投稿日 2025/03/27

事例マーケティングの効果的な使い方とは?導入の 「Before」 と 「After」 から信頼をつくる方法

#事例マーケティング #ビフォアアフター #活用シーン

新しいお客さんとの例えば商談の場で 「自社商品やサービスの良さが伝わらない」 「なかなか成約に結びつかない」 といった悩みはないでしょうか?

特に BtoB 企業では、相手との信頼関係づくりがビジネスの成否を分けますが、効果的な手法としてご紹介したいのが 「事例マーケティング」 です。

すでに自社商品・サービスを導入している顧客企業の具体的な成功事例を共有することによって、見込み客の共感を引き出し、自然な形で信頼を構築できる方法です。

では、どのように事例を組み立て、効果的に活用すればよいのでしょうか?ぜひ一緒に学びを深めていきましょう。

事例マーケティング


BtoB 企業がマーケティングを行う上で、いかに相手との信頼を構築できるかが重要です。

例えば 「この企業から来たメールだから読む」 や 「検索結果順位に関係なく、この企業の発信だから詳しく知りたい」 のようにお客さんから思ってもらえるような関係性を築くことです。

では、どうすればいいのか。そのための有効な手法のひとつが 「事例マーケティング」 です。

事例マーケティングとは、特定の顧客企業が自社商品やサービスを使った結果を詳しく示すアプローチです。具体的な活用方法や導入顧客からのフィードバックを紹介することで、商品やサービスの効果や価値を伝え、信頼の構築までを目指します。

導入の Before と After を示す


事例マーケティングの成功のカギを握るのは、導入の Before と After です。

先行した導入している企業が商品・サービスを実際に使い、どんな価値をもたらしたかの 「導入前の状況 (Before) 」 と 「導入後の成功 (After) 」 を具体的に紹介し、これから導入を期待できる見込み顧客が導入後の具体的な成果をイメージしやすくするわけです。

順番に詳しく見ていきましょう。

[Before] 事例を導入する前の状況を具体的に伝える

事例の 「Before」 のパートは、導入前に企業が抱えていた課題や状況を示し、導入の必要性を明確にします。

Before で見せる要素は、事例を導入する前のその会社の置かれた環境、どういう状況だったのか、その状況下における解決すべき問題、対処したい課題などです。

Before で状況や課題を具体的に見せ、相手の企業の担当者が 「自分たちも似たような問題に直面している」 と共感してもらえることを狙います。

業務プロセスの課題と業務環境の背景として例えば、ある製造業の会社がデータ管理ソフトを導入する前、データ管理が手作業で行われていたとします。

この状況では、毎週大量の製品情報が集められ、それを手動でエクセルに入力し、分析結果が出るまでに3営業日ほどかかっていました。手作業によるミスや遅延が起こると、さらに結果が遅れ、データを迅速に活用できず、意思決定がさらに後にズレるという問題が顕在化していました。

業務の重複やリソースの不足の別の例として、サービス業の企業がスタッフのシフト管理を従来は手作業で行っていた場合です。

シフト表を毎回作成するために担当者が多くの時間を割いており、スタッフの希望が反映されないことや、管理の手間が膨大であったことが問題でした。オーバーワークやシフト調整ミスが頻繁に発生し、社員のモチベーションの低下にもつながっていました。

[活用シーン] 導入時の具体的なプロセスと業務への影響

事例マーケティングの Before と After をつなぐのが 「活用シーン」 です。

活用シーンでは、商品やサービスが導入企業で具体的にどのように使われたのか、企業の日常業務やプロセスの中にどう取り入れられたかを共有します。機能説明でとどめず、具体的な活用シーンやシチュエーションを交えることで、見込み顧客の企業が導入後のイメージを持ちやすくなります。

実務の中での具体的な活用シーンとは例えば、先ほどの製造業の企業がデータ管理ソフトを導入した場合で続けると、データの自動収集機能が追加されました。

リアルタイムでデータが可視化され、エクセルでの手作業が不要になりました。ソフトにデータ分析機能が搭載されていたため、分析にかかる時間が削減され、その分を意思決定の時間に使えるようになるという変化も起こりました。

特に新しいデータを自動反映させるプロセスを社内で整えることによって、全員が同じデータをリアルタイムで参照できる環境が整い、検討、意思決定、実行までがスムーズに運ぶようになったのです。

導入プロセスと現場への影響について、サービス業の例では、シフト管理システムの導入により、スタッフのシフトへの希望やスケジュールの調整が簡単になりました。

シフト表の自動生成機能を活用することで、従業員がスマートフォンで簡単に希望を出せるようになり、担当者が毎回手作業でシフト表を作成する手間が省けるようになったからです。

システムを使い始めた最初の数週間はトレーニングを通じて全員が操作方法を理解し、スムーズな移行が可能になるなど、導入プロセスの詳細を伝えることにより、他の企業も自社の業務に組み込みやすくなります。

[After] 導入の効果と具体的な成果

では、導入後の 「After」 についても詳しく見ていきましょう。

After では自社商品が導入によって顧客企業がどのように問題を解決し、実際にどんな成果を得たかを伝えます。

数値や具体例を挙げて After としてどうなったかを明確に示すことで、相手にインパクトを与え、商品やサービスの顧客価値を強調します。

問題解決と効果の数値化の例として、製造業の企業では、導入前に3日かかっていたデータ入力と分析管理が数時間で完了するようになり、週あたりのデータ管理工数が 60% 削減されました。

また、データのリアルタイム性が高まったことにより、意思決定のタイミングが前倒しでできるようになりました。在庫管理の精度も上がり、過剰在庫の削減にもつながりました。こうした成果を具体的な数値から共有できれば、効果のリアルさが際立ちます。

生産性と効率化の向上では、サービス業のシフト管理システムの導入後は、担当者がシフト作成にかける時間が 90% 以上削減され、リソースを他の業務に充てられるようになりました。

さらに、スタッフが自分の希望を反映できるシステムが実現されたことにより、社員のモチベーションの向上にも寄与しました。

業務効率化だけでなく、従業員の意欲や仕事への満足度の向上という副次的な効果も含めて伝えることで、導入の成果をさらに強調できます。

活用シーンと進歩度合い


事例マーケティングのポイントとなるのは、実際の 「活用シーン」 と、導入による 「進歩の度合い」 を相手の文脈に合った事例からわかりやすく示すことです。

Before で状況とその状況下であった問題を示して、どのように解決され (活用シーン) 、After において具体的な成果が得られたかを可視化し、導入後の進捗度合いと導入効果の魅力を具体的にイメージしてもらうわけです。

変化のビフォーアフターの例として、製造業の企業では、データ管理にかかる日数が3日から半日に短縮され、在庫管理の精度向上や余剰在庫削減といった目に見える変化がありました。こうした 「導入前の問題」 と 「導入後の改善」 を並べて比べ、活用イメージと変化を具体的に提示し、なおかつ相手の文脈にフィットさせることで、事例を他社も自身の状況に置き換えやすくなります。

顧客の声とエピソードの活用導入を決定した担当者や、実際に運用を担う現場スタッフのコメントも併せて紹介することによって、自社商品への信頼性とリアルな導入の様子が伝わります。

例えば 「導入したことで、以前は手作業で苦労していた業務が自動化され、メンバーが本来注力すべき企画業務に集中できるようになった」 というような声がお客さんの直接の言葉があると、他の企業にとっても実際のイメージが湧きやすくなります。

このように、事例マーケティングでは 「Before」 と 「After」 、その間にある 「活用シーン」 を具体的に示し、ビフォアアフターの比較によって導入効果となる 「進歩の度合い」 を明確に訴求することが、相手に顧客価値を訴求するためのポイントです。

まとめ


今回は 「事例マーケティング」 を取り上げ、成功させるポイントを考えました。

最後にポイントをまとめておきます。

  • 事例マーケティングとは、BtoB の顧客企業の実際の導入事例を紹介し商品価値を伝える手法。機能説明にとどまらず、実際の成功体験を共有することで、見込み顧客の共感を引き出し、信頼関係を構築することを目指す

  • 導入事例では、Before と After の対比により説得力を高める。導入による具体的な改善効果を示すことができれば、見込み顧客は自社への導入メリットを明確にイメージできる

  • 活用シーンの具体的な描写が、事例マーケティングの成功を左右する。現場担当者の実際の声も組み込むことにより、リアルな導入実績が伝わり、お客さんは自社の状況に置き換えやすくなる。Before 、活用シーン、 After によって商品やサービスの価値を効果的に訴求できる


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多田 翼 (運営者)

書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。マーケティングおよびマーケティングリサーチのプロフェッショナル。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

前職の Google ではシニアマネージャーとしてユーザーインサイトや広告効果測定、リサーチ開発に注力し、複数のグローバルのプロジェクトに参画。Google 以前はマーケティングリサーチ会社にて、クライアントのマーケティング支援に取り組むとともに、新規事業の立ち上げや消費者パネルの刷新をリードした。独立後も培った経験と洞察力で、クライアントにソリューションを提供している。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。