2013/01/26

ファブラボ4.0:人工物が生物のようになる未来世界

ロングテールやフリーミアムの概念を提唱したクリス・アンダーソンが次に注目しているのが「ものづくり革命」です。以前のエントリーでも取り上げましたが、Webの世界で起こった革命がモノづくりでも起こる、としています。参考:「MAKERS」書評:Web世界で起こった革命がモノづくりでも起こる未来は明るいのか?|思考の整理日記

クリス・アンダーソンの著書「MAKERS―21世紀の産業革命が始まる」は概念の説明が主でしたが、こちらの「FabLife ―デジタルファブリケーションから生まれる『つくりかたの未来』」という本は、事例を中心に書かれたものです。MITメディアラボの人気授業「(ほぼ)なんでもつくる方法」体験記、世界各地のファブラボの活動など、ムーブメントの最前線が紹介されています。

■ファブラボの4つの進化構想

「Fablife」のほうでおもしろかったのは、未来のものづくりの進化構想でした。

本書では、デジタル工作機械をシェアし実際に顔をあわせてつくるための知識・スキルの交換・共有を行なう工房をファブラボと呼んでいます。このファブラボの進化構想の段階として、1.0、2.0、3.0、4.0があると言います。
  • ファブラボ1.0:現在、取り組まれている3Dプリンタなどからものをつくる段階。素材があり、それを自分たちで加工しつくる
  • ファブラボ2.0:1.0では3Dプリンタなどの工作機械は市販のものを買うことになりますが、2.0では工作機械そのものを自分たちでつくれる段階。ファブラボは工作機械を使う場所から工作機械をつくる場所へ
  • ファブラボ3.0:つくったものの分解・組み立てができる。つくったものでも不要になれば自分たちで簡単に分解し部品に戻し、他のものにまた組み立てられるようになる。本書では「人工物の循環」と呼んでいる
  • ファブラボ4.0:もの自身が自律的に動き自らを「変形」、「分解」し「組み立てたり」するようになる。これはものを構成する最小単位にコンピューターと動力装置(アクチュエーター)が組み込まれることで実現される。ブログラムできる物質(Program Matter)とも呼ばれる。人工物が知能と駆動系を持つことでまるで生物のようになる

■ファブラボ4.0をイメージしてみる

興味深いと思ったのは、最後のファブラボ4.0。

生物のような人工物?それってどういうこと?というのがまず始めに思ったことでした。

イメージしやすいのは人工物が自らの色や形を、自らの意思で変えることです。色を変えるというのはカメレオンのように、建造物であればまわりの景観に合わせて変わる。完全に自らの意思ではなくとも、人の指示により色を変えることもできそうです。車であればホワイトがデフォルトだけど、その日の気分で黒やブルーにする、とか。

色が変わる以上にインパクトがあるのは、形状そのものが変わることです。自動車を例に取れば、乗車人数に合わせて軽自動車サイズから、SUVに自由に変えられるというイメージだと思います。走行する道路に合わせて、普通車からスポーツカータイプ、オフロードでは4WDになる、みたいな。これも人間が変更するようにコントロールできたり、車自らが判断して変わることもできるようになるのかもしれません。

形が物体自らの意思で変えられるということは、自己修復/再生ができるということです。人間も含め動物はケガをしても、ある程度の損傷範囲であれば細胞が再生し一定時間後に元通りの身体になります。ひざを擦りむいても放っておいたらかさぶたを経ていつの間にか傷が治るように、モノでも多少の損傷や故障であれば自らの判断で直せる。自己回復以上の破壊であれば死を迎える。ここまでのレベルになると、「人工物が生物のようになる」が少しリアルにイメージできます。

表面的には損傷がわからないようなレベルでも、私たちが新陳代謝を経て日々細胞が新しく生まれ変わるように、物体も人間には見えない範囲で時々刻々で構成要素を新しくできるようになるかもしれません。プログラムのバグがあれば、悪性ガンのような物体に悪影響を及ぼす構成要素が突然変異で生まれる、ということが起こるのかも。

★  ★  ★

ファブラボの進化構想で説明された4つの段階で、3.0まではまぁできそうだよね、という感じの印象でした(現実に技術的にできるようになりそれを低コストでの実現は、それはそれでハードル高いと思いますが)。

4.0は上記で見たように、3.0までとは別次元の世界だという印象です。知能と動力を与えられたモノがあたかも生物のように振る舞う。そもそも技術的に実現可能かもあるし、仮にできたとしてそれは社会に受け入れられるのか。なんかSF映画とかでありそうなテーマですが、技術/テクノロジーの話よりも、生物とは・人間とはの倫理的な議論を呼びそうです。未来では、クローン人間が普通にいて、人工物も生物のように振る舞う世界なのかもしれません。

こんな感じで「FabLife」という本に書かれていたファブラボの進化構想は色々と妄想できておもしろかったです。


※参考情報
「MAKERS」書評:Web世界で起こった革命がモノづくりでも起こる未来は明るいのか?|思考の整理日記


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