2015/03/25

書評「戦争プロパガンダ10の法則」(アンヌ・モレリ)

プロパガンダ(propaganda)の言葉の意味は、次の通りです。
特定の思想によって個人や集団に影響を与え、その行動を意図した方向へ仕向けようとする宣伝活動の総称です。特に、政治的意図をもつ宣伝活動をさすことが多いですが、ある決まった考えや思想・主義あるいは宗教的教義などを、一方的に喧伝(けんでん)するようなものや、刷り込もうとするような宣伝活動などをさします。
要するに情報による大衆操作・世論喚起と考えてよく、国際情報化社会においては必然的にあらわれるものです。
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プロパガンダについてあらためて考えさせられたのが、「戦争プロパガンダ10の法則」という本でした。

本書の内容紹介から一部を引用します。

第一次大戦からアフガン空爆まで、われわれは政府発表やメディアにいかに騙されたか。気鋭の歴史家が戦争当事国による世論操作・正義捏造の過程を浮き彫りにする。
第一次大戦から冷戦、湾岸戦争、ユーゴ空爆、アフガン空爆まで、あらゆる戦争において共通する法則がある。それは、自国の戦闘を正当化し、世論を操作するプロパガンダの法則だ。
「今回の報復はやむをえない」
「ビンラディンは悪魔のようなやつだ」
「われわれは自由と平和を守るために戦う」
正義はこうして作られる。
これまでに戦争当事国がメディアと結託して流した「嘘」を分析、歴史のなかでくり返されてきた情報操作の手口、正義が捏造される過程を浮き彫りにする。ブリュッセル大学で教鞭をとる気鋭の歴史学者が読み解く、戦争プロパガンダの真実。

本書で提示される戦争プロパガンダのための「10の法則」は、以下です。
  1. われわれは戦争をしたくはない
  2. しかし敵側が一方的に戦争を望んだ
  3. 敵の指導者は悪魔のような人間だ
  4. われわれは領土や覇権のためではなく、偉大な使命のために戦う
  5. われわれも意図せざる犠牲を出すことがある。だが敵はわざと残虐行為におよんでいる
  6. 敵は卑劣な兵器や戦略を用いている
  7. われわれの受けた被害は小さく、敵に与えた被害は甚大
  8. 芸術家や知識人も正義の戦いを支持している
  9. われわれの大義は神聖なものである
  10. この正義に疑問を投げかける者は裏切り者である

本書では、10の法則ごとに章立てで構成されています。そして各法則ごとに過去の戦争で、実際に起こった事例や当時の権力者の発言などが紹介されます。

例えば、1つ目の法則は「われわれは戦争をしたくない」。

戦時国家はまず、自分たちは平和を愛しているということを宣言すると説明されます。ヒトラーの演説にも「平和への意志」が登場します。

2つ目の法則は「しかし敵側が一方的に戦争を望んだ」。お互いが相手に対して主張し、それぞれが敵側を悪者にします。

敵のイメージをより具体的にするため、3つ目の法則が使われます。「敵の指導者は悪魔のような人間だ」と、国ではなく敵国の指導者という顔を出すのです。

本書では、第一次大戦、冷戦、湾岸戦争、ユーゴ空爆、アフガン空爆などの過去事例が、1つ1つの法則ごとにいくつも紹介されています。10の法則が実際にどう適用されていたかが具体的にわかります。

ただし、読んでいて思ったのは、あまり個別の発言意図を探るよりも、様々な戦争に共通するプロパガンダの法則を知り、今後の自分の情報判断にどう活かすかがポイントだと思いました。

つまり、本書の目的は、10の法則について過去の戦争で1つ1つを検証するものではなく、読者の情報判断能力に気づきを与えること。メディアリテラシーを高めてくれる1冊です。

興味深かった1つは、戦争報道における言葉の使われ方でした。

例えば「空爆」。

第二次大戦では「空襲」という表現が使われます。しかし、同じ行為でも現代は空爆と言います。確かに、日々のニュースで今起こっている戦争に対して「空襲」という単語は聞いたことはありません。

これ以外にも、自国の陣営について語る場合、領土の解放 / 民族の移動 / 墓地 / 情報という言葉が使われます。

一方、相手の陣営については同じ事象でも、占拠 / 民族浄化 / 大量虐殺 / 死体置き場 / プロパガンダという言葉に置き換えられます。相手国についてはネガティブな響きを持つ言葉が使われるのです。

ちょっとした言葉の選択ですが、受け手への印象操作に無視できない役割を持ちます。

本書で紹介される10の法則は、戦争をテーマに国と国でのレベルのものです。本質的なところは、自分自身の正当化と相手に対する憎悪の醸成です。この手法は、戦争だけにとどまらず、政治論争や個人の喧嘩のレベルでも、当てはまるのではないでしょうか。




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多田 翼 (書いた人)