広告を使い、実際のプレイ動画で見てもらい、「忙しい今の状況でも、またあの頃のように楽しめるかもしれない」 と感じてもらうことを狙いました。
離れてしまった理由を捉えての問題解決をする価値提案であり、ガンダムの元ファンを呼び戻す原動力となりました。
新規顧客の獲得 [新規興味層]
そして最後のアプローチが新しいお客さんを増やす、新規顧客の獲得です。
ターゲットは、「機動戦士ガンダム 水星の魔女」 や、映画もヒットした 「機動戦士 Gundam GQuuuuuuX (ジークアクス) 」 といった新作で、初めてガンダムに触れた層です。
こうした人たちにとって、45年以上続くガンダムの世界はあまりに広く、どこから入ればいいか分からないことでしょう。その不安に応えるかのように、ジージェネ エターナルは 「これ1本でガンダムが分かる」 という入門書のような位置づけとして提示しました。
70以上の参戦作品、500を超える機体という圧倒的なボリュームをアピールしつつ、ゲーム内ではアニメの名シーンを使ったムービーで物語を分かりやすく解説。テレビシリーズなら50話以上かかる物語のエッセンスを、手軽に追体験できる仕組みを用意しました。
ゲームの 「SD ガンダム ジージェネレーション エターナル」 は新たなガンダムファンを生み出す入口としても機能し、新規顧客の獲得につながりました。
顧客解像度の高さが生んだ相乗効果
注目したいのは、これら3つのアプローチが、緻密な順番に沿って段階的に実行されたことです。
まず、スマホアプリのリリース前からコアファンとの信頼関係という基盤をつくり、次に事前登録のタイミングで休眠ユーザーを呼び戻しての規模を拡大。そしてサービス開始後に、アニメからの流れで興味を持った新規層を受け入れ、ユーザー拡大へと結びつけました。
一つひとつの施策が独立しているのではなく、連動して大きなうねりを生み出していることがわかります。
まとめ
今回は、ガンダムのスマホゲーム 「SD ガンダム ジージェネレーション エターナル」 の事例を取り上げ、学べることを見てきました。
最後にポイントをまとめておきます。
- 注力顧客をひとくくりにせず、例えば、ファン (コアユーザー) 、休眠ユーザー、新規ユーザーなどで分ける
- 分類した各顧客層に合わせ、伝えるメッセージや提案する価値を変える。お客さんの全員に同じアプローチをするのではなく、顧客ニーズに合わせて適応することが大事
- 例えば、既存のファンや顧客にはさらなる信頼関係を築くために、あえて弱みや制約を先に伝える。長期的な離反防止につながる
- 離れてしまった離反や休眠顧客には、離れた理由を踏まえて提案をする。新規ユーザーには利用開始のハードルを下げる配慮をする
- 顧客アプローチは独立させず、相乗効果を狙う。例えば、まずは基盤 (既存顧客) を固め、次に規模拡大 (休眠や新規顧客) へと展開する
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