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イノベーションの理論 (両利きの経営) から、自分を成長させるためにどうすればよいかを考えます。
エントリー内容です。
- 両利きの経営とは
- 「知の探索」 と 「知の深化」 をバランスよく
- Google のやり方に学ぶ最適な配分
両利きの経営とは
書籍 ビジネススクールでは学べない世界最先端の経営学 に、「両利きの経営」 という考え方が紹介されています。
両利きの経営とは、世界の経営学で最も研究されているイノベーション理論の基礎で、英語では Ambidexterity と表現されます。
両利きの経営の基本コンセプトは、まるで右手と左手が上手に使える人のように、「知の探索」 と 「知の深化」 について高い次元でバランスを取る経営です。
- 知の探索:企業が知の範囲を広げるために新しい知を探す行動。経営学では Exploration と呼ぶ
- 知の深化:すでに持っている知識に対して理解を深め、必要に応じて改良を重ねること。経営学では Exploitation と呼ぶ
イノベーションのために 「知」 を獲得するための、探索という対象を広げ、深化という深掘りをするという2つの方向性です。
「知の探索」 と 「知の深化」 をバランスよく
経営学での研究結果で示されているのは、知の探索か知の深化のどちらかに偏りすぎてはいけなく、2つのバランスが大切であることです。また、研究から企業組織は中長期的には 「知の深化」 に注力し、「知の探索」 は後回しになる傾向があるそうです。
「知の探索」 は労力のわりに、成果がすぐには出にくいものです。企業は新しい知を探すよりも、すでにある知を改善し深めるという 「知の深化」 に本質的に流れるのです。
事業が成功するほど知の探索を怠りがちになります。結果、中長期的なイノベーションが停滞するというリスクが企業組織には内在しています。
「両利きの経営」 は個人にも当てはまる
「知の探索」 と 「知の深化」 をいかにバランスよく行なうか、企業は本質的には知の深化に偏る傾向があるという指摘は、企業組織だけではなく、個人にも示唆があります。
例えば、自分の知識や専門能力を高めたいと考えた場合、有効なのは今ある専門分野を強化することです。これは両利きの経営でいう 「知の深化」 にあたります。
一方で、今ある能力を高めるだけでは、専門性は深まっても広げることは難しいでしょう。新しい知識や技術のためには、既存領域ではない範囲に視野を広げる必要があります。これは 「知の探索」 です。
「知の探索」 と 「知の深化」 の最適な配分
では、個人あるいは企業において 「知の探索」 と 「知の深化」 をどの程度の配分で行うとよいのでしょうか?
Google のプロジェクト管理ルール
ヒントになるのは、Google の 「70 : 20 : 10」 というプロジェクト管理ルールです。各プロジェクトをコアビジネス、成長プロダクト、新規プロジェクトの3つのフェーズに分け、リソース配分を 7 : 2 : 1 にするという考え方です。
以下は、書籍 How Google Works - 私たちの働き方とマネジメント からの引用です。
2002年の時点で、グーグルはまだプロジェクトを重要な順に並べた 「トップ100リスト」 をもとに、リソースの配分やプロジェクトのポートフォリオを決めていた。
だが成長にともなって、このシンプルな仕組みではスケールすることが難しいという懸念が強まった。忌まわしき 「ノー」 の文化がじわじわと広がるのではないかという不安もあった。
そこである日の午後、セルゲイはトップ100リストを見直し、プロジェクトを三つのグループに振り分けた。
プロジェクトのほぼ 70% はコアビジネスである検索と検索連動型広告に関するもので、約 20% が成功の兆しが見えはじめた成長プロジェクト、残りの約 10% が失敗のリスクは高いが、成功すれば大きなリターンが見込めるまったく新しい取り組みだった。
それを叩き台に長い議論を重ねた結果、「70対20対10」 をリソース配分のルールにするという結論に達した。リソースの 70% をコアビジネスに、20% を成長プロダクトに、10% を新規プロジェクトに充てるのである。
(引用:How Google Works - 私たちの働き方とマネジメント)
Google からの示唆
コアビジネス (70%) 、成長プロダクト (20%) 、新規プロジェクト (10%) の3つを、知の探索か知の深化の考え方に当てはめてみます。
70% のコアビジネスは知の深化、10% の新規プロジェクトは知の探索です。残り 20% の成長プロダクトは、どちらにも当てはまります。
つまり、知の探索と知の深化の最適な配分について、Google の 70 : 20 : 10 ルールからの示唆は、知の探索は最低でも 10% 、多くても 30% 程度がよいということです。
- 知の探索 : 知の深化 = 1 : 9 (現在の専門分野の強化を重視)
- 知の探索 : 知の深化 = 3 : 7 (新しい専門分野を模索)