投稿日 2012/12/27

2012年に読んだおすすめの本(前編)

数えてみると、今年は280冊くらいの本を読んでました。毎月コンスタントに20-25冊くらいは読むことができ、仕事にプライベートに色々あったわりにうまく時間が作れたかなと思っています。特に平日朝の出社前に、まとまった読書時間を確保したことがよかったです。仕事を片づけないといけない時は朝も本ではなく仕事だったりもするのですが。

今回のエントリーでは今年読んだ本について書いたエントリーから、特に印象に残っているものをご紹介します。自分が読んだ本をあらためて振り返る意味でも。なお、仕事関係の書籍は対象外としました(取り上げてもマニアックな内容になりそうなので)。





勝ち続ける意志力(梅原大吾)

勝ち続ける意志力 (小学館101新書)著者はプロ格闘ゲーマーの梅原大悟氏。得意とするゲームは対戦型格闘ゲームで、ゲームセンターにあるストリートファイターとかです。

本書を一言でまとめると、「勝ち続ける意志力とは、勝つことではなく『自分が成長し続けること』を目的とすること」。

常に成長し続けたい、これって自分の価値観とドンピシャなんですよね。年齢を重ねると肉体的な衰えも起こると思いますが、経験や考え方、精神的なものも含め人としてトータルで昨日より今日、今日より明日で成長していたい、そんな価値観。

本書に出てくる印象的な内容としては、
  • 僕にとって生きることとは、チャレンジし続けること、成長し続けることだ。成長を諦めて惰性で過ごす姿は、生きているとはいえ生き生きしているとは言えない
  • 「結果を出す」ことと、「結果を出し続ける」ことは根本的に性質が異なる。勝つことに執着している人間は、勝ち続けることができない
  • 成長し続けるためにはどうすればよいか。それには変わり続けること、チャレンジし続けること。そして努力すること。自分にとって努力の適量を考える時に「その努力は10年続けられるものなのか?」と問う
勝ち続ける意志力:目的は「勝つこと」ではなく「成長し続けること」|思考の整理日記
勝ち続ける意志力(Amazonリンク)
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採用基準(伊賀泰代)

採用基準タイトルは(マッキンゼーの)採用基準ですが、書かれていることはリーダーシップについて。平易な言葉でわかりやすく、かつ本質的なことが書かれているのが本書。

リーダーがやるべきことは4つあるとし、①目標を掲げる、②先頭を走る、③決める、④伝える(コミュニケーション)。また、マッキンゼー流のリーダーシップの身につけるためには、
  • 結果や成果を出す。「成果は何か」「付加価値は何か」を意識する
  • 自分の意見・考え方を持つ(本書ではポジションを持つと表現)
  • 自分の仕事のリーダーは自分自身という当事者意識を持つ
  • 会議で積極的にホワイトボードを使うなどリードする
著者の主張で共感できるのが、1人1人にリーダーシップを持つことの重要性。リーダーは1人かもしれないけど、「リーダーシップ」を持つのは1人でなくてもよい、むしろ全員が何かしらのリーダーシップを持つことが大事。そういう組織のほうが強い。このへんも共感できる内容でした。

今年は自分のリーダーシップをいかに高めるかを考えた1年でした。これからもリーダーシップとは、を意識したいし、実際に行動に移したいと思っています(それと結果も)。

マッキンゼーの採用基準から考える「僕らのリーダーシップ」|思考の整理日記
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ワーク・シフト ― 孤独と貧困から自由になる働き方の未来図〈2025〉(リンダ・グラットン)

ワーク・シフト ― 孤独と貧困から自由になる働き方の未来図〈2025〉この本が読者に投げかける問いは、2025年に私たちはどんなふうに働いているのか?というもの。本書がおもしろく、色々と自分事として考えさせられたのは、読んでいる中で随所に「自分の場合はどうなるのだろう?」と問いかけができる点でした。

本書から受けとったメッセージは、この先も漠然と生きるのではなく、よりよい未来を実現するために、私たち一人一人が未来について考え「じゃあどうすればよいか」と自分事化することだと理解しました。それが「主体的に築く未来」「自由で創造的な人生/社会」につながる。

主体的な行動をとることで、「今」をちょっと変え、その先に続く「未来」を変えていく。主体的に生きるために思うのは、当事者意識を持つこと・我が事化することであり、まずは自分のできることからやる。そしてコントロールできる範囲を広げていくこと。(コントロールできない)自分の身に何が起こるかよりも、焦点を当てるべきは起こったことに対して自分はどう解釈し反応するか、どう行動するか。これが大事と思っています。

もう1つ、本書に出てきた問いで考えさせられたのは、自分の専門性をいかに磨くかについての3つの質問でした。
  • その専門技能は価値を生み出せるのか?
  • その専門技能は希少性があるか?
  • その専門技能はまねされにくいか?
個人のキャリアにも当てはまるし、組織や企業の戦略やマーケティングにも通用する問い。自分の価値は何か?これからも問い続けたい質問です。

書籍「ワーク・シフト」まとめ:孤独と貧困から自由になる主体的な生き方|思考の整理日記
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自分でやったほうが早い病(小倉広)

自分でやった方が早い病 (星海社新書)本書が投げかける問題設定は、「この仕事は自分でやってしまったほうが早い」と思い、いつの間にか色々と自分が抱えている状況を病と捉えるべきだということ。この病の原因や治療法、そもそもなぜ克服しなければいけないのか、本当の仕事の任せ方や人の育て方も含め指南してくれる本です。

単にまわりに仕事を振るノウハウやテクニック的な話ではなく、なぜ「自分でやったほうが早い病」を克服しなければいけないのか。そのためにはどう考え方を変えていかなければならないのか。病を克服したあるべき姿(What)に対して、理由と(Why)マインドを変える処方箋(How)が書かれていたのが良かったです。

詳細は下記エントリーを参照いただく、もしくは本書を手に取っていただければと思いますが、この本を読んでからは本当に自分がやるべきこととそうではないことをより意識するようになりました。

誰も幸せにしない「自分がやった方が早い病」を克服する仕事の任せ方|思考の整理日記
自分でやった方が早い病(Amazonリンク)



ネット・バカ―インターネットがわたしたちの脳にしていること(ニコラス・G・カー)

ネット・バカ インターネットがわたしたちの脳にしていること2012年は特にプライベートでのネット利用時間を意図的に減らしてみた1年でした。それまでは朝起きてから夜寝るまでの間、ネット常時接続状態。リアルタイムウェブ中毒です。でもふと思ったのが、これって本当に自分がやるべきことなのか、本当に必要なことなのか、と。

そんな頃に読んだのが本書で、主題は、ネットを当たり前のように使うようなり人間の脳に変化が起こっている、具体的には脳が注意力散漫になることへの警鐘です。注意力散漫になるとは逆に言えば1つのことに長く集中できないという状態(頻繁にツイッターを見る、RSSをチェックする、メッセージ受信のアラートで作業を中断しメールを確認する)。この回数/頻度が多いほどそれ以外のことを長くやり続けることが困難になります。

とはいえ、じゃあネットを使わない生活に戻れるかというとそれは現実的ではない。結局のところ、ネット利用時間で無駄な内容(無目的なウェブ閲覧)をなくし、目的を持ってネットを使うようにしました。なんとなしにSNSやスマホを使わないようにすること。ネットの付き合いはこれからも試行錯誤が続きそうですが、本書を読んだのは問題意識を持つためのいいきっかけになりました。

リアルタイムウェブ中毒だった自分と今の自分|思考の整理日記
ネット・バカ インターネットがわたしたちの脳にしていること(Amazonリンク)


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他にもまだご紹介したい本について載せる予定が、長くなったので残りは別エントリーで更新します。今回は生き方とか考え方にフォーカスした本を中心に選びました。後半ではもう少しビジネスよりの、戦略とかビジネスモデルについて書かれた本を載せる予定です。

後編はこちら


投稿日 2012/12/24

書籍 MEDIA MAKERS に書かれていた 「メディア変化がコンテンツをも変える」 論点がおもしろい




MEDIA MAKERS - 社会が動く 「影響力」 の正体 という本をご紹介します。

メディアに関する様々な論点が提示され、随所に具体例が書かれています。抽象的な内容で終わらず、読み応えのある本でした。


投稿日 2012/12/22

重宝しているGunosyから考えるネットの本質と課題

情報収集のツールは色々とありますが、その中でこれはオススメというのがGunosy(グノシー)です。ネット上のニュースやブログ記事を対象としたキュレーションツールで、気づけばほぼ毎日使ってます。

■Gunosyとは

Gunosyの特徴は以下の3つと思っています。
  • シンプルな仕組み:アカウントをつくるとユーザーそれぞれに最適化されたニュース記事を配信してくれます。アカウント登録はTwitter、Facebook、はてなブックマークのどれかでログイン。ピックアップしてくれるニュース記事等の閲覧方法は、GunosyのWebページを開くか、1日1回のメール配信の設定の2通り。Webページとメールには記事タイトルと本文見出しがリンク付で表示され、毎日更新されます。
  • 毎日のメール配信:メール配信というプッシュ型の通知が意外に便利だったりします。いつの間にかGunosyからのメールチェックが毎日の日課になりました。大抵のメール配信は来ること自体が面倒に感じるんですが、Gunosyはそれが全然ないんですよね。メール配信の設定は2つあって、何時に送ってもらうかの配信時刻と1回あたり何個記事を表示させるかの記事数を決めることができます。今のところは、朝5時配信で、10個記事と設定しています。欲を言えば朝のメール配信は3時とか4時も可能にしてほしいところ。
  • とにかく精度が高い:キュレーションツールの肝はどれだけユーザーごとに最適化できるか。Gunosyの精度は良いです。メールで10個の記事が送られてきますが、ほぼ1つ以上は気になる記事がありクリックしています。だいたい10個中、1~3個くらい。RSSに比べると打率はかなり高いし、良好な精度だからこそ毎日のメール配信も嫌じゃない。

■なぜGunosyの精度は高いのか

Gunosyを使っていての感触として、最適記事を抽出するのに活用されているのは、
  • 人気記事や話題性のあるもの:はてブ、ツイート、いいね!がたくさん付いているものなど、よくクリックされている記事がピックアップされる傾向がある
  • Twitterなどのログインツール内情報の利用:ツイッターであればユーザーのツイート内容などユーザー情報を参考に最適記事を選んでいる
  • Gunosyでの行動履歴:どの記事をユーザーがクリックしたかの情報が蓄積される。ユーザーがGunosyを使えば使うほどユーザーに最適化された記事が配信される仕組み
で、特に2点目と3点目のバランスが良く、結果的に高い精度が実現できていると感じます。

Gunosyを開発・立ち上げた東大大学院生3人へのインタビュー記事を見ると、「他のキュレーションサービスのほとんどは自分のSNSタイムライン上で『つながりのある人の間で話題になっている情報』を配信するものが多いのに対し、Gunosyはユーザーのソーシャルグラフではなく、あくまで自分自身の過去のポストやソーシャル上のアクティビティを分析対象として記事を選ぶ仕組み」というようなことが書かれています。(参考:「精度高すぎ」と話題のニュースキュレーション『Gunosy』は、どんな設計思想で作られているのか?|エンジニアtype

自分のアクティビティが分析対象とは、Gunosy配信の中から気になる記事をクリックするほど精度が高くなっていくのがまさにそれです。クリックする=その話題に興味があると判断され、次回以降のニュース記事ピックアップに活かされる。使えば使うほどユーザーに最適化された仕組みになっていく。

以前のエントリーでキュレーションアプリのZiteについて取り上げましたが、Ziteも同じような感じです。こっちは配信記事が英語のサイトなので、英語の勉強にもなります。(参考:重宝してるアプリziteをヒントに4層で考えるTVのパーソナライズ化|思考の整理日記

■フィルターバブルと転職サービスへの挑戦

上のインタビュー記事の中にあったことで注目したのが、Gunosyでは「フィルターバブル」についても考慮、課題設定としている点です。

フィルターバブルというのは、情報の偏りすぎることでユーザーに不利益をもたらすのではという懸念です。過度にキュレーションすることで、ユーザーの興味や嗜好に合致しない情報は全部排除されてしまいかねません。

でも、実は除かれた情報の中にはユーザーにとって有益な内容もあり得るわけで、あまりに選定しすぎるのは良くないのではという問題意識。イメージはユーザーが自分の興味関心だけの泡の中に閉じこもり、未知の外の世界を知る機会がなくなる感じでしょうか。(参考:情報社会の未来:私たちはネットの世界に知らない間に閉じこもってしまうのか|思考の整理日記

だから時々そのバブルの外にも注目すべきと思うのですが、Gunosyではこの問題にどう対処するかはこれからの課題。要はキュレーションするのをどこまで絞るといいかのバランスで、ここは個人的にも注目しておきたい取り組みです。

もう1つ、Gunosyのサービスはニュース記事配信以外にもGunosy Careerという転職サービスもあります(正確には13年春のローンチを目標)。ニュース記事抽出/配信のデータマイニングやレコメンド技術を転職サービスに応用しようというもの。Gunosyの特徴である登録・設定・使い勝手のシンプルさや、高いマッチング精度を転職市場でも実現できるか。期待したいです。

■ネットの本質から考える今の「ネット上のバランスの悪さ」

何かと何かをマッチングさせる領域は、まだまだこれから発展するのではと思っています。マッチングとは単純化すればAとBの異なる要素をつなげることです。Gunosyでは、A:ネット上の情報、B:ユーザーをマッチングさせる仕組みだし、転職サービスのGunosy CareerはA:企業とB:人をマッチングさせようというもの。人と人をつなげるサービスはFacebookやLinkedinとかLineがあったり、情報と人を結ぶのはGoogleの検索サービスもそうですよね。

これらのマッチングの仕組みで共通しているのはネット上でつながっていること。インターネットが当たり前のように普及したことでネット上の情報量が爆発的に増えたけど、一方で増加する情報に追い付けていないのはマッチングだと思っています。必要な情報や人を探したり、つながるための仕組み。確かに何か知りたい時はグーグルの検索があるし、フェイスブックやラインで気軽に人とコミュニケーションが取れますが、まだ十分ではないように思います。

何が言いたいかと言うと、ネットは人やモノの情報が文字通り網の目のように入り組んだ世界ですが、ネットを構成する一つ一つのつながりが少ないor最適化されていなく、増える情報量に対してマッチングが不十分ということです。インターネットの本質って、人やモノという「個の情報発信」と「双方向性」なのではと思います。前者の情報発信はネットで実現できているけど、後者の双方向性、つまりマッチングとかつながりはこれからの領域。今はまだ情報量とマッチングのバランスが悪い状態です。だからこそ、Gunosyのようなテクノロジーでこれを解決するプレイヤーには期待したいです。

人や企業にはいろんなニーズがあり、中身は千差万別です。それらをどうつなげるか。ネットが進化してもう1つ上のレベルになるための課題と思っています。


※参考情報

Gunosy(グノシー)
「精度高すぎ」と話題のニュースキュレーション『Gunosy』は、どんな設計思想で作られているのか?|エンジニアtype
Gunosyが会社になりました。|Gunosy blog
あなたに最適化したニュースを届ける「Gunosy」が会社化|Itmediaニュース
重宝してるアプリziteをヒントに4層で考えるTVのパーソナライズ化|思考の整理日記
情報社会の未来:私たちはネットの世界に知らない間に閉じこもってしまうのか|思考の整理日記
Gunosy Career


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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

ブログ以外にマーケティングレターを毎週1万字で配信しています。音声配信は Podcast, Spotify, Amazon music, stand.fm からどうぞ。

名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。