#マーケティング #価値創出 #価値の源泉
コンビニと聞いて、どんなイメージが浮かぶでしょうか?
便利で手軽、でもどこも似たような品揃えという印象はないでしょうか?
長野県で注目を集める 「わざマート」 は、コンビニの常識を覆す存在です。地域の農産物や全国のこだわり商品を取り揃え、思わず寄り道したくなる買い物体験を提供しています。
わざマートがなぜ多くの小売関係者が視察に訪れるのか、お客さんへの価値創出は何によって実現しているのか。ぜひ一緒にその理由を紐解いていきましょう。
ユニークなコンビニ 「わざマート」 とは
「わざマート」 は、長野県で 「山の上のパン屋」 として知られる 「わざわざ」 という会社が展開するコンビニです。
わざマートは、異彩を放つコンビニで、小売関係者が多く視察に訪れるなど、選りすぐりの品質と思想を持った商品を提供するコンビニとして注目を集めています。
わざマートは一般的なコンビニとは異なり、地域の農産物や全国各地のこだわり品を揃え、「よいものがサッと買える」 をコンセプトに、便利さと楽しさという体験の融合を目指しています。
ユニークな買い物体験と 「楽しさ」 の提供
わざマートは、全国各地の中小企業が製造する個性的な商品を積極的に取り入れています。
通常のコンビニとは違い、特徴的なのは商品選びの基準として 「思想 × 品質」 を重視していることです。実用性だけにとどまらず、新鮮な野菜や手作りパン、こだわりの日用品などにおいても、作り手の思いや地域の特性が感じられる商品を扱っています。
日常的に使う食品や雑貨品の中に、普段は目にしない商品や地方で生産されているこだわりの品が並び、来店者は 「見たことがないもの」 に触れる喜びを感じられます。選ぶ楽しさを提供することで、お客さんは買い物を通じた非日常的な感覚を味わうことができ、地域住民や観光客を惹きつけています。
わざマートは、商品こそが楽しさを生むという考え方のもと、商品を発見する楽しさを生み出すことにより、お店への来店者に 「知らない商品に出合う楽しさ」 を提供します。来店者が頻繁に訪れ、何度も楽しむ場となっているのです。
地域住民の利便性と 「開かれた店」 としての親しみやすさ
わざマートは、地域の人たちがふらりと立ち寄れる 「開かれた店」 にもなっています。
「よいものがサッと買える」 というコンセプトにより、地域住民の日常生活での便利さを支えつつも、一般的なコンビニやスーパーとは違う特別な体験価値を提供しています。わざマートに 「寄り道をしたい」 という気持ちをつくり出し、買い物がルーティンではなく楽しい体験に変わる工夫がなされています。
わざマートは誰でも入りやすい環境を整えています。環境や健康に配慮した商品の取り扱いは続けているものの、特定の層に限定せず誰でも来店しやすい雰囲気を保つことで、地域住民の身近なお店となり、生活の一部として受け入れられています。
定番商品と季節商品をバランスよく配置し、日用品から生鮮食品まで幅広い商品を提供することより、地域住民にとって必要十分な買い物体験を提供しています。約2000品目が取り揃えられ、地域に根付いた商品もあるため、日常の買い物で立ち寄りやすく、必要なものを簡単に手に入れられます。
地域産業の活性化と中小メーカーとの共存共栄
長野県産の野菜や地元の企業が手掛ける調味料、地元企業との共同開発商品など、わざマートは地域のメーカーと連携しています。地域との結びつきから、わざマートは地元で採れる農産物や加工品、全国の中小メーカーによる製品を店頭に並べています。
具体的には 「わざわざ残糸靴下」 など、地域の工場との協働で作られるアイテムは、地元のリソースを活かしつつ来店者に高付加価値な商品です。
わざマートは、利益のみを追求せず 「思想 × 品質」 を大切にする点で、同じ価値観を共有する地域企業や中小メーカーのパートナーとしての役割を果たします。地域産業の支援と地域活性化に貢献し、「適正な価格でよいものを提供する」 という理念の下、地元に根差したビジネスの基盤を構築しています。
わざマートは地元や日本各地のメーカーにとって、新たな販路の獲得やブランド認知のきっかけとなり、地域経済の活性化にも貢献します。
価値創出を支える源泉
ここまで見てきたわざマートの価値提供の裏には、わざわざが持つ 「中小メーカーとのネットワーク構築と、独自のシステムによる在庫や受発注の効率化」 があります。
ネットワークとシステムというお客さんや外からは 「目に見えない仕組み」 が、楽しさの提供や地域産業の活性化といった 「目に見える価値」 への源泉となり支えています。
では、「提供価値」 と 「源泉」 という2つをキーワードにして、わざマートから学べることを掘り下げて見ていきましょう。
「楽しさ」 の提供における貢献
わざわざは、知らない商品との出会いを可能にする多様な商品ラインアップを維持するために、全国各地の中小メーカーと築いたネットワークを活かしています。独自ネットワークにより、他では手に入らない商品や、その季節にしか出回らない特別な商品をお客さんに提供できる仕組みが実現しています。
ただし、これらの商品は、規模が小さいがゆえに取引や供給が不安定になりやすく、手間や労力がかかることで利益率も下がる懸念や、在庫管理も難しいことからも、一般的にはコンビニでは敬遠されることが多いものです。
そこで 「わざわざ」 は独自のシステムを活用し、各メーカーからの受発注や在庫管理を効率化することによって、こうした多品目かつ不安定な供給を支えています。
例えば、エクセルを駆使した管理システムで商品の在庫状況を見える化し、各メーカーに柔軟な発注を効率よく行えるようにし、ラインアップを日々変えることで、来店客がいつでも新しい商品に出会える環境を整えています。
わざマートは、中小メーカーとのネットワーク構築、独自システムによる在庫や受発注の効率化という 「価値創出の源泉」 によって、来店客への 「新しいものに出会う楽しさ」 という顧客価値をもたらしているのです。
地域産業の活性化と中小メーカーの支援への貢献
わざわざは、中小メーカーが作る思想があり品質の高い商品を積極的に取り扱い、こうした製品を消費者に届けています。
この取り組みには、地元長野や全国の中小メーカーの製品が定期的かつ安定的に供給されるよう支援することが必要です。しかし、中小メーカーは製品の安定供給や販売リソースが不足していることが多く、通常の流通チャネルに乗せることが難しいという課題を抱えています。
わざわざのシステムは、こうした小規模製品の供給の不安定さや、柔軟な受発注対応を可能にし、中小メーカーが規模に関係なく流通を確保できるようにします。さらに、「地元の特産品を全国の来店者に提供する場」 を安定的に確保することで、地元企業の持続可能な成長も支えているわけです。
以上のように、目に見えない効率化の仕組みが 「価値提供の源泉」 となり、地元の製品が持つ価値や個性を、日常の買い物の中で自然と顧客が感じられる形で届けることができます。
わざマートの独自システムに支えられた商品管理とネットワークが、日常の中に新しい出会いと地元企業の成長への源泉となって、お客さんや地域社会への価値を生み出しているのです。
まとめ
今回は、長野県のユニークなコンビニの 「わざマート」 を取り上げ、学べることを見てきました。
最後にポイントをまとめておきます。
- わざマートは、全国各地の中小企業がつくる個性的な商品を売り、お客さんに 「知らない商品に出会う楽しさ」 を提供するユニークなコンビニ
- 商品選びの基準として 「思想 × 品質」 を重視。作り手の思いや地域の特性を反映した商品を扱うことで、来店客に非日常の感覚をもたらす。地域住民がふらりと立ち寄れる 「開かれた店」 として、誰でも来店しやすい雰囲気を作り出している
- わざマートは、地元のメーカーとの連携により新たな販路を提供し、地元産業や地域経済の活性化を支える存在
- 「中小メーカーとのネットワーク」 と 「独自システム」 が、わざマートが多品目の安定供給とお客さんへの新しい発見の体験をつくりだす価値の源泉となっている
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