2016/10/06

世界最先端の経営学のイノベーション理論 「両利きの経営」 は、ビジネスパーソンのキャリア形成にも示唆を与えてくれる


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書籍 ビジネススクールでは学べない世界最先端の経営学 に 「両利きの経営」 という考え方が取り上げられています。


両利きの経営とは


世界の経営学で最も研究されているイノベーション理論の基礎で、英語では Ambidexterity と表現されます (両利きの経営という言葉は本書で使われています) 。

両利きの経営の基本コンセプトは、まるで右手と左手が上手に使える人のように、「知の探索」 と 「知の深化」 について高い次元でバランスを取る経営です。

イノベーションのために 「知」 を獲得するための、「探索」 「深化」 という2つの方向性です。

  • 知の探索:企業が知の範囲を広げるために新しい知を探す行動。経営学では Exploration と呼ぶ
  • 知の深化:すでに持っている知識に対して理解を深め、必要に応じて改良を重ねること。経営学では Exploitation と呼ぶ


「知の探索」 と 「知の深化」 をバランスよく


経営学での研究結果で示されているのは、知の探索か知の深化のどちらかに偏りすぎてはいけなく、2つのバランスが大切であることです。また、研究から企業組織は中長期的には 「知の深化」 に注力し、「知の探索」 はなおざりにする傾向があるそうです。

「知の探索」 は労力のわりに成果がすぐには出にくいものです。よって、企業は新しい知を探すよりも、すでにある知を改善し深めるという 「知の深化」 に本質的に流れる傾向があるというのは理解できます。

事業が成功するほど知の探索を怠りがちになり、結果、中長期的なイノベーションが停滞するというリスクが企業組織には内在しています。


「両利きの経営」 は個人にも当てはまる


「知の探索」 と 「知の深化」 をいかにバランスよく行なうか。企業は本質的には知の深化に偏る傾向がある。これらの指摘は、企業組織だけではなく、個人にも示唆があります。

例えば、自分の知識や専門能力を高めたいと考えた場合、有効なのは今ある専門分野を強化することです。これは両利きの経営でいう 「知の深化」 にあたります。

一方で、今ある能力を高めるだけでは、専門性は深まっても広げることは難しいでしょう。新しい知識や技術のためには、既存領域ではない範囲に視野を広げる必要があります。これは 「知の探索」 です。


「知の探索」 と 「知の深化」 の最適な配分は?


興味深いと思う論点は、個人あるいは企業において 「知の探索」 と 「知の深化」 をどの程度の配分で行うかです。

ヒントになるのは、Google の 「70 : 20 : 10」 というプロジェクト管理ルールです。各プロジェクトをコアビジネス、成長プロダクト、新規プロジェクトの3つのフェーズに分け、リソース配分を 7 : 2 : 1 にするという考え方です。

書籍 How Google Works (ハウ・グーグル・ワークス) - 私たちの働き方とマネジメント からの引用です。

2002年の時点で、グーグルはまだプロジェクトを重要な順に並べた 「トップ100リスト」 をもとに、リソースの配分やプロジェクトのポートフォリオを決めていた。

だが成長にともなって、このシンプルな仕組みではスケールすることが難しいという懸念が強まった。忌まわしき 「ノー」 の文化がじわじわと広がるのではないかという不安もあった。

そこである日の午後、セルゲイはトップ100リストを見直し、プロジェクトを三つのグループに振り分けた。

プロジェクトのほぼ 70% はコアビジネスである検索と検索連動型広告に関するもので、約 20% が成功の兆しが見えはじめた成長プロジェクト、残りの約 10% が失敗のリスクは高いが、成功すれば大きなリターンが見込めるまったく新しい取り組みだった。

それを叩き台に長い議論を重ねた結果、「70対20対10」 をリソース配分のルールにするという結論に達した。リソースの 70% をコアビジネスに、20% を成長プロダクトに、10% を新規プロジェクトに充てるのである。

コアビジネス (70%) 、成長プロダクト (20%) 、新規プロジェクト (10%) の3つを、知の探索か知の深化の考え方に当てはめてみます。

70% のコアビジネスは知の深化、10% の新規プロジェクトは知の探索です。残り 20% の成長プロダクトは、どちらにも当てはまります。

つまり、知の探索と知の深化の最適な配分について、Google の 70 : 20 : 10 ルールからの示唆は、知の探索は最低でも 10% 、多くても 30% 程度がよいということになります。

  • 知の探索 : 知の深化 = 1 : 9 (現在の専門分野の強化を重視)
  • 知の探索 : 知の深化 = 3 : 7 (新しい専門分野を模索)



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多田 翼 (書いた人)


外資系 IT 会社にて 「シニア マーケティングリサーチ マネージャー」 (LinkedIn) 。

1981年 (昭和56年) 生まれ。名古屋出身。学生時代は京都。家族4人で東京23区内に在住、2人の子どもの父親。気分転換は毎朝1時間のランニング。

書いている内容は、所属組織や会社の正式見解ではなく個人の見解です。