#マーケティング #戦略

今回のテーマは戦略です。コンセプトに忠実な戦略から弱者の生きる道という話です。

ラーメン山岡家から戦略やマーケティングに学べることを掘り下げていきましょう。

ラーメン山岡家

出典: 枚方つーしん

ラーメン山岡家の本社は札幌ですが、店舗は全国に展開していて約170店あります。

出典: ラーメン山岡家

公式サイトには 「山岡家はスープが命」 と書かれています。手作りにこだわり、豚骨スープがベースのラーメンです。

ターゲット顧客はトラックドライバー

マーケティングの視点からラーメン山岡家を見ていきましょう。まずはターゲット顧客からです。

丸千代山岡家の大島正一経営企画室長は 「店舗のほとんどがロードサイドで、コロナ下のリモートワーク増加が追い風だった。多くの飲食業がやめている24時間営業を続けていることも売り上げ増の理由ではないか」 と説明する。山岡家は国道沿いなど郊外を対象とした店舗が中心で、トラックドライバーの利用が多い店だ。

味もこってりで長距離を走るドライバーたちの食欲をそそる。しかも約170店のうち、大型駐車場を備えた13店にはシャワー室を完備している。食事前後にシャワーを浴びて、トラック内でリラックスできるようにするためだ。こうした配慮が口コミでも伝わり、「俺たちの山岡家」 という感覚をドライバーに根付かせたのだろう。

特にコロナ下はネット通販が急激に伸び、トラック輸送量も急増した。国道沿いでドライバーのオアシスである山岡家はリピーターを増やし、22年に入ってからも好調を持続している。8月以降は19年比 20 ~ 30% の高い増収率を示している。

一部の店舗とはいえお店にはシャワールームまであります。ターゲットとするお客さんをトラックドライバーに絞っているからこそできる設備投資です。

ラーメン調理へのこだわり

ラーメン山岡家が特徴的なのは 「やることの明確化」 です。

具体的にはテイクアウトはやらずイートインのみ、セントラルキッチンは採用せず各店舗での手作りの仕込みや調理です。

様々なテークアウトを用意すれば、さらに売り上げが増えるはず。しかしあくまでラーメンはイートインにこだわる。そこには山岡家独自の 「頑固一徹」 哲学があり、この揺るぎのなさがコアファンを魅了している。

多くの外食チェーンはセントラルキッチンで主要な食材の下準備や調理を済ませ、店舗に配送する。これに対して山岡家では麺は共通ながら、ラーメンの味の核となるスープとチャーシュー、野菜類のカットは店内調理でこなす。

スープは水と豚骨を丸3日煮込み続け、各店が自信を持って客に提供する。店内では4つの大鍋 (寸胴) を使って毎日仕込み、3日間煮込み終えたスープから出していく。ネギは契約農家で栽培したもので、店内で切ることで鮮度を保つ。

新規出店の基準

新しくお店を出す場合の基準も明確です。「山岡家はスープが命」 を実現できるかです。

とりわけスープ作りは、熟練の技が欠かせない。「早くて3年かかる」 (大島室長) といい、新規出店はスープを任せられる店長が育つことを目安に決めている。

かつて無理に年19店を出し、業績に悪影響を及ぼした苦い経験がある。このため現在は新店を年間7 ~ 10程度に抑えている。

新規出店の条件は、既存店と同じようにスープを任せられる店長が育つことにしているのです。

徹底した技術指導

店長へはスープ作りの技術指導も手厚くやっているとのことです。

スープに関する技能指導は徹底している。不定期に店長を集めたスープ講習を開き、店長になってからも熟練度を高める。さらに創業者の山岡正会長が自動車で全国の店舗を1人で回り、指導していく。

ここまでこだわるので、味が劣化しないイートインだけに特化しているわけだ。

実は都心部に出店しないのも、ラーメンのこだわりに理由がある。麺をゆでる時間は7分間。忙しい都心部の消費者には待ち時間が長く感じられてしまうので、山岡家の出店先としてそぐわないとの判断だ。

学べること

ではラーメン山岡家から学べることを掘り下げていきます。

全てはコンセプトへ

ここで一度、ラーメン山岡家がやっていることの特徴を整理しておきましょう。
  • ターゲット顧客はトラックドライバー
  • お客さんからは 「俺たちの山岡家」 という感覚が根付いている
  • 手作りのラーメンにこだわり、「スープが命」 
  • セントラルキッチンではなくお店で手作り。調理提供はテイクアウトはやらずイートイン (店内での飲食) のみ
  • 新規出店の基準は、スープ作りを任せられる店長を育てられること
  • 店長を集めたスープ講習を不定期で実施。会長自らが全国の店舗を1人でまわり、スープの技術指導を徹底

こうして並べるとやっていることに一貫性があります。「山岡家はスープが命」 というコンセプトにつながっています。

逆に言えばコンセプトに合わないことは、たとえ売上や利益率が上がると期待できてもやらないと決めて捨てているわけです。ここに戦略があります。

戦略の本質

そもそも戦略とは何かに立ち返ると、戦略とは目的を達成するための 「やること」 と 「やらないこと」 の決めごとです。

目的達成への 「やること」 と 「やらないこと」 において、戦略の肝は後者の 「やらないこと」 にあります。戦略では 「あれもこれも」 ではなく 「あれかこれか」 という A or B です。算数で表現すれば足し算でやることを積み上げるのではなく引き算の発想をします。

何をやらないかが明確だからこそ、残ったやることにリソースを注力できるわけです。戦略をつくるのは 「やらないこと」 を明確にするためと言ってもいいくらいです。

弱者の生きる道

ラーメン山岡家がやっているのは大手のラーメンチェーンにはできないことです。強者ではないプレイヤーだからこそできる 「弱者の戦略」 があります。

  • 一点集中
  • 局地戦
  • 接近戦

3つをラーメン山岡家に当てはめると、

  • 一点集中: ターゲット顧客はトラックドライバー。自分たちのこだわり (差異化ポイント) をスープに見出している。イートインのみ
  • 局地戦: 都市部には出店せずロードサイドに展開
  • 接近戦: お客さんから 「俺たちの山岡家」 という親近感を持ってもらう
  • 接近戦: 店長を集めたスープ講習、会長が全国の店舗を1人でまわり直接の技術指導

いずれにも共通するのは 「一見すると非効率であり、規模の拡大が見込めないこと」 です。つまり強者である大手チェーンには取りにくいアプローチなんですよね。大手プレイヤーがマネしてくる参入障壁ができていて、大手からの差異化につながっているのです。

ポイントはやみくもに大手と違うことを小手先でやるのではなく、コンセプトに忠実で大手にはできないことです。ラーメン山岡家には 「弱者の戦略」 があり、資本のある大手ではない者の生きる道を進むヒントがあります。

まとめ

今回はラーメン山岡家を取り上げ、戦略やマーケティングに学べることを見てきました。

最後に学びのポイントをまとめておきます。

  • 戦略とは目的を達成するための 「やること」 と 「やらないこと」 の決めごと。やらないことを明確にし、リソースをやることに集中させる
  • 強者ではないプレイヤーは、強者がマネしたくてもできないことに特化する 「弱者の戦略」 が有効
  • 一見すると非効率であり、規模の拡大が見込めないこと。例えば、一点集中、局地戦、接近戦
  • やみくもに大手と違うことをやるのではなく、コンセプトに忠実な戦略から差異化をしよう