#マーケティング #戦略 #3C
成熟したパスタ市場に新たな風を吹き込むべく、ニップンとマーケティング支援会社・刀が手を組みました。
技術力に定評のあるニップンが、森岡毅氏率いる刀と共にどのようにして停滞した市場を再活性化させたのでしょうか?
両社の協業で生み出された新たな消費者価値と、成功を収めた戦略の全貌を 3C のフレームワークを使って紐解きます。
ニップンと刀の協業
協業の背景
ニップンは長年技術力に定評がある企業ですが、パスタ市場は成熟化し、成長が停滞していました。
そこでニップンの前鶴俊哉社長が 「技術のニップン」 をさらに成長させるために、マーケティング力の強化が必要だと判断し、森岡氏率いる刀と2022年にタッグを組むことになりました。協業の目的は、新しい消費者価値を生み出し、停滞している市場に新たな活力を吹き込むことでした。
戦略の3つの柱
刀はニップンの成長戦略を3つの柱にまとめました。
- 消費者の本能が求める 「おいしさ」 に応える: 消費者が求めるのは利便性ではなく、最終的には 「おいしさ」 であることに着目した
- ニップンの強みを生かす: 長年培った技術力を活用し、新たな消費者価値を生み出す商品開発を推進
- 競合他社が真似できない差別化: 「小よく大を制す」 という考えのもと、ニップンは主要なブランドに商品を集約するマスターブランド戦略を採用した
オーマイプレミアムの成功
協業開始後、冷凍パスタブランド 「オーマイプレミアム」 は市場で確固たる1位の地位を築きました。2023年春から2024年8月までの購入金額ベースで前年同期比 32% 増を記録しています (参考記事) 。
乾燥パスタの 「もちっとおいしいスパゲティ」 も新たに発売され、パスタ市場全体を再活性化させました。ニップンの乾燥パスタは前年同期比 65% 増を達成し、冷凍パスタと乾燥パスタの両分野での成功をもたらしました。
3C フレームワークの活用
ニップンと刀の協業による戦略の骨子は、次の図のように集約できます。
この図に示されている 「重心」 の考え方は、マーケティング戦略における 3C フレームワークに反映したものです。
3C とは、Customer (顧客) 、Company (自社) 、Competitor (競合) の3つの要素に焦点を当て、戦略的な意思決定と実行を行うフレームワークです。
Customer (消費者が本当に求めているもの)
ニップンは、消費者が本当に求めているのは 「おいしさ」 であることを認識しました。
パスタ市場は、これまでは 「パスタ麺が早くゆであがる」 や 「便利さ」 が強調されてきましたが、ニップンはあえて逆を行き、パスタの 「おいしさ」 に重点を置いた戦略を展開しました。消費者にとって 「食品の本質的な価値はおいしさ」 であり、ニップンはこのニーズに応えることで、ブランド価値を高めることを目指したのです。
Company (ニップンの強みを生かす)
ニップンは、自社の強みである 「技術力」 を活かし、他社には真似できない商品開発を行いました。
業務用で培った技術を家庭用に転用することによって、消費者に新たな価値をもたらすという狙いです。特に 「もちっとおいしいスパゲティ」 の開発は、日本人がパスタに求める食感に焦点を当てたものであり、消費者の期待を超える商品を提供することに成功しました。
Competitor (競合が真似しにくいこと)
ニップンは、競合に対して差別化を図るため、 「小よく大を制す」 という戦略を採用しました。具体的には、マスターブランド戦略によってリソースを集約し、競合他社よりも機動力を高めることができるようになりました。
また、商品のサイズや彩りにこだわり、多様なニーズに応じた細やかな対応が競合との差異化を強化しました。
勝ち筋をとらえる
ここで言う勝ち筋とは、3C の各要素がバランスよく融合し結果として生まれる競争優位を指します。
ニップンは、消費者が本当に求める 「おいしさへのニーズ」 に応え、自社の技術力を活かし、競合に差をつけることで市場での地位を強化しました。
3C のフレームを活用することにより、ニップンは効果的なマーケティング戦略を展開し、停滞していた市場を再活性化させた好例です。
まとめ
今回は、ニップンと刀の協業の事例を取り上げ、戦略やマーケティングに学べることを見てきました。
最後にポイントをまとめておきます。
- ニップンは消費者の本質的なニーズが 「おいしさ」 であると認識。パスタ市場での主流であった 「便利さ」 よりも、消費者が求める 「おいしさ」 を強調した
- ニップンは自社の強みである技術力を活かし、業務用の技術を家庭用に転用。「もちっとおいしいスパゲティ」 などの開発により、日本人が求める食感を実現した
- 競合に対して 「小よく大を制す」 戦略を採用し、マスターブランド戦略でリソースを集約した。競合他社よりも機動力と差異化を強化し、競争優位を築いた
- マーケティング戦略には3C (Customer, Company, Competitor) の視点を入れる。顧客ニーズに応え、自社技術などの独自資源を活かし、競合には真似できない強みを実現する
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