投稿日 2016/04/10

日本人ならではのスマホの使い方に見る日本の文化と歴史




今回は、日本人ならではのスマートフォンの使い方の特徴を書いています。背景にある、日本の文化や歴史についても考えます。

外資系の企業に勤めていると、同僚と話題になることが、各国での人々の生活や習慣の違いについてです。

少し前に、日本人ならではのスマホの使い方はどんなものがあるかという話になりました。日本人のスマホ利用を考えたときに、自分の身のまわりを見ていて思う特徴は3つありました。興味深いのは、それぞれの背景には日本の文化や歴史が垣間見えることです。

  • つながりへの過剰な意識
  • スマホカバーやアクセサリーをつけている人が多い
  • 制約の中で創意工夫が生まれる

以下、それぞれについてご説明します。


1. つながりへの過剰な意識


友人や知人とのつながりが、ときに過剰なほど意識されることです。

具体的な現象としては、食事中や直接友だちと会っている最中にお互いが別の人と Line をしているなどです。

また、相手が自分のメッセージを既読したのに返答がない、ラインの既読スルーや既読無視がさかんに言われるのも、日本特有な気がします。

根底には日本人が大切にする和の価値観があるのではないでしょうか。いつも誰かとつながっていたいという気持ちは、常に和を感じていないと不安になる心理があるように思います。

食事中ですら、目の前の相手ではなく他の人に Line 等でメッセージを返さないといけないと思ってしまうのも、仲の良いコミュニティにおいて自分が和を乱したくない感情があるのではないでしょうか。

この現象はスマホ以前の携帯電話でのメールのやりとりでも傾向としてありました。ただ、スマホやチャット機能が普及することで、より顕在化したように見えます。


2. スマホカバーやアクセサリーをつけている人が多い


スマホのカバーやデコレーションを多くの人がつけているのも、日本の特徴ではと感じます。

みんなと同じ iPhone がいいと思いつつ、カバーやケース、イヤホンジャックにつけるアクセサリー、あるいは、のぞき見防止のシールもキャラクターなどがデザインされているものが使われます。

外国の人だとカバーをつけていても、側面だけのバンパーや裏面が覆われるケースタイプが多い気がします。一方の日本では、スマホケースはブックカバーのような形式をよく見かけます。スマホという大事な物を包んでおきたいと思う心理があるのかもしれません。

ガラケー時代ではストラップで個性が表現されていました。スマホになりストラップは見られなくなった代わりに、カバーなどの付属品で個性を出しています。

興味深いと思うのは、本体ではなく周辺のアクセサリーを工夫して個性的にしている点です (本体はまわりと同じ iPhone がいいと思っている)。


3. 制約の中で創意工夫が生まれる


Instagram や Twitter を見ていると、ハッシュタグを複数使って、本文ではなくハッシュタグで言いたいことが表現されている投稿を見かけることがあります。

例えば、「#旅行 #疲れた #眠い #楽しかった #夏休み最後の思い出」 です。

ハッシュタグはもともとは主文に対する従属的な位置づけです。Instagram であれば、ハッシュタグをうまく使って検索から見つけてもらう手段であり、あくまでメインは画像や本文にあります。

日本人特有の現象だと思うのは、表現における制約やルールが与えられれば、その中で独自の使い方が発展することです。

90年台前半にポケベルが人気だった頃、当時の女子中高生は数字や記号だけでメッセージをつくり、ポケベル上で会話がされていました (例えば、0[86- 1051210100[7 で 「おかえりー どこに行ってたのかな」 と読むらしいです)。

自分が伝えたいことやコミュニケーション手段に制約があれば、本来はコミュニケーションの多様性は失われるはずです。しかし、逆で制約があるからこそ発展し、独自の使われ方がされる現状は日本ならではだと思います。

制約の中で表現が発展したケースは、俳句や短歌も同じです。

日本には昔、和歌に対して和歌で返すという返歌の文化がありました。普通に考えれば、制約がある歌でコミュニケーションをするよりも、自由な形式で思いを伝えたほうが合理的です。

しかし、日本ではそうは考えられませんでした。あえて制約の中で表現をつくり出すことで、独自の文化が育まれたのです。

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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。