2015/04/11

Moment of Truth:古くて新しいマーケティング理論

元ハーバード・ビジネススクール名誉教授であるセオドア・レビット (Theodore Levitt) へのインタビュー記事が、「Harvard Business Review (2008年11月号)」に掲載されています。この2008年11月号は「マーケティング論の原点」がテーマでした。

■顧客は商品やサービスではなく「期待価値」を買う

記事タイトルは「ビジネス・リーダーの近視眼を正す マーケティングの針路」。

インタビューで、「マーケティングの本質とは、顧客への『誓約』である」と語っています。この部分はインタビューの中で特に興味深いものでした。
顧客は商品やサービスではなく「期待価値」を買う
顧客はーーどのような製品やサービスであろうとーー自分が望むところを必ずや満たしてくれるという「事実」について、事前に100%知ることはできません。したがって、企業は「我々はあなたを満足させます」という「誓約」を売り、顧客はそれを購入することになります。

一部の後払いサービスを除けば、商品やサービスを買った後に、私たちは利用します。順番としてはお金を支払うことが先なので、購入時点では買った商品からこんな満足できるだろうという、あくまで期待でしかないのです。

この状況をセオドア・レビットは「期待価値を買う」と表現しています。

■Moment of Truth というマーケティング概念

商品やサービスを提供する企業側と、それらを買う消費者との間には、商品/サービスについての情報量に非対称性が存在します。

上記のセオドア・レビットの表現に当てはめると、企業側が消費者に示す「誓約」(この商品はこういう満足ができます)についての情報や知識は、企業のほうが消費者よりも多いわけです。

企業からの商品への「誓約」に対して、消費者は本当にそれが自分の満足につながるかどうか、つまり自分が期待する価値を持っているかどうかを、商品購入前にできるだけ知ろうとします。例えば、店頭で商品を手に取り、表のパッケージ情報だけではなく、裏面の商品紹介を見て価値があるかどうかを判断する、といった消費者行動です。

マーケティングにおいて、この考え方を積極的に取り入れたのが、P&G でした。

2005年に提唱した FMOT (First Moment of Truth) というインストア マーケティング概念です (FMOT は「エフモット」と読みます)。

FMOTとは「消費者は、店頭で商品を見て3〜7秒で魅力的かどうかを判断する」というもの。P&G では、この3〜7秒に「真実の瞬間 (Moment of Truth)」があると考えたのです。

Moment of Truth は、店頭での真実の瞬間を First Moment of Truth、つまり第一段階と言っています。Moment of Truth には、4つの段階があるとされています。どのタイミングに「真実の瞬間」があるかをと言うと、
  • Zero Moment of Truth (ZMOT): 商品を検索したり、口コミ情報を見たとき
  • First Moment of Truth (FMOT): 店頭で商品を見たり手に取ったとき
  • Second Moment of Truth (SMOT): その商品を買って実際に利用したとき
  • Third Moment of Truth (TMOT): その商品をリピート購入するなど好きになったとき

冒頭で引用したのインタビュー記事では、セオドア・レビットは次のように語っていました。企業は商品/サービスについての「誓約」を示し、顧客が買うのは誓約から思い描く「期待価値」である、と。

商品/サービスを買う消費者の心理からすると、なるべく期待と現実のギャップを小さくしたいと思います。企業側からの「誓約」を鵜呑みにしてよいのか。買って使ってみたけれど、言われていたほど/期待したほどの満足が得られなかった、期待価値ほど実際の価値はなかったという残念な経験はしたくない。

セオドア・レビットの言葉に戻ると、消費者は「期待価値」を買うということは、消費者は先物買いをし、企業は先物売りをやっていることになります。

こうした消費者心理を鑑みると、「FMOT (店頭)」だけではなく「ZMOT (事前情報収集)」も考慮し、いかに誓約をつくり、それを消費者に伝えるか。

商品/サービスを買い、使ってから評価し、満足するのが以前の時代だとすると、今は買う前にすでに評価/判断され、そこでどんな期待価値をつくってもらうかも問われます。



P&G が FMOT という考え方をつくったのは2005年。FMOT だけではなくその前後に存在するいくつかの「真実の瞬間」そのものは、人々が何かを買っていたどの時代でもあったものです。お金と商品/サービスをやりとりする以前の、物々交換の時代でも真実の瞬間はあったはずです。

Moment of Truth という考え方は、古くもあり新しくもあるマーケティング理論です。

企業から消費者へ価値を伝えるための「誓約」(例: ブランド)、顧客が買っているのは商品やサービスではなく「期待価値」である、消費者が価値を体験するいくつかの「真実の瞬間 (Moment of Truth)」。

そんなことをあらためて考えさせられたハーバードビジネスレビューのインタビュー記事でした。




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