2015/12/19

書評「論点思考」(内田和成)




以前に読んだ本を、しばらく時間が経った後に読むことがあります。

読書体験としておもしろいと思うのは、二度目に読むのが例えば数年後だと、本の内容によっては、一度目に読んだ時とは違った印象や学びが得られることです。

本に書かれていることの大きなテーマの認識は、すでに過去に読んでいるのでズレることなく読み進むことができます。ただ、章ごとの具体的な内容に入っていくと、書かれていることがあたかも初めて読むような新鮮な感覚になることがあります。

今回のエントリーでご紹介する本 論点思考 がそうでした。

本書が発売されたのは2010年です。今は2015年末なので、二度目に読んだ今回は、一度目からは 4 ~ 5年は経過しています。

今回読んだ時に印象に残ったのは、「論点は、一見してわかる単なる問題点 (現象や観察事実) ではない」ことでした。

本書では論点の定義を「解くべき問題」としています。目の前の事象が論点にならないというのは、現象はあくまで結果ということです。解くべき課題設定かどうかという視点で見ると、問題であっても論点にはなり得ないのです。

本書で説明されていた具体例は、会社に不法に侵入者が入り盗難被害にあったことでした。会社が被害にあったことは問題ではあるものの、これ自体は事象であり解くべき論点にはなっていません。

では論点とは何になるのか。本書では論点候補として4つ挙げられています。
  • 不法侵入や盗難を防げなかった → 防犯体制をどう強化するか
  • 会社の物品盗難による損害や今後のリスク →損失額や、盗難に伴ってさらに発生する被害リスクをどう評価するか
  • 侵入者や盗難発生の社内報告が遅れた → 情報共有の仕組みをどうつくるか
  • 盗難被害が報道され会社のイメージが低下 → イメージダウンをどう回復するか

「会社が盗難に遭った」では、どう次のアクションを取るかが具体的に考えにくいでしょう。その理由は、これが単に発生事象であり、本書でいうところの論点 (解くべき課題) になっていないからです。

上記4点に落とし込めば、具体的に何を検討するべきなのか、そして、それら検討事項のうちどれを対応し、どれの優先順位を下げるのかを考えることができます。

本書では、問題として捉えてしまいがちな現象や観察事実を、いかに論点にするかについて、著者のやり方/考え方、経験談が具体的に説明されています。

本書の問題提起は、問題解決の前提としてそもそもの問題設定は正しいか、という視点です。

問題解決はビジネスで成果をあげる際にとても重要なものだが、暗黙の前提として「正しい問題」を解いていることを想定している。

しかし、考えてみてほしい。あなたがいま解いている問題、あるいは、これから解こうとしている問題は正しいのか、他に解くべき問題があるのではないかと。

ここを一度考えてみようというのが本書の狙いの一つでもある。




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多田 翼 (書いた人)