投稿日 2024/04/26

マーケティングへの誤解、マーケティングの本来の役割

#マーケティング

マーケティングのことを、広告宣伝のことだけだと思っていないでしょうか?

マーケティングコミュニケーションは大事ですが、広告宣伝はマーケティング全体の一部に過ぎません。商品の企画からその伝え方や届け方に至るまで、マーケティングはビジネスの核心を成す広い範囲での活動です。

今回は、マーケティングへのよくある誤解、誤解により生じる部門間連携の断絶、そして、ではマーケティングの真の役割は何かについて解説します。

マーケティングへの誤解とその影響


まずはマーケティングへの誤解から紐解いていきましょう。

マーケティングへの誤解


企業においてマーケティングとは、広告宣伝や新規顧客獲得に限定された活動と思われがちです。

もちろんこれらも大事ですが、本来マーケティングはもっと広い範囲のビジネス活動です。

マーケティングとは、商品の企画から、その商品の良さや魅力を伝え、どのように届けるかまでを含む全体的な過程を指します。しかし、プロセスの後のほうの 「伝える」 や 「届ける」 ばかりで、商品の質や独自性などの商品力に目が向いていない企業は少なくありません。

このような状況は、商品部門と広告宣伝部門の間に分断を生じさせ、結果として、適切なマーケティングの展開を妨げています。

商品部と宣伝部の分断から生じること


商品部と宣伝部の断絶がある限り、「商品を作るための顧客理解」 や 「宣伝するためのコンセプト調査」 のように、それぞれが限定的な顧客理解を進めることになり、結果として事業全体で望む成果を得られにくくなってしまいます。

もし商品部と広告宣伝部が一緒になっての顧客理解ができるようになると、「お客さんのために商品にはこうしなければいけない」 、「お客さんのこの文脈に対して商品はこのような宣伝をするといい」 など、商品部と宣伝部で統一された顧客起点からマーケティングができるようになります。

社外への影響


マーケティングへの誤解があるままだと、その影響は社内だけでなく社外にも及びます。「マーケティング = 広告宣伝」 に起因するミスマッチが起こるのです。

マーケティングの理解への範囲が限定的で、顧客理解や自社商品の強み、提供する顧客価値を理解していないまま、たとえば外部の広告会社に発注を依頼しても、期待する成果にはつながらないでしょう。

こうした問題が起こる要因は、広告業務を発注する事業会社側がマーケティングを理解していなかったり、理解している範囲が広告のコミュニケーション部分だけだからです。

コミュニケーション以前の問題として、どういうお客さんに対して、商品の UVP (ユニークバリュープロポジション (商品からの独自の提供価値) ) を明確にできていれば、しっかりと社外の広告会社に伝えられます。広告会社も発注主のニーズをくみ取り、成果物をつくりやすくなります。

しかし、具体的な情報や指示がないと、たとえば 「当社の商品を使うとき、お客さんはこんなふうに喜んでもらえている」 「この商品のターゲット顧客にはこういう顧客インサイトがあり、その顧客文脈 (利用するシチュエーション) に合う、商品のこういう提供価値を生かせるマーケティングキャンペーンをつくってください」 というディレクションやブリーフがなければ、「SNS でバズる企画をつくってください」 というだけの発注になってしまうのです


本来のマーケティングの役割


では、こうしたミスマッチを起こさないためにはどうすればいいのでしょうか?

マーケティングのプロセスの順番


マーケティングでは、まず 「誰に」 と 「何を」 があって、その上で 「どう伝えるか」 という順番が大事です。

5W1H のフレームワークを用いると、Who (ターゲット顧客) と What (顧客への提供価値) が先にあり、その後に How (伝え方) が続くという順になります。

これをマーケティングのプロセスにし、その上で会社や事業ごとでのマーケティングの役割を具体的にわかりやすく言語化することが重要です。

具体例での当てはめ


ノンカフェインのエナジードリンクを例に取ると、次のようになります。
  1. ターゲット顧客の設定と理解 [Who]
    ターゲット顧客を、カフェインをあまり摂りたくないと思っている人や、カフェイン摂取を避けたい理由がある人とします。たとえば、妊娠中の女性、特定の健康上の制約を抱える人、またはカフェインに敏感な人々が該当します。
    こうした人たちの生活文脈、持っている価値観やものの見方、求めている本当の望みや抱えている不満などのターゲット顧客の習慣や行動、奥にある心理までを深く理解します

  2. 提供価値 [What]
    ノンカフェインのエナジードリンクの提供価値は、カフェインを摂取することなく、カフェインのことを気にすることなくエネルギーをチャージできることです。
    健康的でバランスの取れたライフスタイルになれるという価値を提供します

  3. コミュニケーション [How]
    マーケティングコミュニケーションでは、カフェインレスのエナジードリンクという特徴を打ち出し、カフェイン摂取に対する不安を和らげる飲料体験に焦点を当てます。
    また、カフェインに対する正しい知識を伝え、誤解や懸念を解消することも併せてコミュニケーションの中で行います。カフェインを適切に摂ることへの関心を生み出すことを目指します

このようにマーケティングの役割を具体的に言語化し、全体で一貫性のあるプロセスとして統一することで、効果的な展開ができます。


まとめ


今回は、マーケティングについて、よくある誤解と、本来のマーケティングの役割とは何かを考察しました。

最後にポイントをまとめておきます。

  • マーケティングは広告宣伝や新規顧客の獲得だけに限らず、商品企画から伝え方・届け方までの全過程を含む広範なビジネス活動

  • マーケティングの理解と活動範囲が限定的だと、商品部門と広告宣伝部門の連携ができなく、また社外との関係会社ともミスコミュニケーションが起こるなど、顧客理解が分断されマーケティングは有効に機能しない

  • マーケティングは 「誰に (ターゲット顧客) 」 「何を (顧客価値) 」 を明確にし、その上で 「どう伝えるか・届けるか」 を決めていく。それぞれのプロセスでのやることの言語化、全体での一貫性のある統一が大事


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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。